7-11 第七幕ラスト
その言葉を噛み締めて――彩音はしばらくの間、目を閉じた。どれほどそうしてからか、彩音の口元が軽く緩む。
「ふふっ、やっと言えたわ、お別れ」
はにかむようにして笑った彩音の目尻から――大粒の涙が、一つ零れた。
「あっ、やだ、わたし、あっ……おかしいな。ふふっ、あっ、ぐすっ……あははっ」
両手の甲で涙を拭っても、雫は次々と頬を伝って零れていく。なんだか彩音は、それが恥ずかしくて、だけど何だか可笑しくて――泣きながら、笑った。
――我慢する必要なんて、どこにも無かったのだ――
彩音は心の底から、全てを吐き出すようにして、笑って、泣いて、また少し笑って――また少し、泣いた。
悲しいだけの涙ではない。
別れを受け入れるための涙があるのだと、知った。
その夜、彩音はいつか右腕の自由を失った時――そのことをようやく理解した時と同じように、泣きながら眠りについた。
ただ、今はその時のように、心は《絶望》で満たされてはいなかった。
彩音の心には――失った《モノ》が、返って来ようとしているのだから――
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