ちょっとエッチ? なSS集

ちょっとエッチ? なSS1【気絶するほど気持ちいい】

 またやってしまった。


「そんな謝らなくてもいいのに」

「いや、そういうわけにもいくか。本当にすまん」


 ベッドの上でうつろな瞳に白濁はくだくにまみれた顔で微笑む沙優を優しく拭いてやる。

 自分自身では充分リミッターをかけているつもりなんだが、今日みたいな明日のことを気にしないでいい日は油断しているとつい無意識のうちに外れてしまう。沙優をセックスの最中に気絶させてしまったのはこれで何度目だ。


「私のほうこそごめんね。吉田さん、あとちょっとで中イキできそうだったのに。もう一回する?」

「さすがに気絶した姿を見てすぐやれるほど鬼畜じゃないぞ」

「だよね。じゃあせめて繋がったまま一緒に寝よっか」


 拭き取ったティッシュを丸めてゴミ箱に投げ捨てると、俺は横向きで眠る沙優に再び身体を重ねた。縮み始めていたモノは先端が入り口に触れるなり瞬時に元気を取り戻し、ぐちゅぐちゅとなまめかしい音を立てて彼女の奥まで侵入してゆく。

 侵入、というのはおかしな表現だな。ちゃんと家主の許可を得ているのだからこの場合はお邪魔、というのが正しい。

 

「......ふふ」

「どうした」

「ううん。かたくなに私とのエッチを拒否してた昔の吉田さんはどこ行っちゃったのかな~って」

「いい加減もうその話は勘弁してくれ」


 恥ずかしさと胸板に伝わる沙優のダイレクトな鼻息のくすぐったさで肩が揺れる。


「何度も言うが、あの頃は沙優のことを家族として見ていたというか。でもだからといって女として見ていなかったわけでもなくてだな」

「分かってるって。自分の気持ちだからこそ自分じゃ気付けないことってあるよね。私だってそうだったから気持ち分かるよ」

「じゃあなんで定期的に訊くんだ」

「それはもちろん、吉田さんの反応が面白いからに決まってるでしょ」


 ニヤニヤと口角を上げてからかってくるので仕返しにと乳首を軽く指で弾いてやる。

『んッ』と甘い声を漏らし、その仕返しの仕返しなのか沙優も俺の乳首をいじりはじめた。

 

「冗談。吉田さんから私と恋人になるまでの歴史を聞いてるとさ、自分がどれだけ愛されてきたのかを改めて実感できて幸せな気分になれるの」

「かという俺自身のほうは、いつ沙優のことを明白に女として好きになったのか未だによく分かってないんだよな」


 ちなみに沙優が俺への恋心を意識した決め手は、昔沙優を送り届けに一緒に北海道に戻った際、俺が母親を説得していた時だと以前訊いたことがある。


「それ本人を前にして言うかな。でも女たらしの吉田さんらしいと思う」

「俺そんなに言うほど女たらしか」

「もう、どの口が言うの」


 さっきまで俺の乳首をいじっていた指を今度は唇に指し、ジト目でたしなめる。


「少なくとも私を除いて吉田さんのことが好きだった女の人は4人も知ってるんだから」

「うぇ、女って怖えな」

「そうだよ~。だから浮気なんてしたら、いま私の中に入ってるモノをどうにかしちゃうんだからね」


 指の腹でを描くように唇に押し当て脅しをかける沙優に鳥肌が立つ。 


「するかよ。俺がそんなゲスな真似するような人間に見えるか」

「ん~、見えないかな。吉田さんって優しいは優しくても背中に一本ちゃんと筋が通った人だから。昔の私みたいに迫る人がいたとしても絶対に手を出さないって信じてる」

「ありがとな。その期待に応えられるようこれからも頑張るよ」


 優しい・他人想い・料理が上手い・一緒にいると安心する・可愛い・綺麗・ほど良い肉付きで暴力的な身体・セックスが上手い......どれだけ沙優を形成する言葉を並べてみても、当てはまりはしても沙優を好きになった芯たる部分かと言われれば、どれもそうであって微妙に違う気がする。

 不思議な魅力を放つ彼女には好きになる理由なんてものがそもそも無粋ぶすいなのかもしれないな。他の女に目もくれる暇がないくらいに、俺は現在進行形で沙優に恋している。


「......ちょっと待て。いま、4人っていったか」

「うん。私を除いてね」


 一つの疑問が解決したところで新たな疑問が俺の前に立ちふさがった。


「後藤さんに神田先輩に......あと三島。最後の一人は一体誰だ?」 

「さぁ誰でしょうかねぇ~」

「もったいぶらずに教えろよ」

「ダ~メ。もしかしたら私の勘違いの可能性だってあるし。でも吉田さんなら何か心辺りがあるんじゃない?」


 意味深に話を振られてもそれに該当する女のイメージが欠片かけらも出てこない。

 沙優が知っているとなるとかなり範囲が限定されるが、自分の感情に単純バカだった俺には難易度が高すぎだ。

 ......それにしても、沙優と繋がりながら他の女のことを考えているというのに、怒りもしないでむしろこの余裕とは......。幾多の苦難困難を乗り越えてきた女というのは、俺が思っている以上にたくましい存在なのかもしれない。

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