第2話 踏み出す勇気

「鵺が一撃で倒された……何者なんだ」

 ヘリコプターシステムから送られた画像を見て、天野敏夫あまのとしおは愕然とした。

 かつて、政府に存在していた不明生物対策本部が解散することとなり、その業務はすべて新設される国家安全保障局(National Security Secretariat:NSS)に移管。防衛政策局から出向してきた天野が班長(参事官)に就任。妖獣に関する情報の取りまとめを行うこととなったが、謎の人物が妖獣を倒したため、頭を悩ますこととなった。

「日本刀で切り裂いたんですかね? どんな原理なんですかね?」

 天野班長の腹心、木村隆志きむらたかしは頬杖をしながら考えた。警察庁警備局から出向してきた35歳。天野班長を支える腹心的な人物で、常に柔軟な発想をするよう心掛けている。

「重火器を何発もぶち込まないと鵺は倒れなかったんだ。それを一撃で倒すのは、相当な実力の持ち主と見たほうがいい」

 木村と同じく警察庁警備局からやってきた古橋大助ふるはしだいすけは映像を見ると、そう結論付けた。

「どこに消えたの? この人? 戦った後、妖獣と同じく姿を消したんだけど」

 公安調査庁からやってきた井出正也いでまさなりが口にすると、古橋も同意した。

「またひとつ、悩みの種が増えたわけだ。余計な仕事を増やすんじゃねぇよ」

「ごもっとも!」

「普通の発想で考えちゃいけない気がしますね」

 班の中で最年少の星野三郎ほしのさぶろうがそう口にした。財務省から出向してきた人物で、まだ28歳だが、将来を有望視されており、自分よりも年齢が高いメンバーに対しても財務官僚らしく物怖じしない態度で接している。

「そうね。班長、これ総理報告案件と考えてよろしいでしょうか?」

 外務省から出向してきた江戸川明子えどがわあきこがそう言うと、天野班長がうなずいた。

「そうだな。SAFではなく、所在不明の人物が妖獣を倒したんだ。しかも、一撃で。総理報告案件だ」

 天野がそう言うと、江戸川がノートPCのキーボードをたたき出し、総理に提出する報告書の作成に入った。

「分かっていることを列挙しよう」

 木村はそう言うとホワイトボードに現在知っている情報を書きだした。

「この人物は女性でいいのか? 江戸川の目から見てどう思った」

「女性でいいと思います。着ている服装は巫女装束でいいんでしょうか?」

「巫女さんの服装って上が白、下が赤とかじゃありませんでしたっけ?」

「一般的な巫女さんは白い小袖に赤い袴を着用していますが、今回出現した人物は上下が逆になっています。おそらく、巫女装束をベースにして独自に編み出したのではないでしょうか?」

 ネットで巫女装束を検索した星野が画像を見せながら説明した。木村がホワイトボードに要点をメモしている。

「古橋、所持している日本刀の分類は分かるか?」

刃長はちょうは60センチくらいかな? 江戸時代に武士が携帯していた脇差わきざしと同等と考えていいと思う。これ、村正むらまさじゃないかな」

 所持していた日本刀を画像検索したところ、村正と一致。古橋はそう結論付けた。

 武器が判明したため、背丈はどれくらいとか。BMI基準で換算したほうがいいとか各々が話していると、画像を何度も繰り返し見ている天野が口を開いた。

「……これは何を履いているんだ?」

「下駄ですかね? ますます巫女に似た格好。ネットの反応はどうなっている?」

 木村が指示を飛ばすと、星野が完結明瞭に答えた。

「各種SNSで鵺、人物、巫女で検索をかけましたが、仙波でSAFが倒したことを報じているアカウントは存在しましたが、若宮の件をつぶやいているアカウントは発見されませんでした」

「突然起きた出来事に困惑を隠しきれないってところかな……」

 古橋はそう言って納得した。

「こんなものかな……ほかに気になったところはあるか?」

「味方か敵なのかは判別できないってところかな」

 井出がそういうと、江戸川も続けた。

「そうだね。鵺を倒しただけじゃまだ何とも言えないね」

「これが限界かな……」

 木村がそうつぶやくと、天野が口を開いた。

「竹中さんに電話するか。警察はどこまで把握しているんだ」

 天野は電話をかけると1コールで相手が出てきた。

「どうした天野。ふっ、もしかして、若宮の件か?」

 竹中正好たけなかまさよしは待っていましたという態度で語った。続出する不明生物に対処するため、警察庁警備局に不明生物対策室を設立。その初代室長を務めていた岸田が埼玉県警の本部長に就任したため、今年の4月に室長に就任。本人曰く平凡な人生しか歩んでないと語っているが、赤軍派のアジトを一人で壊滅させたなどいろいろな伝説を持っている。

