二十一発目「オ〇ズにしていいよ」
【天ぷらうどん】が倒されて、俺は
これにて一件落着、ハッピーエンド。
あとは、クラスメイトと合流して、皆で現実世界に帰りたい。
そして、
「あれっ!!そういえば
「あっ!!」
まずいっ、完全に忘れていた。
俺も、
無事なのだろうか??早く回復スキルをかけないと、死ぬんじゃないか!?
「
薄暗い闇の中、周囲を見渡した。
しかし、視界に移るのは、こちらを見つめる二人。
リリィさんとユリィさんだけだ。
「茶髪の女性なら、私が回復しました。向こうで眠っていますよ。」
そう言ったのは、白い長髪の幼女、ユリィだ。
目を閉じたまま、座り込んだ状態で、闇の中へと指をさす。
「【
リリィさんの魔法で、周囲が明るく照らし出された。
リリィさんの手の平の中で、神秘的に揺らめく炎。
視界が開けて、ユリィの指さす先に、女性が倒れ込んでいた。
「
俺達は、
仰向けで目を瞑っていて、意識がないようだ。
破れた服から、綺麗なおへそが覗いていた。
目立った外傷はなく、ゆっくりとした呼吸とともに、彼女の横隔膜が上下していた。
「眠ってるだけか……良かったっ……」
俺も、心から安堵をした。
「起こさないようにしよう。疲れてるだろうから……」
「そうだね……ごめんねっ、
頬は赤みを帯びていて、どこか嬉しそうだった。
「ユリィさん!!ありがとうございますっ!!助かりましたっ!!」
俺は振り返り、救世主にお礼をした。
「うぁっ!?い、いえっ…こちらこそっ……お姉さまを支えてくれて、私を助けてくださった貴方たちに、感謝の気持ちが止まりません。
お姉さまも、私の為に、いつもありがとうございます。大好きですっ。」
ユリィさんは、目を閉じたまま、早口でまくしたてた。
もしかして、目が見えないのだろうか?
俺の大きめの声にも、驚いた様子だった。
「うへへぇ……照れますよっ、ユリィっ……。あたしもっ……
リリィさんが、嬉しそうな笑顔だった。
彼女のこんな顔を初めてみた。
今までは、知的で真剣な印象だったが……
……当然か、妹を救出できて、嬉しくない筈がない。
不安から解放された、こちらが彼女の素なのだろう。
「ねぇ。ユリィちゃん、だっけ? 目を閉じてるのは……もしかして目が見えないの??」
「……はい、生まれつきです……。ですが心配はありません。私の傍には、いつも優しい姉さまが居ます。申し訳ないと断っても、いつも側に居てくれます。
生き物の鼓動が見える魔法も、お姉さまに教えて貰いました」
それにしても、仲のいい姉妹だなぁ。
一人っ子の俺にとって、兄弟がいるのは羨ましい。
「リリィさん、俺達はこれから、消えたクラスメイトと合流して、現実世界に帰ろうと思っています
俺達が来た道は、
どうやって、天井の穴まで登りますか?」
俺の問いかけに、リリィさんは、ウゥムと唸る。
「ボス部屋ごと仲間が消えたのは、大洞窟の入口、開かずの間に繋がっていると聞きました。
つまり、キサズ川の中流域ですから……
……とにかく、転移魔法陣を見つけて、大洞窟から地上に脱出しましょう。
こんな危険な場所は、命が幾つあっても足りませんから……。
天井までいくのは、私が土で階段を作っていけば済む話ですが……
……正直、もうヘトヘトなんです。
リリィさんは、トンでもない提案をした。
もう一度、オ〇二ーをして、賢者になれという。
確かに、賢者の力なら空も飛べるが……!!
「えぇっ?……もう一度ですか……俺も疲れてるんですけど……仕方ないですかね……」
「ねぇ、私がやろうか??」
突然、
「天使だって、空をとべるよ……」
「そうですね、
リリィさんも同意した。
「ダメだぁああ!!……そ、そのっ!!、
例え、リリィさんにもっ!!」
「
俺が思わず叫び声を上げると、
俺と同じように、新崎さんも、好きな人の行為は他人に見られたくないと言った。
「うん……そう言って貰えて嬉しいけど……結局どうする??
