第2話
僕の手によって復活した途端に魔法を喰らう女性は震わせながら口を開ける。
「な、な、な、何故……何故ですが我が王!?」
「良いから眠る」
「わ、私のその身、血が一滴、毛の一本まで貴方のもの!決して裏切ることはなく、貴方に付き従い続きます!」
「だから眠れやァ!」
僕に向かって必死に懇願する女性に向かって容赦なく魔法を浴びせ続け、その意識を奪ってやる。
「うし、っと。これで良し」
その後、僕は気絶した女性に向かって更に魔法を発動。
自分の中にカミアが吸い込まれていき、その意識をそのまま深い闇へと落としたことを確認した僕は頷き、言葉を漏らす。
巨大な水晶の中に封印されていた一人の女性。
その女性はかつては栄華を誇っていた悪魔族の王国が英雄であり、王族へと永遠の忠誠を誓う者、カミアだ。
このカミアとの出会いがロキが最初にぶつかる闇落ちフラグの一つとなっている。
過去に囚われた一人の英雄との出会いは平和な生活を送っていたロキへの強い影響を与えたのだ。
カミア自身はロキの好きなように生きれば良く、それを全力でサポートすると話しているが、それでも悪魔族の繁栄と現在の没落を彼女の口から聞く中で。
何よりもカミア本人も意図せぬ形の問題。
カミア本人の魂にまでこびりついた悪魔族の人類への怨念に、霊長への欲望。
数多の悪魔族の亡霊がカミアの近くにいるロキの夢へと毎晩のように現れ、悪夢を見せ続けてきたのだ。
毎晩のように自身へと訴えかけてくる人類への怨念と霊長への欲望を前にロキの心は徐々に蝕まれ、闇へと近づく最初の要因となった。
カミアに悪いが、僕の平和な生活のためには彼女を僕の周りで自由にさせておくわけにはいかない。
カミアも僕のお気に入りキャラの一人だったので、いずれは自由にさせてあげようと思うが、それも数多の問題を解決してからだ。
一先ずはカミアを僕の内側へと封印である。
「カミアの問題はこれで大丈夫……これで幼少期における最大の問題はクリア。後は僕がヘマを打たなければ問題ない。成長してからも心配事はあるが、それは一旦無視してしまっていいだろう。そこまで大きな心配事でもないことだし」
これでひとまず自分が闇落ちすることになる最大の要因を省けたと言って良い。
カミアがいないだけで数多くの闇落ちフラグを折ることが出来る。
「戻りますか」
カミアが封じされていた巨大な水晶。
これが置かれていた小さな石畳の小部屋があるのはとある遺跡の地下。
「早く戻らないと心配させてしまう」
遺跡で穴に落ちてここにまでやってきた僕はここにたった一人で来たわけではない。
上の方に連れを一つ待たせているのだ。
いつまでもここにいたら上の方で待ってくれている人を心配させてしまうだろう。
「よっほ、せい……はっ!
僕は自分が落ちてきた穴を登り始める。
あいにくと、僕は空を飛んだりは出来ないのでせっせと素手で登るほかない……穴が狭いので登りにくい。
「ふぅー」
僕はかなりの苦労をしてなんとか落ちる前にいた場所にまでなんとか這い上がってくることが出来た。
「あわわわわ。ロキがぁ、ロキがぁ、落ちてしまった。ロキ、ロキがぁ……私のロキ。あぁ、助けを。あわわ、はひぃ!?誰に、私が?誰かに……助けを?話しかける?あびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびびび」
僕が戻ってきた場所。
そこには一人の少女がビクンビクンと体を震わせながら地面へと倒れこんで奇声をあげている。
そんな少女の目にはハイライトがなく、口からは魂のようなものがゲロのように地面を流れており、その様はまるでゾンビのようだった。
「ロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキロキ」
体を震わせ、口から何かを垂れ流し、徐々に体の輪郭さえボヤかせだした少女はただひたすらにハイライトのない瞳で僕の名前を呼び続けている。
「怖いですよ、マキナ様」
僕はそんな少女、マキア様へと声をかけるのだった。
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