第8話
魔法を使って軽く止血したエンシェントボアの亡骸を手に持って進む僕は当然、街の人からの注目を集めていた。
「ちょ、ちょちょ!?な、なんですか、それは!」
冒険者ギルドの前にまでやってきた僕たちを見て、外にまで出てきた受付嬢が動揺の声を上げる。
「見ての通りだよ。エンシェントボア」
「え、え、え、エンシェントボア……ッ」
「とりあえずこいつはどこに置けば良いかな?」
「あっ!こちらでお引取りいたしますぅ!ちょっと、お願いします!」
僕は自分の方へと寄ってきたギルドの職員たちへとエンシェントボアを預ける。
「ちょっと奥の方でお話を伺っても……?流石にエンシェントボアを初心者が狩ってきたとなると何の話も聞かないわけにはいかないのです」
「えぇ、もちろん。というかこちらからも色々と報告するつもりだったしね。こいつ、普通に初心者の森にいたんだよ?案内された森にね」
「えっ……?」
僕の言葉を聞いた受付嬢が固まる。
「只事じゃないだろう?」
「そ、そうですね……それは看過出来るような内容じゃないですね……ちょ、ちょっと詳しく話を聞かせてもらいます」
「うん」
僕は受付嬢の言葉に頷き、マキナ様とラリア様を連れて彼女の後についていくのだった。
■■■■■
エンシェントボアを倒した帰ってきた僕たちは受付嬢によって冒険者ギルド内にある応接室へと案内されていた。
「……思ったよりも座り心地は良くないな」
「ラリア様。この椅子でもかなり質の良いものですよ。普段ラリア様の使っているものが良すぎるのです」
「む?そうなのか?」
「そうなのです。貴族と平民の生活水準にはかなりの差があるんですよ」
「そうなのか……」
僕の言葉にラリア様が頷く。
「現在、マキナ様もラリア様も平民としてここに立っています。貴族だとバレぬよう、ここらへんの価値観については色々と考えておいてください」
平民として冒険者を過ごす僕たち三人は魔法を使って本来の姿を隠し、バレないようにしているが、それでもその内面までは隠せない。
所作に出る気品を隠し切るのは諦めているが、それでも言動くらいは注意していきたい。
僕たちがそんな会話をしていると。
「すまない、待たせたな」
「……っ」
僕たちのいる応接室の扉が開かれ、中に一人の男が入ってくる……ラリア様。ノックもなしに入ってきたことに対して苛立たないで。
平民じゃ普通だから。
「俺がここのギルドのマスターを務めているゴルバだ。よろしく頼む」
「えぇ、よろしく」
僕は部屋へと入ってきたゴルバと握手を交わしながら口を開くだった。
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