正直、俺は、
「うーん、じゃあ、
「えぇ??」
俺の言い分を通す変わりに、ちゃんと見せてほしいということだろうか……
いや、そんなの恥ずかしすぎるだろっ……
それに、怖い……気持ち悪いと幻滅されてしまうかもしれない。
確かに興奮もするが、それよりも、緊張感や不安が、脳内に渦巻いた。
ぎゅっ!!
優しく包み込んで、俺の身体を温めてくれる。
彼女の身体は熱くて、呼吸も荒い……
やはり胸は柔らかかった。
「大丈夫……安心して……私は
だから、安心してオ〇ニーしていいよ……」
彼女の、耳元で投げかけられた言葉に、俺の心臓は止まりそうになった。
緊張感や不安が、甘い匂いに溶かされて、強烈な高揚感と幸福感に支配される。
「私をオ〇ズにつかっていいよ……」
もう、止まる事はできなかった……
俺は、
一生懸命、右手を振りしだいた……
「ユリィも見ちゃダメですよ。教育に悪いですし…」
「隠さなくても、もともと見えませんよ」
「そうでしたね」
後ろで、リリィ姉妹の会話が聞こえた。
完全に忘れていた。
聞こえるということは、逆も然り、俺達のセリフは彼女達に聞こえてしまうのだ。
あまり、変なセリフは言えないな。
俺を独り占めしたい
そして俺は、賢者になった。
―
ん……??
美味しそうな匂いがする…
これは……シュウマイ……
「………つまり…あたしの知る限り、ナロー世界からネラー世界への帰還方法はありません。
少なくとも、神様の助力なしでは不可能でしょう。
ダンジョン最下層、ラストボスの討伐報酬、【
ですが……かなり貴重な石なので、国に厳重に管理されているものです……手に入れるのは難しいかと……」
「そんな……あの石ってそんなに………」
幼い女の子と、知っている男の声がした。
「
私は、眠っていたようだ。
身体がだるい。起き上がれない。お腹に不思議な感覚がある。
あれ……私……なにがあったんだっけ……
「あ、
直穂ちゃんの声がした。
かなり、心配されているようだ。
「……んん……ちょっとだるいかも……お腹の中が気持ち悪い……」
「ホントにっ!?分かったっ、回復するねっ!!【
お腹の中に、温かい感覚が忍び込んでくる。
「あの
幼い女の子の声に、
確かにこの感覚は、お腹が空いている時の感覚だった。
お腹が減りすぎて、気持ちが悪くなっていたのだ。
「
私の唇に、あつあつのふわふわがピトリと触れる。
私は、食欲に従って、そのふわふわを口に入れた……
口の中で、熱いものが蕩けだした。
肉汁と湯気が、口の中を駆け巡り、私の味覚を刺激する。
「うっま……」
涙が出てきた……
死ぬほどうまい……全身が熱に包み込まれる……
身体中に、力の入る感覚が戻って来た。
よしっ!!立ち上がれるっ!!
「おはよっ
私は、身体を起こした。
そして、目を開けると、目の前には焚火があった。
その奥には大きな小籠包、私が命がけで収穫した糸欠片。
それらを囲むように、
そして、金髪ツインテールの少女と、白い長髪の幼女が座り込んでいる。
小籠包を片手に、食卓を囲みながら、皆が私を見つめていた。
「うぉぉ……可愛い子がいっぱい……。おかわりしていいですか??」
それが、最初に私の口からでた言葉だ。。
金髪の女の子は、リリィ。黒髪の女の子は、ユリィというらしい。
二人とも、私の命の恩人だそうだ。
敬語を使い、子供とは思えないほど賢い。
「……とにかく、私達は公国に向かいます。
私達は貴族のお嬢様なので、使いの者に、あなた方のクラスメイトの情報や、ネラー世界に帰還する方法を調べてもらいましょう」
「そうか……誘拐されたのは、まさか貴族ってのが理由か??」
「そうでしょうね……貴族の娘を二人も誘拐など、一大事件です、あってはならない事です。
私達は一刻も早く、公国に帰らねばなりません」
リリィさんは、貴族の娘と言った。
ふーん。この姉妹はお嬢様なのか。
羨ましいとは思う。
でも、なりたとは思わない。
面倒くさそうだし。
「という事で、地上にでるための、転移魔法陣を探そうと思います」
リリィさんの提案で、私達は立ち上がった。
小籠包を、氷と土で包装して、手分けして持つ。
そして私達は、大きな洞窟の中を、また歩き出した。
女の子4人に男の子1人、いわゆるハーレム状態だ。
喉が渇いたら、リリィさんが魔法で、水を作ってくれる。
「あの……この世界の魔法のシステムって……どうなっているんですか??
