8-09

「にゃあっ!?」

「…………」


 驚いたように一声鳴いたクロと、無表情で黙って眺めているリリエラ。


 それから少し間を置いて、彩音はナナシから離れ、改めて扉に手を掛けた。


「皆――本当に、ありがとうっ! 元気でね!」


 羽のように軽い扉を開き、彩音はその先へと消えていく。そんな彩音に――ナナシは顔を真っ赤にしながら、最後に声を掛けた。


「おねえちゃん――頑張ってね! 僕、いつだって、応援してるからさっ!」


 ――ああ、そうだ――


 万魔殿では、いつだって少年の笑顔が、そこにあった。


 彼はいつだって、彩音のことを応援してくれていたのだ。


 彩音はきっと、彼のことを、ずっと忘れないだろう。


 万魔殿で出会った――太陽のように笑う少年のことを。

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