第6話
一度は僕の足によって大きく吹き飛ばれたイノシシの魔物たるエンシェントボアは体をよろめきさせながらも立ち上がり、再び頭を僕たちの方へと向けてくる。
「ちょうどいいですね」
「……ブルル」
殺気をぶつけ、エンシェントボアが迂闊に飛び込まないよう牽制している僕は声を上げる。
「せっかくですし、このイノシシにはマキナ様二人の糧になってもらいましょうか。このイノシシの相手はお二人にお譲りしますよ」
僕はマキナ様とラリア様の後ろに立ち、戦闘態勢を解く。
「くくく……任せると良い!」
それを見たラリア様は意気揚々と声を張り上げ、魔法を唱え始める。
「すべてを飲み込め!『火球』!」
ラリア様が発動した魔法。
「ぶるんっ!」
魔法の才がない彼女が発動した炎魔法たる火球の威力はかなり控えめであり、エンシェントボアの鼻息一つでかき消される。
「あぁぁぁぁぁぁ!もうだめだァァァァァァアアアアアアアア!強すぎるぅ!?」
それを前にしたラリア様は崩れ落ち、悲鳴を上げる。
「……」
ラリア様がそんなことをしている間にマキナ様が飛び出す。
ここには戦闘をするつもりで来ておらず、今のマキナ様は武器となる剣を持っていない。
しかし、その代わりとしてマキナ様にはスキル『変体』を持っていた。
彼女のスキルの効果は無茶苦茶であり、圧倒的。
自分の腕の骨を二本へと増やし、その骨を伝説の鉱物たるアダマンタイトよりも硬くし、その骨を剣へと変えて自分の皮膚からぶち抜いて外に出すことで自分の骨を剣として使うことができるのだ、マキナ様は。
その際には痛覚を消せるので痛みを心配する必要もない。
「ぶもっ!?」
マキナ様の一刀を受けたエンシェントボアは驚愕の声を漏らし、その身を震わす。
「ブラァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そして、僕から向けられた殺気に臆していたエンシェントボアはその目に再び殺意をたぎらせ、マキナ様へと突撃していく。
「……ょし」
それに対してマキナ様は手にある剣を長い槍へと変え、自分へと突っ込んでくるエンシェントボアへと突き刺す。
「ブラァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
だが、それでもエンシェントボアは止まることなく突き進む。
「……っ」
それに対してどこまでも冷静なマキナ様はエンシェントボアの突進を回避する。
「……ぁ」
だがしかし、回避してもマキナ様の身を襲う突進時に発生した風によってマキナ様は吹き飛ばされてしまう。
「『火球』」
「……ぶもっ」
エンシェントボアが地面に転がるマキナ様を狙って再び突進する態勢に入ったタイミングで発動したラリア様の魔法がエンシェントボアへとぶつかり、それがエンシェントボアの気を引いたおかげでマキナ様が態勢を立て直す時間を手にすることに成功する……まさか、ラリア様の魔法が役に立つ日が来るとは。
僕は少しばかりの驚きを抱きながら二人の戦いぶりを眺め続けるのだった。
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