「話が早い。SAFから何か上がっていないか教えてほしいんだ」

「分かった。まずは共通認識の確認から。身長は165~170、体重は分からんがおそらく55くらい、性別は女性。巫女っぽい服装をしている。相手を倒した武器は日本刀だが、日本刀一撃で倒せたら苦労はしない。おそらく何らかの能力を有している可能性がある。出現経路は不明」

 竹中がそう言うと、天野は今知っている情報をすべて伝えた。

「なるほど、NSS(国家安全保障局)は使った日本刀は村正だと睨んだわけね。総理報告の題目は何にするつもりでいる?」

 竹中がそう言うと、天野は報告書を作成しているディレクトリに飛び、読み専でファイルを開いた。

「妖獣との戦闘行為に介入した素性不明の人物に関する報告書。今のところ、これで出すつもりでいる」

「まぁ、それが無難なところだな」

「現場に到着したSAFからは何か連絡がなかったか?」

「下駄の音が響いたって言っていたな。あとは戦闘後に発生した桜吹雪と同時に姿を消したって伊吹が証言している。1時間弱周囲を捜索したが、赤い巫女さんを目撃した人は居ないってさ」

「赤い巫女、警察はそう呼んでいるのか?」

「名無しの権兵衛さんじゃかわいそうだろ。世間はどう呼ぶかは分からないが、こっちは赤い巫女で呼ぶことにした。無線用語はRM」

「なるほど、Red shrine Maiden、赤い巫女ということか」

「そういうこと。こっちは赤い巫女が敵かどうか判別できない状態である。天野はどう見る?」

「今のところは何とも言えない。そこは竹中と認識が同じで助かった」

「ほかに何か聞きたいことはあるか?」

「今のところは大丈夫だ。じゃあ、またなにかあったら連絡する」

 電話を切ると、竹中とのやり取りで増えた情報をホワイトボードに追加。報告書が完成したため、天野は総理のところに向かった。


 ※


「素性不明の人物か。これまた厄介な案件が増えたね」

 報告書の中身を読んだ磯部真由美いそべまゆみ内閣総理大臣がため息交じりにつぶやいた。身長は170センチを超えており、黒髪のセミロング。衆議院議員に初当選した時から一貫してパンツスーツで登院しているため、スカート姿を見た人がほとんどいない。父親が政治家だったこともあり、後継者として早くから教育されていたため、楚々そそとした振る舞いをしており、頑固で融通が利かない性格の持ち主だ。

「現状、敵か味方か判別できない状態であります。しばらくは様子見ということで竹中室長とは合意が取れています」

「なるほど。もし、この素性不明の人物が我々に牙を向けたときの対応策はありますか?」

「そこに関しては今後の課題として、警察庁とは連携したいと思います」

「この赤い巫女に関しては、国民に公表して良いのか?」

 内閣官房長官の石川和三郎いしかわかずさぶろうが天野に聞いてきた。前年に行われた総裁選挙で磯部真由美を担いだ人物と言われており、総裁選挙後は幹事長代理として竹田幹事長と二人三脚で全国行脚。官房長官就任は政権交代に貢献した論功行賞と一部マスコミから言われているが、気にすることなく職務を全うしている。

「若宮の件を報じているSNSは少なかったため、現状、公表はしなくてもいいと思っています。ですが、これは私個人の意見ですが、次も出てくると思います。その時は、公表してもいいと思います」

「なるほど、次出現したタイミングで公表だな。了解した。マスコミからなんで言わなかったのかって言われた場合は調査中だったためということで押し通そう」

 石川官房長官がそうつぶやくと、執務室に木村が入ってきて耳打ちした。

「総理、ただいま妖獣が出現したとの報が入りました。飛行能力を有しているとのことです」

「……飛行能力?」

「初めて出現した妖獣ですな」

 今まで、妖獣と言えば歩行が原則だった。鵺は跳躍力に優れており、神出鬼没だったが飛行能力は有していなかった。そのため、歩行生物という分類で区別していたが、その区別に該当しない新たな妖獣が出たことになる。

「場所はどこ?」

「東京都飛鳥山あすかやま区になります」

「分かった。Ⅿルームに向かう。石川長官は緊急記者会見を開いてくれ」

 防災服を着用した磯部総理は執務室を出ると、首相官邸に併設されたMルームに向かった。

「お疲れ様です」

 先ほど天野と電話をしていた竹中不明生物対策室長と防衛政策局生物課の岩本課長が総理に向かって一礼した。妖獣が出現した場合、今までは不明生物対策本部に集まった職員で情報の分析、対応を協議したが、本部の解散が決まったことを受け、役割が警察庁警備局不明生物対策室、国家安全保障局妖獣班、防衛省防衛政策局生物課に分散。異例事象と判断した場合は、三つの組織に所属している職員が一堂に集まり対策を協議する場としてMルームが設けられることとなった。

