8-11
「大丈夫だよ」
それこそが、真実の答えだった。
――とはいえ、心配事が全くない訳ではない。
「お父さんは……嫌がるかな。猫、嫌いみたいだし」
『……そのことなら、きっと平気だと思うわ』
「えっ、どういうこと?」
『だって、あの子の里親を探そうって言い出したのは、あの人なんだもの』
「……えっ?」
そのことを、彩音は全く知らなかった。どうしてだろうと、父のことを疑問に思うより、何も知らなかった自分自身を恥じる。
ああ――やはり自分の目は、今まで曇っていたのだ、と彩音は笑う。最も身近だった家族のことさえ、見えていなかったなんて。
『本当は秘密だったの。私がバラしちゃったの、お父さんには内緒よ』
「ふふっ……うん、わかった」
それから、二、三言ほど言葉を交わし、彩音はスマートフォンの通話を切った。
――あの不思議な場所で、彩音は失った《希望》を取り戻した。
いいや――それだけではない。あの場所で彩音は、目には見えない、数え切れないたくさんのモノを貰ったのだ。
「…………」
後ろを、ゆっくりと振り向いてみる。
万魔殿への扉は――もう、どこにもない。
だけど、その向こう側――雨上がりの空には――
「……あっ」
――鮮やかな虹の橋が、架かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます