第2話
騒がしい音を聞きつけて、村のみんなが街道に出ていた。
そんなみんなの視線の先には一人の女の人と…
音の正体、
「俺は見たんだ、急にあのふたりが何もない所から降りてきたのを」
大きなふたり男の姿…でも普通の人間じゃあない。
「なんなの?…あれ」
ひとりは頭のてっぺんに長い角を伸ばし、3mほどの大きな半裸の体、背中には茶色い大きな翼…でも顔はクールな感じの美形だった。
もうひとりも背は3mほど、赤褐色の筋肉隆々で腕と足の部分は石で出来ている…でも顔はワイルドな感じの美形だった。
よくみるとそれらを従えているような女性も、頭の上から長い兎のような耳を生やしている。
あれは確か獣人…とかいうやつだっけ?
兎というよりか豚みたいにぷくぷくとしているけど、豪華なピンクの衣装やギラギラした装飾品を身に纏い、なんか妙な色気がある感じだ…
ボクは好きじゃあ無いけれど。
「はいはい皆さんご注目~♪」
村人や旅人の視線が集まる中、女性が甲高い声を上げた。
「あーしの名前は『ニムエ・ヴィヴァ―チェス』、ただいま旅をしながら方々のお宝を探していますの」
値踏みするようにボクたちを見てる。
「まあ、こんなチンケな村にはお宝も無いでしょうけれど、少々路銀も寂しくなったことですし、どうかあーしに有り金を寄越しなさい?」
翼の方がバッと羽音を鳴らした。
石の方も道を踏みドスンと地響がする。
「逆らったら…どうなるかお判りよね?」
ざわざわと皆が狼狽えてる。
「おとなしくしていた方が身のためよ」
声に迫力がある…この人たち…多分だけど結構強い。
村のみんなだって『真価』は持ってる…けれどそれで戦闘が得意かと言えばそうとも限らない…ボクの『真価』も全然戦闘向きじゃないし。
でも!
「おばさん!泥棒なんてカッコ悪いよ!」
ボクの声と合わせて、空中にオレンジ色に光る文字盤が現れる。
コレは『
ボクは自分の額窓から愛用の弓を取り出した。
額窓はこのワールドに再誕した時に色々案内をしてくれた人から貰ったんだけどとてもいい道具だった。
こうやって所持品を入れることだってできるしね。
「おば…さん?」
明らかにおばさんは怒っている、挑発するためにわざと言ったんだけど効果はてきめんだ。
「お嬢ちゃん…どうやら痛い目にあいたいみたいね」
勝手に人のものを奪うなんて…絶対許さない。
「ボクの名前はメイって言うんだよ、ニムエおばさん♪」
弓矢を構える、人に向けるのはいつぶりだろう。
『メイ殿~~!』
そんなボクたちの間にいきなりマキさんが現れた。
マキさんって浮けるんだ…
『某も加勢しますぞ、これでも御業を行使できる故』
みわざってのが何かは分からないけど、それは正直ありがたい。
「へぇ…こんな田舎にも高く売れそうなアイテム…あるじゃない」
『某は売り物ではござらん』
いや、骨董屋さんに売られてたけど…
「いいわ…ウゾウ、ムゾウ。やっておしまい!」
おばさんが手を振り上げたと同時に、両脇のモンスターがボクたちに向かってきた。
翼の方、ウゾウが速い、ボクはおばさんに向けていた矢を切り替えて放った。
「パウッ!」
ダメだ、避けられた。
『…風来!』
マキさんが詠唱してる、直後に風が吹いた。
「パウ~~!?」
飛んでいたウゾウは風に流される、それにあちこち切り傷みたいなものができてた。
「上手いよ、マキさん」
ボクは二の矢を引いてウゾウに攻撃!
ウゾウは手にしていた斧と槍を合わせたような武器、確かハルバードと言うやつだ、で上手く払った。
直後石の方、ムゾウが突風をものともせずに近寄ってきた。
「ガオ!」
両手で持った大きな棍棒、メイスを振り上げる。
「てーい!」
その隙にボクは手に持っていた弓を無防備なお腹に当てた。
「ガオーン!」
ボクの弓は特別製で近接でも武器として役に立つんだ。
それに気づかなかったムゾウは大きく弾かれた。
殺傷能力は低いけど相手と距離を取るために作られたから、ムゾウもここまで大きな振動と威力があるとは思わなかったのだ。
『流石ですぞ、メイ殿』
とはいえ、ボクたちふたりの攻撃は奴らにはたいして大きなダメージにはなってなさそう。
このままだとそのうち押されてしまう…どうしよう?
『メイ殿、大きな技を使いますので少々お待ちくだされ』
「うん、わかった!」
マキさんに策があるらしいのでボクは庇うように矢を連射する。
流石に矢を受けるのは嫌だろうから奴らも近付けない。
「何やってるのっ!アイテムの方が詠唱してるじゃない!早く突っ込みなさいな!」
「パウ!」
「ガオ!」
多分いやいやだと思うけど奴らが突進してきた。
「絶対止めてやる!!」
自分の中にある魔力を溜めて、それを弓で連続して放出!
数発が奴らに当たる。
直後に実物の矢も撃つ。
「どうだ!」
『止めですぞ……爆巻氷円撃』
マキさんがくるくると回転しだす、それと同時にマキさんを氷が包み、円盤のような刃になったマキさんが勢いよく奴らに向かっていった。
「パウ!」
ウゾウは上に飛び、足に掠っただけだけど
「ガオーンっ」
ムゾウがまともに喰らった、堅そうな腕に大きな亀裂が走ってる。
でもまだ戦えそうだ…どうしよう…ボクは一瞬気を取られていた。
「パウパウ!」
そんなボクに向けて、逃げた上空のウゾウが目から青いビームを放ってきた!?
「つっ…いたーーい!」
何とか避けようとしたけど足に当たってしまった…
うわ、スカートが凍ってる。
『メイ殿~』
続いてムゾウが口から火を吹いた。
まずい!
『今行きますぞ~!』
氷の刃は無くなっていたけど、回転したままマキさんが来て動けないボクを庇って炎を受けた。
「燃えちゃうよ!」
ぱさぱさとマキさんを広げて
「ふふふ…大口叩いてた割には弱いわね」
む
「おばさんは何もしてないじゃないか!」
おばさんを睨みつける。
「ふん、この2体はあーしが使役しているからあーしの実力なのよ」
悔しいけど、このままじゃ追い払うこともできない。
ボクが時間をかけて頑張ったら誰か助けてくれるかもと期待してたんだけど、街道にいる人達は逃げるか遠巻きに見るだけだった。
ダメか…
「さあ、見せしめに…そうね殺しはしないけど、たっぷりいたぶらせてもらうわよ、その方が歯向かうバカも減るしねぇ」
嫌な笑い方だ…くそう…
ウゾウとムゾウがボクとマキさんに近付く。
『すみませぬ、某の力不足で…』
「そんなことない!絶対諦めないもん!」
やや遠いけれど直接おばさんを狙えば…
ボクは気取られないよう弓をウゾウに向け…
素早くおばさんに撃った。
ガチンっ…
「あら?残念だったわね」
矢はおばさんを確実に捉えてた。
でもおばさんに当たる直前、カメの甲羅みたいな壁が現れ矢を弾いてしまったんだ。
「あーしね、安全な場所からの見物って大好きなのよ」
奴らがもうすぐそばまで来ている。
もう…
怖くて目を閉じそうになったボクの目の前に
『剣』
という文字が浮かんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます