第9話
「それで?低魔の森にエンシェントボアが出たというのは本当か?」
僕の前に座ったゴルバは前置きを抜きにして早速本題へと入っていく。
低魔の森。
生息している魔物の数が少なく、また、その魔物の強さも低いことから初心者御用達の森であり、そこにエンシェントボアが出てきたというのはかなりの問題なのだ。
冒険者育成に多大な影響を与えることとなる。
「あぁ、間違いない。僕たちも初心者であり、低魔の森以外にはいかないからね」
「疑うわけではないが……エンシェントボア、より強いのであれば低魔の森以外もいけるだろう?」
「強いからといって無茶できるものでもないだろう?冒険者は」
「……物分かりが良すぎて怖いな」
「自分たちはそこそこの教育を受けているんだよ」
「……商家の子か」
「まぁ、そうだね」
僕は商家の子といえるので問題ないだろう……僕の親はスラムで花を売ったりもしていたし。
これがかつて栄えた悪魔属の王の果ての姿ですよ、僕で盛り返してきているけど。
既に交流を断っている僕の両親は今、どうしているんだろうか?
まぁ、まともな教育も愛も受けなかったし、何ら両親への思いもないからどうだっていいけど。
「ふぅむ……低魔の森にエンシェントボア、か」
ゴルバは腕を組み、難しそうに眉をひそめる。
「……」
そう簡単に信じれる情報ではないだろう。
「……報告感謝する。我々も調査隊を派遣することとしよう」
冒険者は基本的に荒くれ者であり、その情報を簡単に鵜呑みにするわけにもいかないし、内容も内容である。
半ば信じられるようなものではないだろう……が、信じてもらえないはちょっと問題かもしれない。
調査隊の派遣では足りない可能性もある。
「……ゴルバ」
僕は胸元から一つの徽章を取り出してテーブルの上に置く。
「……ッ!?」
取り出した徽章はウォルリンク公爵家であることを示すものであった。
「僕たち三人は貴族とも少しばかり関わりがある人間なんだ。当然、これはお忍びで来ているし、余計なおせっかい、特別待遇はいらない。なのに僕がこれを見せた理由……それを理解しろ。低魔の森にエンシェントボアが出た」
「あ、あ、あ、あぁぁぁ。りょ、了承した」
ゴルバは声を震わせながら僕の言葉に頷く。
「それでは、ゴルバ……自分たちはこれで失礼する」
「う、うむぅ……?」
「我々の正体は他言無用で頼む。これかも一冒険者としてよろしく頼む」
僕は震えるゴルバへと念押しし、応接室を後にするのだった。
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