第11話 合コンの番人
俺は独り、トボトボと夜道を帰る。寂しい、こんなはずじゃなかったのに……。
何がいけなかったのだ。今日の合コンの反省点を考えてみる。
一番人気のカナルを狙いにいったのが、まずかったのか? 他の女の子を狙うべきだったのか? 色んな事がぐちゃぐちゃになり、頭の中がいっぱいになる。俺はとりあえず、それらを整理し、仮説を立ててみる。
二番人気のネッズを狙いに行った場合、どうだったのだろう? ターンもネッズを狙っていた。この場合、ターンに惨敗して、同じく独りで帰る結果になったであろう。
ターンは、カナルに彼氏がいることを見抜き、ネッズに一点勝負したのか? 今となっては分からないし、どうでもいい事だな。俺は、夜空を見上げる。
確か、俺を気に入ってくれていた女の子がいたな。そんなに可愛くなかったけど。あの子にすれば良かったじゃないか、俺はその事を思い返す。
その女の子に勝負を賭けていたなら、今夜一緒に帰れたのかもしれない。でも、俺はその結果で良かったのだろうか、後悔しなかったのだろうか、俺は自問自答を繰り返す。
俺は女の子をルックスで、査定し過ぎてはいないだろうか。俺は自分の考えに疑問を持ち始める。合コンだけで、中身まで分からねぇよ。合コンでは見た目が全てだろ。じゃ、合コンでは真実の愛は掴めないのか。合コン自体の出会い方を俺は否定したりする。
そうだ。何故カナルはあの場面で、彼氏がいることをカミングアウトしたのだ。今回の合コンの最大の謎を振り返る。
カナルの今回の合コンの参加理由を思い出す。確か、相棒の付き添いで来たのが、今回の合コンの参加の理由だったらしい。
それなら何故、最初から彼氏がいることを伝えていなかったのだ。それはつまり、今の彼氏よりもいい男がいれば、そちらに乗り換えようと思っていたからではないのか。ズルい考えがあったからではないのか。
俺はフーッと溜め息をつく。何にせよ、俺なりの残酷な結論が出た。
俺がもっと良い男ならカナルも手に入ったし、ネッズも手に入ったのだ。男を磨かなければ他の男、いい男には勝てないのだ。
俺は天を見上げ、涙を流す。そして、絶対にもっといい男になってやると心に誓う。必ず、誠実な女の子と付き合ってやると意志を固める。
涙を拭き、次の合コンにエントリーする為に、俺はギルドへと向かう。夜道で暗いが、慣れたものだ。迷いはしない。
ふと、気付けば俺の前を遮る者がいる。物陰に隠れて、待ち伏せしていたのであろう。遮る者は俺を睨んでいる。その者はチャラい勇者、ゼンツであった。
俺は面倒臭そうだと感じ、後ろを振り返り、道を変えようとする。しかし、後ろも行く手を阻む者がいる。ゼンツの弟分の重戦士だ。
囲まれている、挟み撃ちか。俺は自分の状況を理解する。
「ムシャクシャしてるんで、悪いが気晴らしに付き合ってもらうぜ」
ゼンツが嫌な笑みを浮かべながら、剣を抜く。俺の背中を狙っている重戦士は斧を構える。
普段の俺なら、こんな雑魚をまともに相手にはしない。でも、今夜は俺もムシャクシャしている。悪いが、ボコボコに返り討ちにしてやるぞ。俺はキッとゼンツを睨み付ける。
「死ね! ヘッポコ剣士が!」
ゼンツが俺を斬り付ける為に、距離を詰めて来る。
俺は素手でそれを待ち構える。この程度の奴に愛剣は使わない。
すると、またもや周りを囲む様に影が動く。新手か、俺は周囲を警戒する様に辺りを見回す。
数は五人か。なかなかの手練れ揃いだ。俺は、ゼンツよりもそちらの方が強いと感じ身構える。ゼンツもその者達の出現に気付き立ち止まる。
「合コン組織委員会だ。君達の暴力行為は合コン規約違反に当たる。武器を捨てて投降しなければ、武力行使する」
その影のリーダーらしき者が口を開く。ゼンツは再び怒りをあらわにし、剣を構える。
「何が、合コン組織委員会だ。俺の邪魔する奴は許さねぇ! 斬ってやる!」
ゼンツが影のリーダーに斬り掛かる。しかし、その影のリーダーは軽く剣を振り、ゼンツの剣を弾き飛ばす。クルクルと宙を舞った剣は地面へと突き刺さる。
「ひいいいいい」
ゼンツは影のリーダーに剣を突き付けられ、その場にひざまづく。それを見て、相棒の重戦士も斧を捨て、降伏する。
「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
影のリーダーが俺に近付き、声を掛ける。俺は何ともないと答えると、影のリーダーは部下達にバカコンビを連行するように指示を送る。
「申し遅れました。私は合コン組織委員会、運営管理部長のゴードンです」
影のリーダーは俺に挨拶をする。俺に対しては罰則をするような雰囲気は感じられない。俺は彼に気を許し答える。
「助けてくれてありがとう。俺はサークだ」
俺はゴードンと名乗る男をじっと見る。
「貴方には手助けは必要ありませんでしたね。かなりの強者だと見受けます」
ゴードンは俺を見て笑みを浮かべる。一瞬で俺の力量を見極めたのか、こいつもかなりの強者だ。俺も笑みをゴードンに返す。
「もし良かったら、合コン組織委員会に入りませんか? この国の戦闘能力のトップしか入れないエリート達の集まりですよ。今、この国は全軍事力を合コンを支える為に費やしていますからね。どうですか?」
どんだけ合コンに力を入れてるんだよ。この国のトップの連中はバカなのか、俺は一瞬そう感じた。しかし、俺も合コンに全精力を注いでいる為に、その言葉は言えなかった。
「いや、俺は組織委員会には入らないよ。合コンを運営するより、参加する方が好きなんだ。だから、その申し出は受けられない」
「え、どんだけ合コンが好きなんですか? 女好きなんですか? ひょっとして、モテない方なんですか?」
「うるさい! 放っとけ!」
「でも、合コンに満足したら委員会に入って下さいよ。サークさんなら、いつでも大歓迎ですから。それでは失礼します」
俺にそう言うと、バカコンビを連行して行く部下達を追い掛けて、ゴードンは去って行く。
合コン組織委員会達の後ろ姿を、俺はしばらく見ていた。色々あったなとしみじみ思う。
あ、いけない。俺は重要な事を思い出す。一連の出来事のせいで忘れそうになっていたのだ。
俺はギルドに向かい、そして次の合コンの予約をした……
男達の悲鳴が聞こえるコンパ~異世界合コン2~ かたりべダンロー @kataribedanro
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