九発目③「新崎直穂と朝尾和奈」
【ルート③】
「
俺は、そう願った。
俺は二人を生き返らせる。
そして、
『承知した』
天から、神の声が聞こえた。
「はぁ?!何て言ったてめぇ!!ざけんな!取り消せよ!!」
クラスの全員が固まる中、
(やばい、殺される)
俺は、後ろを振り向き逃げようとした。
しかし今の俺は、世界最強の賢者ではない。
スキルが使えない、クラス最弱の運動音痴である。
ドゴォォ!!!
俺の背中に、鉄の拳が、腹を突き破るぐらいの勢いで、放たれる。
「ゴハッ!!!」
視界が真っ暗になって、呼吸が止まり、激痛が遅いかかる。
周囲の音が聞こえなくなり、心臓の音と己の呻き声だけが、やけに大きく聞こえる。
「あ"・・・あ"…あ"・・・」
(ヤベェ…死ぬ…本気で死ぬ・・・)
ドゴォ!ドゴォォ!!ドゴォォ!!
「おい、ヤベェだろ…」
「死んじゃうよっ!」
クラスの皆が俺の事を心配する声が、ずっと遠くから聞こえてくる気がする。
俺の意識は、徐々に薄れていき………
あ・・・。
あれ……?俺、殴られた後どうなった??
痺れるけど、激痛ではない……
目を開いたが、周囲は薄暗くて空気が冷たい。
背中がゴツゴツとしていて、柔らかくて温かい何かに両側を挟まれながら、俺は仰向けに寝ているようだ。
胸から下には、もこもことした布が被さっていて温かい。
どこだ??ここ?
俺はとりあえず、首を左側に傾けて、
状況を確認しようとした。
「はうっ!!???」
俺は、目玉が飛び出そうなほど、驚いた。
左を向いた俺の視界に広がるのは、クラスの美人、
それも、息のかかる距離で…
てか!唇エッロ!!
視線を下に下げていくと、動きやすさ重視の露出度の高い胸元から、胸の谷間がちらりと見えて、高校生離れした大きな双丘が、寝息に合わせて上下に揺れている。
こっ!これっていわゆる、添い寝って奴だよなっ!?
俺の脳は、一瞬の内にさまざまな思考を繰り広げた。
その結果、俺がとった行動とは……
逃避であった。
俺は、
こんな所を見られたら、クラスの男子に殺される。
それに、気まず過ぎるだろ。
俺は、全力で逃げようと試みた。
だが俺は、別の壁に阻まれた。
ゴンッ!
「んぐっ!!」
俺の後頭部が、何かと激突した。
右側に逃げようとした俺は、
「んんっ……ふうっ、んんっ…」
俺が身体を硬直させていると、
(はっ!はぁああ?!)
どうやら俺は、クラスの二人の美少女、
(何だよこれ!?エロ漫画かよ?!何が起こって…)
心臓が激しく鳴り出した。
二人の体温が温かい。
俺たちは冷えた大気の中、一枚の毛布に温められて眠っている。
というかコレって!新崎さんのコートじゃないか?!
何という事だ、四方八方を女子達に囲まれてしまった。
とりあえず、じっとしていないと、起こしてしまいそうだよな…
俺は、二人の間で大人しくすることにした。
俺の心臓と股間は、全く大人しく出来なかったが…。
とりあえず、状況を整理しよう…
俺は鼻息を荒くしながら、周囲を見渡した。
ここは恐らく、洞窟の中だろう。
薄暗くて、ゴツゴツした地面で、ゴォォォオという風の音が聞こえる。
なんで?俺たち三人は添い寝しているのだろうか?
二人は生きていた、それは良かった。
俺の身体も、少しは痛むものの大怪我の様子はない…
まあ、二人が起きたら聞いてみよう…
俺は、両隣の二人の肌の感触や肉付き、寝息や寝顔を見比べていく事にした。
なかなか、ここまで女子に近づける機会なんて滅多にない。
いけない事をしているような気分になるが、最初からこの状況だったのだ、犯罪では…ない、筈…
しかし、もし手を出したら犯罪になるだろう…
俺は、二人の身体やズボンの中へと伸びそうになる手を、必死で抑えつけながら、じっと二人を観察した。
胸の膨らみは、
それは幸せそうではあるものの、俺は
この子供のようなスラッとした身体のラインに、大人っぽい色気が乗っかって、
上質な脂ののったステーキのような、上品なエロさがあるのだ。
ああ、無茶苦茶美味しそうである。
この上品さを、愛でるのもイイが、汚すのもイイ。
とにかく要約すると、
そして俺は、身体全体の方へと目を向ける。
お尻は大きく安産型だが、キュッと締まっていて美しい。
きっと内側の締まりも抜群なのだろう。
そして、
しかし、肌はもちもちとして柔らかい、新崎さんの小さいくせに色っぽい体は、俺の支配欲を掻き立てる。
征服したい、守ってあげたいと思うのである。
そして俺は、二人の寝顔へと目を向ける。
女子の寝顔って、最高じゃないか。
可愛く見せていない、ありのままの表情を見る事が出来るのだ。
正直無茶苦茶キスをしたい。
白雪姫か何かみたいに、俺が魔法のキスで
ちなみに俺は、キス未経験である。
愛し合う相手と、顔をゼロ距離まで近づけて、見つめ合いながら唇を重ねるなんて、どんなに幸せかという事は、考えるまでもないだろう。
間接キスぐらいなら、良いですかね??