なにもない所から水が出てくるなんて、普通に考えたらあり得ないです。
リリィさんの体内から出ている訳では、ないんですよね?」
「そんな訳ないでしょう。魔法とは、世界に満ち溢れるダークエネルギーの形を変えて、目に見える形に変換する技術です。
つまり、エネルギー資源は無限なんですよ。理論上は、どんなに大きな魔法だって唱えられます。
しかし、人の身体を媒介とする以上、肉体的限界もあります、集中力と知識、才能も必要です」
行宗くんは、リリィさんと話してばかりだ。
新崎さんの方は、恥ずかしそうに顔を赤らめて、行宗くんをずっと見つめている。
告白する、と言っていたが、なにも進展していないのだろうか??
どこか、二人の雰囲気が変わった気がするが、ずっと話していない。
「まじでっ!!……ダークエネルギーって!本で読んだことあるわ!!俺達の世界と同じなんですかねっ!?」
「そちらの世界にも、同じ言葉があるのですか??」
こいつら、何を話しているんだ??
ダークエネルギーって何??アニメの話??訳わかんない。
あれ……そういえば不思議だな……
リリィさんもユリィさんも、日本語がペラペラだ。
異世界の人なのに、日本語が通じている。
私達をだました仮面の二人も、日本語で話していたよな。
もしかして、この世界って……
「あぁ!!あったっ!!あれが転移魔法陣ですよっ!!」
「マジすか!!」
リリィさんが大声を上げて、行宗くんがそれに続いた。
洞窟の行き止まり、
青い光で描かれた、複雑で規則的な紋章、それが幾つも続いている。
「かなり新しいですね……しかし構成が複雑です。神様ではなく、人が作っていますね。
行先は……フェロー地区ですか……なるほど……」
リリィさんは、ぶつぶつとひとり言を呟いていく。
「おそらくですが、私達の誘拐犯の逃走経路と思われます。
敵国であるガロン王国領地に繋がっているので、公国の足をまくのには好都合ですね。
しかし、私達の公国との国境付近、ここに入らない選択肢はないですね。
一緒に行きましょう」
「そ……そうか、でも敵国に繋がってるって、大丈夫なんですか?」
「私達は表に顔を出していないので、一般市民に気づかれる心配はないですが、王族に見つかると不味いですね。
でも、私達は急がねばなりません、私達には使命があるのです。
さあ皆さん、魔法陣の中に入って下さい」
私達は、魔法陣の範囲内に入った。
この感覚は昨日ぶりだ。
昨日は、仮面の男に騙されて、ダンジョンの最下層に呼び出されてしまった。
最悪の記憶だ。
思い出すだけで、恐怖のあまり吐きそうになる。
「では、参ります」
転移魔法陣が回転を始める。
白い光が、周囲を包み込んでいく。
リリィさんは、いい人だ。
人を騙したりしそうにない、純粋で、妹想いの優しい子。
兄弟げんかもしたことがないそうだ。兄をもつ私からすれば、信じがたい話だ。
そもそも彼女がいなければ、私達は永遠に、ダンジョンを彷徨う羽目になっていた。
彼女に頼るしかないのだ。
もう、疑うのはやめよう。
「あ……伝え忘れていました。
転移先は、高確率で水中です。
水の中に出ても、驚かず暴れず、身体が浮き上がるのを待って下さい……」
え……
リリィさんの言葉が聞こえた。
次の瞬間、私は一度意識を失って……
目が覚めると、冷たい水の中にいた……
「ごはぁああ!!!おぼっぼぅぅぅ」
一瞬で、鼻の穴に水が入る。
どちらが上か下か分からない、ただただ苦しくなる。
吐き出せば吐き出すほど、水が入ってくる。
目が開けられない、水中ゴーグルはない。
「うごぉぉおぉっ……っばぁああ……たずけ……でぇえ……」
私は、サッカーや陸上は得意だけど……
泳ぐのだけは、無理なんだ……
(うがぁががががが……じぬぅぅぅぅ!!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます