第12話
ラリア様がこの場に現れると同時に砂へと変わったマキナ様。
「……え?えっ……ん?し、死んだ?」
そんなマキナ様を見てラリア様が困惑の声を上げる。
ラリア様がそのような表情を見せるのも当然だろう……マキナ様は本当に物理的に体が砂へと変わってしまっているのだ。
「死んでいませんので、大丈夫ですよ。これはマキナ様のスキルである『変体』の効果です」
「へ、変態!?」
僕の言葉に対してラリア様が頬を赤らめて驚愕の言葉を漏らす……結構ませてるんだね。
「phんぼ;rぁ、yhbらん!」
「……ッ!?」
赤く染まっていたラリア様の表情は次に青ざめる。
何もないところから謎の声が響いてきて。
「マキナ様の声ですね。不満を告げているのでしょう……マキナ様のスキルは変わる体と書いて変体と言います」
スキル。
それはこの世界に住まう者すべてが持っている魔力とはまた違う特殊な力。
ラリア様の持つスキルは『変体』であり、その効果は自分の体を自由自在に変形させられるというもの。
ちなみに僕のスキルは『軍神』。
武具の貯蔵と改造、複製を行う事ができるスキルである。
「な、なるほど……?」
「かなり便利なスキルですよ。体を変形させることで自由自在に間合いを操作できますし、口を二つ使って詠唱を二つ唱えることも出来ますし、戦闘面以外でも完璧な変装などにも使えます。これほどまでに応用が利き、様々なことが出来るスキルも珍しいですよ」
まぁ、これを持っているのがマキナ様であるせいでそんな素晴らしいスキルが人にびっくりして体を溶かすスキルにしかなっていないんだけど。
「かなり良いスキルであるな……な、名前はあれであるが。我のスキルである剣帝よりも遥かに良い」
「ははは……そうですねぇ」
剣に関するあらゆる才能に圧倒的な補正がつき、ただの棒切れであっても名剣へと変えてしまうほどの武器強化能力も持っているチートスキルである剣帝持ちが自分のスキルに不満とか贅沢にも程があるよ?
ラリア様のスキルも彼女の性格が故に宝の持ち腐れになっているよ。
「それではマキナ様。体を元に戻してもらえますか?」
僕はマキナ様であった粉を自分の服で隠しながら、彼女へと声をかける。
それを受け、地面に落ちている粉が動き出し、元の人の姿へと戻る。
「それではラリア様。申し訳ないのですが、自室へと戻っていただけませんでしょうか?」
背後にぴったりとマキナ様がくっつく中で、僕はラリア様へと声をかける。
「……その方が、良いみたいであるな。それでは我はここらへんでおさらばするとしよう!」
僕の言葉に頷いてこの場から立ち去ろうとするラリア様。
だがしかし、それを止める声が一つ。
「……いい」
「え?」
僕は自分にぴったりとしがみつくマキナ様からそんな言葉が出てきたことに対して本気で困惑の声を上げる。
「……一緒に、やる」
「……えっ?」
僕はマキナ様の言葉にただ本気で困惑し、動揺の声を漏らし続けるのだった。
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