恐れはせずとも憂いてる
釣ール
啓発の次は暴霊
女子高校生のブランドももうすぐ終わる。
親から聞く話や、友と過ごす時間で伝わってくる空気感は決して世が叫ぶ「多様性」が綺麗事だと教えてくれる。
最近は幽霊の正体が科学によって判明されたらしい。
今時科学が現実的でないことは、SNSやインチキそうなオンラインセミナー、インフルエンサーの言動や炎上を見ればすぐにわかる。
女性が社会に進出とか心底どうでもいい。
幽霊の正体やら物語なんかもどうでもいいから早く、遅れた人類を賛歌すら戯言だったと認めるまで屈服して消えて欲しい。
その幽霊もどっかの技術者が作ったのかもしれない。
「時代だなあ。」
決していい意味で使ってない。
作られた種族になってしまった幽霊がこの世を蹂躙するのも時間の問題だろう。
「おっと。
ここからの眺めを見ている人がいたとは。しかも女子高校生。」
私よりも歳上で綺麗な格好の男性。
しかし何かと戦っているのだろうか?
隠せてない傷跡とお洒落とは思えない鍛え方なのが見て分かる。
だが私に殺気や欲望を向けていないのは
只者ではなさそうだ。
「どう?上から眺める
彼の問いかけでここまでの詳細を省けるのは助かる。
どうやら同士のようだ。
「最高の景色。
終わりの始まりをインターネット以外で見られるのは貴重な人生経験だと思うから。」
彼は距離を取りながら私の隣へやってくる。
表情は読めないがここからの景色を楽しむ同士らしい掴み所のなさだった。
「終末思想とか、破滅願望とかあっても地震や干ばつは起こせないし逆にそれを避けようと生贄やら祈りを捧げても集団自己満足でしかなかった。
ふん。
善も悪も大義名分で村八分の思想だ。
海外でも広大な土地がなければ世界を知らずに幸せで、インターネットがやってきたら避けられない比較をして毎日を過ごすわけだ。」
「ほんとそう。
生きている以上、幸せや不幸なんてただのレッテルでしかなくて現実は死と隣り合わせなだけ。
私もここからの景色で滅びの兆候を観察するまでは、毒気にやられたように友人達と親世代よりはマシな画一的な生活を送って本気で笑っていた。
無駄なんだけどね。全部。」
「そうか。
暗い話のキッカケになってしまって悪い。」
つい内に秘める本音を知らない男性に語ってしまった。
優しい…というより気がきく人だ。
「これでもう暴力を使わなくて済む。
ただ振り払う火の粉は払うつもりだ。
あの暴霊達も俺達の味方をしてくれそうにないからな。
何かあったら反撃はさせてもらう。勿論、あの霊達に。」
それは頼もしい。
自分の身は自分で守るしかないこともあるけれど、思わぬ形でボディーガードと出会えた。
二人は高台からディスタンスを保ち、地上の終わりを眺めている。
本当は楽しさよりも無情な現実を嘆きたいのだけれども。
それはお互い口に出すことなく今、見ている趣味を共有するのだった。
恐れはせずとも憂いてる 釣ール @pixixy1O
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