第41話
「じゃ、じゃあどうして毅を……」
「ん? あぁ、それはね……邪魔、だったから」
邪魔?
結は大河を見つめる。
さっきからの大河は結が知っている大河じゃない気がしてならない。
「この男は2年前、俺の好きだった女の子を俺から奪ったんだ。告白しようと思ってたのに、この男のことが好きだって又聞きした」
それは毅が女の子を奪ったことにはならない。
そう思ったが、グッと言葉を飲み込んだ。
「だから、今度はうばわれないようにしたかった」
大河の視線が結へ向かう。
結は一歩後ずさりをした。
雨が体の体温を急激に奪い取っていくのを感じる。
街はもう目の前になのに、また雨脚が強くなってきていた。
「結は、俺のものだ」
大河の手が伸びてきて、咄嗟に身を避ける。
大河は優しくてかっこよくて、頼りになる存在だった。
それなのに今は怖くて怖くて仕方がない。
死体のフリをすれば助かるとわかっていたのに、毅を殺害したのだから怖くないわけがなかった。
身を避けた結に一瞬大河の目が険しくなる。
しかし、すぐに和らいだ。
「まぁいい。結はもう俺から離れることはできないんだから」
「え……?」
「だってそうだろう? 自分の勘違いで周りをパニックに陥れて、何人が死んだ? ちゃんとした回避方法を知っていれば、誰も死なずにすんだんだ」
「それは……っ!」
言い返そうとしたけれど、できなかった。
1年前、もう少しちゃんと調べていれば。
もう少し色々と試してみていれば、今回のような大虐殺は起こらなかった。
施設内で結が回避方法を教えたりしなければ……!
「大丈夫だよ結。俺は今回のことも1年前のことも誰にも言わない」
大河が今にも倒れてしまいそうな結の肩に腕を回す。
結はもう逃げなかった。
逃げられないのだと、わかってしまった。
「そのかわり……」
これから先、ずーーーーーっと一緒だよ。
大河の小さな笑い声が結の耳に響き渡った。
END
死体写真2 西羽咲 花月 @katsuki03
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