三発目「性なる交〇」
俺は、わなわなと身体を震わせながら、声を絞りだして謝った。
何について謝ったのか、何が怖くて震えているのか、あまりうまく説明できないけれど、
自分の中の一番見られたくない部分を見られてしまった羞恥心と、
気まずさが耐えられなくなって、絞り出した言葉が、「ごめんなさい」だった。
合わせる顔がないというのは。こういう状態だろう。
俺はじっと自分の足元を凝視しつづけた。
どこかに消えてしまいたい……
「ねぇ、
俺は、みっともない顔のまま、
褐色のブーツに、青みがかった白色のコート、そして透き通るような白い肌。
天使のような魔法少女がそこにいた。
こんなに近くで彼女を見るのは、何時ぶりだろうか。
目の前の彼女は、俺が妄想の中で作り出した「
穢れがなく、純粋な目。
俺は、こんな子を汚そうとしていたのか。
「泣いてるじゃん、どうしたの?、話してみてよ。」
その言葉がきっかけだった。
俺の涙は止まらなくなった。
「ごめんっ!
「うん……。別に私は気にしてないよ、びっくりしたけど、こんな変わった場所に来た、私も悪かったと思うし」
「え……?」
(気にして、ないのか?、嫌われていないのか?、傷ついていないのか?、なんでこんなに優しくしてくれるんだ?)
「それに、なにか事情があるんじゃないの?、こんな事するなんて、君らしくないよ。」
「えっ、」
「良ければ私が聞くよ、話してみる?」
その天使の微笑みに、俺は一生、新崎さんには敵わないと思った。
「はっ、話してみますっ……!」
俺はもう、涙で顔中くしゃくしゃにしながら、みっともなく答えた
「でも、話す時に、下ネタ言葉を使わないといけないのですが、大丈夫ですか?」
「あー、気にしないでいいよ、私に性器見せといて、いまさら何言ってんの」
(せ!せぃっ!?)
しっかり者で穢れのない、
「不潔なものを見せて、すみませんでしたっ!
えっと、実は…俺の「特殊スキル」は、【
あの、オ〇二ーってことです。うん、ハイ。」
「…う…うん…」
俺だってこんな事、
それに
「その、行為のフィニッシュの後の十分間だけ、ステータスが上がって、賢者になれるというスキルでして、使ってみようと…」
「ブッ…フフフッ…なにそれっ…アハハッ!、賢者って!まんま賢者タイムじゃん!…」
(えぇっ!?)
完全にドン引きする内容かと思ったのだが、
というか、賢者タイムという言葉を知っていた事に驚いた。
「ふぅーー。なるほど、それで私のコト考えながら、シテたってコト?」
「は、はい…」
「ふーん…。ねぇ、
暗く光る綺麗な瞳で、じっと俺を覗き込んでくる。
「好きだよっ……」
そうだ、今この瞬間、俺はまた、君を好きになったのだ。
あれ、これ、脈アリ??
「そっか、ふふっ、じゃあ
ん?
は??
どど、ドレイ??
それってどういう…?
「ドレイ…って、どういう…?」
「つまり、私が命令したことを、聞いてくれる人になって欲しいってコトだよ。」
それって、まあ、悪くない気もするのだが。
でも、命令の内容によるよな…
死ねと言われても。死にたくないし…。
「奴隷は、ちょっと…。ふ、普通に、付き合ってくれませんか?」
俺は、ずうずうしい奴だと自覚しながらも、正式な告白をした。
奴隷にしたいというぐらいだ、少なくとも俺に、好意を持っているのは確かだ。
というか奴隷って、
「ねぇ、ここで君がオ〇ニーしてた事とか、特殊スキルが【
「え?は、はい」
オ○ニーって言った?!しかも平然と!?
なんか
ここでのオ○ニーの事が、クラスの皆に知られたら、か…
そんなことになれば、俺の教室での居場所は消滅してしまう。
そうなれば、俺は確実に、不登校になってしまう。
「そっか。じゃあ、どっちか選んでよ。
君が変態だってコトを、クラスの皆に言いふらすか、私の奴隷になるか。」
(なっ!、そんなっ!)
そんな、こんなの一択、一択しか選べないだろ。
まさか、こき使われたり、酷い事をされたり?
いや、でも、
えーっと…!
「ほら、早く答えて」
「奴隷に、なります」
「よろしい、じゃあ、よろしくね。私の奴隷くん。」
俺は、
ーー
「じゃあ、最初の命令をするね。
さっき私が、アニメのセリフを叫びながら、ノリノリで刀を振っていたの、見ちゃったよね。
だけど、アレは凄く恥ずかしかったんだよ。
だから、私がアニメを好きだって事、絶対に誰にも言っちゃダメだから。」
え?、ああ。あれの事か、
オ○ニー事件のせいで忘れていたが、
俺が
現在放送中の深夜アニメ、【ルナアーク】の主人公の必殺技を叫んでいたが、
そういえば、
「
俺は、いつも勉強熱心で、サブカルに関心のなさそうな
率直な疑問をぶつけた。
「私がアニメを見ていたら変??