俺は人差し指を、
そしてその指を、恐る恐る俺の唇へと近づけて……
ちゅっ…
エグっ……
正直、味なんて分からなかったが、俺は凄まじい興奮と幸福感につつまれた。
間接キスである。
なんてエッチなのだろう。
童貞の俺には、これだけでお腹いっばいなのだが…
間接でコレなら、直接のキスやディープキスは、どんなに気持ちいいのだろう。
あぁ、キスしたい。こんなに近くに唇があるのに……
胸を揉みたい、抱きしめたい、太ももを撫でたい。
手を繋ぎたい、恋人繋ぎをしたい、背中からハグしたい。
服を剥がして、肌を重ねたい…
でも、それはやっちゃダメだ。
相手の気持ちを無視したら、それはレイプになる、この場合は睡姦だ。
それは人として、してはいけない。
俺は、そんな生殺し状態の中で、じっとしたまま二人が起きるのを待った。
俺の股間はぴょんぴょんと飛び跳ねている。
少し触れば、それだけで達してしまいそうだ。
(いや、無理だ…こんなの我慢出来ん…)
もうちょっとだけ…いいよな…
なぁに…たいしたことはしない。ちょっと胸に手を重ねるだけだ…
それだけでいい、それだけで俺は、1週間ぐらいオ〇ネタに困らないのだ…。
うん、
俺はそう言い聞かせて、新崎さんの貧乳の上に、手汗のついた右手を重ねていった。
もにゅ……
おっふ!!
厚い服越しのため、感触まではよく分からないが、流石女子の胸である、小さくても柔らかいな…
さて、〇首はどこら辺にあるのかなー?
俺は、背徳感と緊張感に胸を高鳴らせて、凄まじいほど興奮していた。
「ん……おはよ。起きたんだ…良かった…」
(!!!?)
寝起きでよだれを零しながら、眠そうに俺を見つめてくる。
ああ、神様!!私めにカメラを下さい!!この可愛い顔を撮影して、額縁に入れて飾りますので!!
。
じゃねぇだろっ!!そんなことより、早くこの手を引っ込めて…
「は?」
そこには、小さな胸に乗っかった、俺の右手があった。
そして
(アカン、もう手遅れや)
「新崎さんごめんなさ」
バチィィィ!!!
「最っ低!!」
俺は、顔面を思いっきりビンタされた。
容赦のない一撃に、俺の脳内は真っ白になる。
ゴン!
「うぐっ!!」
俺はそのまま反対側へ飛ばされて、後頭部を強くぶつけた。
後ろから
どうやら、俺がぶつかったのは、
「痛いってばっ!!」
ドゴォ!!
寝起きの
ドゴォォ!!
今度は、
サッカー部の鋭い蹴りが、俺の股間へと後ろからダイレクトゴールを決めた。
「がはぁぁ!!すみまぜん!!」
俺は涙目になりながら、また反対側の、
ぎゅむっ…
そんな俺は、
身体がぴったりと密着する。
至近距離で見つめ合い。胸から太ももまで、ぴったりとくっついた。
いや、身体柔らけェェ。
あったかくて、髪がさらさらで
やばい、寝起きの
マズイ、
「いやぁぁぁ!!」
なにか出してしまいそうだった。
「はぁ、はぁ…変態っ…」
いや俺、異世界に来てから、蹴られすぎじゃないか??
ほとんど自業自得なのだが…
「ねぇ
「ずみません…唇に、指を当てて…間接キスをしました…」
「はぁ?やっぱ変態じゃん。」
バレるなんて、思ってもいなかった。
いや、だって、仕方がないじゃないか……
女子二人に挟まれるシュチュエーションなんて、健全な高校生男子が耐えられるはずもないのだ。
「行宗くん、目が覚めたんだ。
あと…蹴ったり殴ったりしてごめんね。
私は寝起きか悪くてさ、無理やり起こされたら、その人を蹴り飛ばしちゃうんだ。」
隣の
いや、怖すぎだろ。
今後、
いや、そんな事あり得るのか??
というか、なんで俺たちは、添い寝してたんだよ?
「
「はっ?何でよっ。嫌よこんな変態なんか。」
「えー?そんな事言っちゃって。昨日は泣きながら必死に回復してたのに??」
「いやっ、だってコイツ!私の胸を触ったのよ!」
「マジ??まあ、一緒にくっついて寝ようって言い出した、
「それはっ!!…寒さを凌ぐ為だからっ。コイツの身体、暖かいし。」
「なら、胸を触られても仕方ないと思うよ?」
「どこがよっ!…
……もうっ!しょうがないわね。はい、【
痛みが徐々に引いていく。
そして俺は、
「すいませんでしたっ!!これでも我慢してたんです!ごめんなさいっ!!」
身を投げ打ち、誠心誠意土下座をする。
デジャブだな。
なんで
俺が頑張って我慢していた間は、ずっと起きなかったのに!!
「まあ行宗は、私の命の恩人だからね、見なかった事にしてあげる。
触られても、減るものじゃないしね。
それよりも、私達は今ね、危機的状況にいるの。」
「危機的状況??……それってどういう?」
エロい状況ではなくて?
「私達、このままだと全員、死ぬわ。」
「え??」
ーー
その後、
俺が気絶してから、二人と添い寝をするに至った経緯を語りだした。
その話を聞いて、俺は凄く後悔をした。
本当に、二人を生き返らせる選択をして良かったのだろうか、と。
それでも、どれだけ過去の選択を後悔をしても、希望を見出して先に進むしかない。
俺も二人も、まだ生きている。
それだけで、まだ希望はあるのだから。
[次章へ続く]
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