第14話
僕がマキナ様とラリア様の二人へと冒険者にならないとか誘ったその日の夜。
「んー、それではマキナ様。久しぶりに会話練習と行きましょうか」
「う、うん……そう、だね。が、頑張らないと……ッ!」
僕の言葉にマキナ様が頷き、並々ならぬ覚悟と意思を見せる。
「それではマキナ様は一人の男性です。年齢は34歳の中年男性。小さな領土を統治する子爵家の当主であり、妻が一人と子供が二人。当主としての能力は凡。可もなく不可もなく健全に領地を運営しているとする。趣味は釣りと料理。多数といるよりも単独でいることを望む男であり、寡黙な男。状況は夜。長引いた仕事から
「……ふ、夫婦」
「はい。そうです。それでは始めますね」
会話練習。
それは諜報面において絶大な力を持つマキナ様の能力を将来生かせるようにするのと、コミュ障の克服の二つの目的で行っている訓練である。
「おかえりなさい、貴方」
僕は自分の声質を変え、落ち着いた女性の声を上げる。
「……うむ。ただいま、戻った」
それに対してマキナ様も変体の力を使って自身の体を男性のものへと変え、男の声で返答する。
「夕食はどうなさいますか?」
「うむ。頂こうか……メニューは?」
「本日は貴方の好物である魚のソテーを用意させてもらいます」
「なるほど。感謝する」
マキナ様は僕が仮定した人間を演じ、僕が即興で作り出した状況下の中で懸命に言葉を紡ぐ。
「これはどういうことなの!?貴方ッ!!!浮気なんて認めないわよッ!」
「む、むぅ……」
僕によるヒステリック気味に浮気の問い詰め作業が佳境に入ったタイミングで。
「「……ッ!?」」
突然としてマキナ様の部屋の窓が壊され、部屋の中へと侵入者たちが流れ込んでくる。
「……やれ」
侵入者の数は全部で五人。
全員が黒ずくめの衣装を身に纏っており、リーダーと思われる男の発言で全員が一糸乱れぬ動きを見せてマキナ様へに向かって魔法を発動する。
ふむ、どこから来たのか気になりますが……それでもやはり優先すべきは侵入者への対応だな。
「不敬ですよ。誰が御前だと思っているのですか?」
僕の持つ黄金のように輝く両目。
そのうちの片方、右目の黄金が失われ……代わりにどこまで透き通って輝く白き瞳が露わになる。
「騒々しいです」
僕が右目が力、『分析の魔眼』の能力でもって侵入たちの使った魔法の術式をコピーし、もう片方の左目が力、『抑止の魔眼』の能力でもって発動する魔法によって自身にかかる負荷を無きものとする。
「……ば、馬鹿な」
僕は侵入者全員が使った魔法とまったくもって同じ魔法をぶつけることで相殺する。
まったくもって同じ魔法がぶつかると、その魔法は他へと一切の影響を与えることなく相殺され、消えてなくなるのだ。
「さて、貴方たちは何者ですかね?」
自身のスキルである軍神を使い、武器庫より一つの刀を抜き去った状態で僕は疑問の声を上げるのだった。
あとがき
カクヨム甲子園作!読んでぇ!どちらとも短編ですぐ読むことが出来ます。
『一つの本から始まるラブレター』
『https://kakuyomu.jp/works/16817330663174520007』
『集中力は蜜と愛の味』
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