第10話
ゴルバとの会談は実に有意義なものだった。
ウェルリンク公爵家の威光を前にしては動かぬ訳にもだろうし、しっかりと問題に対処してくれるだろう。
「今日はお疲れ様ー!!!乾杯である!!!」
「乾杯です」
「……」
一日の冒険を終え、薬草の依頼達成金とエンシェントボアの買取代金を受け取った僕たちはこの街の飲食店の一つへとやってきていいた。
「うむ、不味い!」
自分たちが頼んだ飲み物。
流石にお酒は成長を妨げると僕が判断し、お酒の代わりに頼んだジュースを口に含んだラリア様は元気よく不味いと断言する。
「……ラリア様。そのようなことをあまり大きな声で言うものではございません」
僕は実に元気な声で告げられたその言葉に苦言を呈する。
「だが、不味いものは不味い。ここは個室であり、他に声がもれぬように結界も貼ってある」
「それでもですよ。平民にとってはこれでさえ遥かに高級品です。
「理解しておる」
ラリア様は僕の言葉に頷き、再び口を開く。
「流石にもう理解したとも。我らの生活と市井の生活の差をな……更に下もあるのでしょう?」
「えぇ……食べれるだけ遥かに上等でしょう」
僕はラリア様の言葉に頷く。
スラムの人間であれば何も食えずに餓死するなんてことは珍しくないし、飢饉でも起きればここは地獄となるだろう。
「うむ……理解した」
ラリア様は厨二病であり、その言動が馬鹿っぽいが、それでも貴族としての教養と生まれながらの思考力を持っている。
彼女は現実を正しく理解するだろう……貴族は個人を助けることは簡単であるが、国民を救うの困難であると。
「ラリア様。今日はお二人が初めて自分の手で金銭を稼いだ日にございます。一先ずはこの席を楽しみましょう」
「確かにそうであるな!此度は我が覇道が一歩であるのだがな!」
「……」
マキナ様もラリア様の言葉に無言のまま頷く。
「今日は食べられるだけ食べようではないか!」
「はい」
「……っ」
僕たち三人は自分たちで稼いだお金で夕食をいただくのであった。
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