第3話 三大欲求。


幼少期の頃は睡眠、食欲だけだった。

そして年を重ねるに連れて性欲が足されてそして性欲が殺人欲に変わった。


中学一年生の冬ごろに私は初めて性行為をした。

相手は団地に住む少年好きの娼婦だった。


そして三年生になると部屋に入れてもらえなくなり今度は彼女とするようになった。


そして高校に上がり同じ彼女とするようになってから私はフラれた。


「ねえ?あなたって私のことヤレる道具だと思ってるよね。デートだってしてくれないし連絡も返さない。なに?頭おかしいの?」


「君と俺は性欲を互いに発散させる為の関係じゃないのかい?」


そう言うと頬を叩かれた。

そして高校2年生の頃に音楽教諭と関係を持った。


その時だった。

私の上に跨り腰を振るその女性の裸体を見ながら性的興奮という言葉の真意が分からなくなってしまった。


チンパンジーにも乳や性器が付いているが性的興奮はしない。


なぜ人間の女性の裸体に私が興奮しチンパンジーにはしないのか。


猫でもイルカでもそうだ相同器官であるはずなのにそこに性的興奮は無い。


そして性欲というのは人間という動物が特別に持っている子孫繁栄における機能であると結論がついた。


花で言う花粉、蛍で言う尾の明かりなどの求愛行為そういうものと同じ人間は性欲という野生的な機能を得たのかもしれない。


そう思うと私のペニスは急激に勢いを無くし今まであった性欲という塊は一気に霧散してしまった。


そしてまた人間のみか持っている合理性や自然の摂理に欠けたある欲が私を満たした。


それは快楽のみで行う殺人だった。

初めは音楽教諭だった。


お忍び旅行をした際に試しに崖から落としてみた。

その瞬間は全くの無だった。


しかしその音楽教諭の両親が泣き崩れる様を見た時、身体全身が震えた。


鳥肌が立ち足がガクガクと震え立たなくなった肛門が思いっきり閉じて50秒間、息が出来なかった。


それほど強力な快楽が身体を包んだ。


もちろん音楽教諭は事故死になり私は長期の停学処分だけで事が済んだ。


そして私は殺人課の刑事になり自分が殺した者の親族や友達、夫、妻の顔を見るたびに私の欲求が満たされた。


殺しにもバリエーションをつけるとそれもそれで面白かった。

どのバリエーションで殺せば、目撃者が検察が刑事がどんな顔をするか。

それも快楽になった。


いつしか欲求が抑えられなくなり一年に一回、半年に一回、3ヶ月、1ヶ月と殺しのスパンが短くなりついに19人でバレてしまった。


バレてしまった時、最初に感じた感情は恥ずかしさと気まずさだった。


殺しというのは、マスターベーションと同じで人に見られる事なく1人でこっそりとするものである。


それがバレてしまった時は私は顔を真っ赤にして逃げてしまった。


あれほど恥ずかしい思いをしたのは後にも先にもあれだけだろう。


死刑執行が行われるまでの270日は禁欲した。

最初の1週間は暴れ狂うほど厳しく辛いものだったが2週間を過ぎれば次第に落ち着き辛さに慣れてきた。


そして転生して5年が経った。

270日の禁欲のおかげで殺人欲は、現れていない。


まだ5歳では何もできないが身体から湧き上がるエネルギーのようなものを時々感じる。


5年経って分かった事は、言語と自分の場所だけだった。


ここは大きな村でここは村で1番の大金持ちらしい。普通は牧畜と農業そして酪農で生計立ててるらしいがこの家は収穫した農産品を街や都市に売る仲介人的な事をしてるみたいだ。


ここの人達の言語は"アカサ語"というらしく時々訳のわからない事を言うが大体は人から聞き話し覚えた。


私も少しだがコミニュケーションを他者と取れるようになって来た。


眼鏡をかけた父親が中庭で寝転んでいる私に何やら深刻そうな声で話しかけてきた。


「〇〇いのしし、〇〇だから散歩は禁止ね」


………どうやら何とかイノシシが襲ってくるのか?どうか分からないが散歩が禁止されたらしい。


私はよくメイドと2人で散歩に出かけるのだがそれを禁止にされると暇になってしまう。


私は笑って頷くと父親は私の手を繋いで屋敷の中に連れて行った。


そして父親はメイドに向かって何か怒っているみたいだった。


「〇〇が、勝手にどっか行ったら危ないだろ!?今は〇〇いのししもいて〇〇のお爺さんも殺されてるんだ!」


ウズッウズッウズッウズッウズッウズッ。


私は人差し指の爪で親指の肉を削るように掻く。


殺されてる?だったらもう1人ぐらい死んでも……平気なんじゃないか?


2172日ぶりに殺人欲が身体を巡る。


「いいの?」


父親が我に返って私に振り向く。


「ん?」


私は笑って首を振る。

私の鼻息が荒くなる。


久しい感覚。

脳裏をめぐる。


また私は人を殺したい。


私は少し不気味とも言える満面の笑みで父親を見ていた。






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