第27話

裕之の騒動が一段落したとでも言うように、みんなが日常生活に戻っていく。



そんな中私はいつまでもその場から離れることができなかった。



叫び声をあげて泣きじゃくりたいのに、それもできない。



都会の片隅で、ただただ無言で涙を流し続ける。



やがて私はスマホをわざと取り落し、それを踏みつけた。



カシャンッと小さく音がして、画面が割れる。



再び踏みつける。



今度はもっと大きなヒビが入った。



三度付見つける。



液晶画面は完全に破れて中の部品がみえた。



「……っ! ……っ! ……っ!」



ガンッ!ガンッ!ガンッ!



歯を食いしばり、涙をこぼしながらスマホを踏みつけ、粉砕する。



そんなことをしても、もう遅いと知りながら……。





「○○高校での自殺って、結局集団自殺だったらしいね」



教室の片隅でそんなことが噂されていた。



「だと思った! だって、ちょっと自殺者多すぎだもんね」



「なにがあったのか知らないけど、死にたい気持ちが伝染したとかなんとか」



「あるよねそういうの。一番の友達が死にたくなってたら、それに引きずられちゃうかも」



違う。



そうじゃない!



言いたいのに、声がでない。



クラスメートたちの言葉だけが耳に聞こえてきて、自分の体は動かない。



まるでスライムの中に閉じ込められたように、言うことを聞かない。



「でも、それならうちのクラスの子たちだって……」



「あぁ、うん。みんな仲が良かったもんね。もしかしたら、同じなのかも」



アコ、和、加菜子、裕之の顔が浮かんでくる。



みんな死んでしまった。



でも自殺じゃない。



あれは呪いのメールのせいで……!



伝えなきゃいけない。



みんなにも届くかもしれないということを。



ようやく重たい瞼をお仕上げたとき、そこは病室だった。



私は点滴を受けて眠っていたようだ。



周囲を確認してみても、さっきまでの声の主はどこにもいない。



あるのは隣の空のベッドのみだ。



私は大きく息を吐き出した。



目の前で裕之が死んだことのショックでしばらく入院することになったことを思い出す。



点滴はストレスで全く食べられなくなったことで、栄養を入れられているのだ。



私は目を閉じて深く呼吸を繰り返す。



結局生き残ったのは私だけ。



これから先どうすればいいのか検討もつかない。



裕之が自殺をしたあと、担任教師や警察の人に呪いのメールについて説明したが、当然のように信じてもらうことはできなかった。



それでもイオリの呪いはまだ続いている。



電波を使って、登録されているアドレスに飛んでいく。



どこかでスマホが震える音がした気がして、目を開けた。



院内はスマホ使用禁止だから、病室内で聞こえるはずがない。



きっと私の勘違いだ。



そして、また目を閉じてまどろみはじめる。



今度こそ、みんなの夢を、幸せな夢を見れますように。



スマホのバイブ音はどこからか、ずっとずっとなり続けていたのだった。





END


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死体写真 西羽咲 花月 @katsuki03

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