第4話
自分たち以外には誰もいなかった遺跡を進んでいた時は意気揚々と僕の前を歩いていたマキナ様であるが、街に入った瞬間にマキナ様は僕の後ろにぴったりと隠れ、前も見ないで完全に僕頼りの行動を行っていた。
「ほら!ロキ様、うちの串焼きはどうだ?うめぇぞ?」
「おぉ、良いですね。ありがとうございます。マキナ様も喜ばれるでしょう。自室でいつも美味しそうにマキナ様はここで頂けるものを食べているのですよ」
「そりゃ良いな!ありがてぇってもんだ!」
「本当はここでマキナ様が美味しそうに食べている姿を見せてあげたいところではありますが、
「いやいや!わけぇお二人の邪魔をおっさんがするわけにはいかねぇよ!可愛いマキナ様の喜ぶ顔はロキ様のものだからよ!」
「ふふっ。そうですね。しばらくは僕が独り占めしちゃおうと思います」
「良いわねぇ!青春よぉ、うちの新鮮な野菜も如何かしら?美味しいわよぉ!マキナ様のご提案通りに農作物を育ててからめっきりうちの畑は絶好調なのよ!」
「おぉ、それなら良かったです。お野菜いいですねぇ、お値段はいくらほどでしょうか?」
「代金なんていらないわよぉ!よくしてもらっているからね!」
「いえいえ、我々はそれに、こうして我々がお金を落とすことにも意味があるんですよ。経済を回すことになりますからね。受け取ってくれた方がありがたいのです」
「もー、それだけ言われちゃ受け取らざるを得ないわねぇ」
「はい。ぜひ受け取ってください。あっ、串焼きのおじさんも!」
「おい、待てよ。俺はまだおじさんじゃねぇぞ?」
「十分アンタもおじさんよ!」
「お前、俺より年寄りだろうが!俺はおまえさんほどおじさんじゃねぇよ!
「何を!?」
「自分の年齢で考えればお二人はダブルスコアどころかトリプルスコアでも全然足りません。僕とマキナ様の年齢を足してトリプルスコアでも届かないですから。ご安心ください。お二人とも十分おじさんおばさんです」
「「……」」
「ふふっ。それではせっかく頂いた串焼きも冷めてしまいますので、ここら辺で失礼しますね」
「……ロキ様って割とSよな」
「……冗談が冗談でなくちゃんと実弾としてぶっ放すタイプよ。しかも、許される関係性の相手にせず、関係を破綻させるようなことはしない。策士よね」
僕は大通りに立ち並ぶ多くの屋台の店長とのやり取りを交わしながら街の中央にある一つの大きな屋敷の方へと向かっていく。
「そろそろつきますよ。マキナ様」
「……ぅん」
ここは一つの大国が都市のひとつ。
ウェルリンク公爵家がおひざ元。
アトラント王国。
国土の南部は広大な肥沃の大地を持ち、北部は様々な資源を採取することが出来る鉱山帯が広がっており、交易路としても重要な位置に存在するという歴史上を見てもこれ以上ないほどに恵まれた領土を持つ国である。
だが、四方を他国に囲まれており、最悪の場合は四つの戦線を抱えることにもなる立地でもある。
恵まれた土地であればあるほど他国から狙われ、不安定になるというのは古今東西、たとえ世界が変わっても変わることはない。
そんな状況下においても強力な軍事力と薄氷の上に成り立っている外交戦の上に国体を維持し、もう建国百年が近づきつつあった。
そんな国において、ウェルリンク公爵家は南部の肥沃な大地の上に広がっている豊かな農園を多く抱えている広大な領地を持つ一大貴族である。
アトラント王国内に四つしかない公爵家の一つであり、その影響力は国内でもかなりの大きさを誇っている。
そんなウェルリンク家のお膝元であり、公爵邸もあるここ、ロードレンクはこの国どころか世界でも有数の都市のひとつである。
そんな歳の中央に存在する公爵邸は立派な一言であり、まるで宮殿のようだった。
「つきましたよ。マキア様」
「……ぅん。早く、私たちの部屋に行こ?串焼き、食べたいな」
「えぇ。そうしましょうか」
僕とマキナ様はそんな宮殿のようなウォルリンク公爵家の邸宅へと入るのだった。
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