確かに学校では、くそ真面目の優等生キャラだけどさ。
ホントの私は、皆が思ってるようないい子じゃないから。
周りから、いい子に見えるように演じてるだけ。
ホントは、アニメと漫画が大好きで、変な趣味もあるし。
だから、さ。
君には、他の人に言えないような、私の本音をぶちまけられる、ゴミ箱みたいな存在になってほしいの。」
(ゴミ箱!?俺が!?)
「つまりね、私がどれだけ可愛くない事を言っても、ちゃんと聞いて、共感してくれる、そんな奴隷になってほしいの。多分、君なら、出来ると思う。
私は、君の
な、なるほど、そういう感じか。
多分、出来るとおもう。
俺は、どんな
「分かりました。頑張ります。」
「うん。じゃあ、次の命令。
私と一緒に、モンスターを倒して。
私の【特殊スキル】は、戦闘に向いていないから、皆みたいに一撃で倒せなくてさ。
まだ、皆から譲ってもらった一匹しか倒せていなくて、
だから人のいない、この洞窟に来た訳なんだけど…
とにかく、私のモンスターの討伐に、協力してくれない?、じゃなくてっ!
協力するの!これは命令だから。」
「はい」
俺は、奴隷らしくキチンと返事をした。
俺以外にも、ワンパンで倒せない人がいたのか。
しかし、戦闘に向いていない特殊スキル、か。
「そうだ、もう一つ大事な命令!
これから一生、私をオ○ズにしちゃダメだから。」
「はっ!はいっ!!」
今度は、だいぶ辛い命令をされてしまった。
ーー
「へぇー。「みずモブ」も見てるんだ!私も好きだよ!、今季のアニメは何本見てるの?」
「8とか、9本ぐらいかな。アニメレビューYouTuberさんの評価を見ながら、面白そうなやつだけ選んでる。」
「良いなぁ…。私は、勉強が忙しくてさ、週に4本くらいしか観れてないんたよね。
本当は私も、色んなアニメとか見たいのに…」
「なんで新崎さんは、そんなに勉強するの?」
「んー?ありきたりだけど、良い大学に入って、中学校の先生になる為だよ。」
「え!?中学の先生になるの?」
「うん、あの、社会の佐々木先生っていたじゃん、あの人見たいな先生になりたいなぁーって」
「あー、面白かったよな、佐々木先生。」
ゴミ箱である俺に、色んな本音を捨ててくる。
しかし俺には、この状況が、どう見ても奴隷と主人の関係には思えなかった。
洞窟の中を男女二人で、会話を弾ませながら一緒に歩いているこの状況って…
(どう見てもデート!、デートですよね!!?)
それに!コミュ障の筈の俺が、まったく緊張せずに話せている。
なんでだ?
さっきまでは、
どうして??
「あっ!、見つけた!さっき倒せなかった
視線の先には、俺が倒したハリネズミのモンスターが、4体、密集して集まっていた。
「えーっと、まあいいか…。
我、神の天使なりて、謀反者を裁き
TVアニメ【無限神話】に出てくる天使様の必殺技を、大声で詠唱した。
そして、
「うりゃぁあああ!」
と、叫びながら、魔法使いのローブをひるがえし、魔法使いに似つかわしくない短剣を、腰からスッと抜き出しながら、モンスターへと飛び込んでいく。
なんか、無茶苦茶カッコいいのだが。
俺がそばで聞いているのに、アニメのセリフを、恥じらいもなく叫んでくれるなんて、
俺に対して、心を開いてくれているのだろうか?
それとも、俺が奴隷だからだろうか?
俺も
流石に恥ずかしくて、技名は口に出さなかったが。
ーー
4匹のハリネズミ型モンスターを、全て狩り尽くした頃。
俺と彼女のミニバックの中から、
ビリリリリ……
という、金属音が鳴り響いた。
実戦練習の終了と、集合の合図である。
「ふぅ、ありがと、楽しかった!」
ああ、天使の笑顔だ。
この笑顔が見れるなら、俺は奴隷にでも悪魔にでもなってやる。
「じゃあ、別々に分かれて戻ろうか、
一緒にいたって皆にバレたらめんどくさいからね。
あと、
もう一度確認するけど、
今日ここであった事と、私達の関係は、二人だけの秘密だから。
それと、皆の前で、私をジロジロみたり、話しかけたりしたらダメ。
私をオ〇ズにして、エ〇チな妄想するのもダメ。
それは絶対だからね?」
「ハイ……」
可愛い顔を見せたと思ったら、途端に奴隷として扱われる。
俺の心をぐちゃぐちゃにしたいのか?
飴とムチを交互に使ってくる。
これが、DV彼女というやつだろうか?
でも俺も、彼女に依存してしまいそうだ。
ーー
俺は
(早めに戻らないと)
俺は、集合場所を指し示すコンパスを取り出して、その方向へと歩き出した。
「なぁ、
(!!!)
俺は、後ろからかけられた殺気の籠った低い声に、身体を縮こまらせた。
俺は、はっと振り返る。
そこにはクラスで隣の席の、
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