「状況はどうなっている?」

「等身大の妖獣が赤羽に出現。飛鳥山警察が初期対応を行いましたが、駆除できなかったため、SAFが出動。現場に向かっています」

 モニターには妖獣が出現した地域の様子が映し出されている。人々は逃げまどい、飛行能力を有している妖獣が飛び交い、窓ガラスとかを破壊している。

「警視庁特別攻撃部隊(SAF)、間もなく現着します」

 木村がそう言うと、場に緊張感が走った。

「頼むぞ……」

 竹中室長がそうつぶやくと、戦闘が始まった。しかし、飛行能力を有しているため、SAFは苦戦を強いられる。そうこうしているうちに隊員の1名が妖獣に攻撃され、道路に倒れた。

「自衛隊で対抗できる?」

 磯部総理がそう口にすると、岩本課長が言及した。

「あの移動速度を相手にするのは自衛隊でも至難の業です」

「……そうか。現状は打つ手なしか」

「攻撃さえ当たればいいんだけどな」

 木村がそうつぶやくと、モニターに映っていた妖獣が黒いもやとなって姿を消した。

「逃げられたか……」

 磯部総理が苦虫をかみしめると、江戸川が口を開いた。

「過去の文献に同生物の出現を確認。今、モニターに投影します」

 モニターには、過去の文献に記された妖獣の姿が映し出された。

網剪あみきり?」

「そうですね。飛行能力を有しており、海老のような身体で両手は蟹のハサミ。身体は後ろに行くにつれて長細くなっており、髪の毛が生えていて口はくちばし状。特徴は過去の文献に記述されている通りですが、今回出現した網剪は身長180センチを超えています」

「以後、この妖獣を網剪と呼称する。竹中室長は各都道府県に通達。出現した場合の対策の検討。天野参事官は網剪に関するさらなる情報収集、岩本課長は警察が対応に失敗した時を想定した作戦計画の立案。あとは任せました」

 そう言うと、磯部総理は部屋を出た。飛鳥山の一件は報道各社に伝わり、飛行能力を有した妖獣の出現は世間に衝撃を与えることとなった。


 ※


「ニュースをお伝えします。昨日、東京都飛鳥山区にて出現した妖獣は過去に出現した妖獣とは異なり、飛行能力を有していると石川官房長官が記者会見で発表。政府として対策を急ぐ方針を示しました」

 朝ごはんを食べながらニュースを見ていると、昨日出現した鵺よりも先に、空飛ぶ妖獣のことがトップニュース扱いになった。たぶん、見ていたら鵺のことも報じるだろう。そう思いながら眺めていたけど、鵺のことを報じることなく次の話題へと移り変わった。

 マジか……倒したらそれで終わり? それとも、話題が上書きされた? どっちかなんだろうな。きっと。

 テレビを消すと、食器を流し戻し、自室で制服に着替えた。今日は体育があるから、あらかじめ体育着を着ておかないと。そう思いながら着替えていると、脳内を誰かが話しかけてきた。

「昨日はありがとう由美子」

 この声は鳳龍師だ。お母さんとお父さん、兄は家を出たため、この家には誰もいない。私は心の声ではなく、口に出した。

「鳳龍師のこと、誰もニュースにしていないけど、いいの?」

「そのことは別に気にしていない。いずれ、この世界にも認知される時は来るはず。それが早くなるか遅くなるかの違いさ」

「早くなるか遅くなるかね」

「由美子、ニュースでやっていた敵のことなんだけど」

「えっと……確か網剪だっけ? それがどうしたの?」

「前、出てきたときはあんなに大きくなかった」

「それって……どういう意味?」

「あいつが等身大まで大きくさせたんだと思う。私に対抗するために」

「……あいつ?」

「昔、私が戦った相手だよ。いずれ話す時が来ると思う。由美子、網剪が次出てきたとき協力してほしいんだけどいい?」

「授業中に出てくるのだけは勘弁してほしいな」

「そうだね。この時代は初めてだけど、昔に比べたらいろいろと忙しそうだし」

「この時代……? 鳳龍師って前も出たことあるの?」

「今から100年くらい前かな。あの時は学生じゃなかったから、自由に動くことができた。身内にも理解者はいたしね。でも、今はやることがいろいろとあって大変そうだ」

「今日は仮入部があるから、妖獣が出てくることになったら夕方以降に現れてほしいな」

「反応を感じたら、呼びかけるから。その時はよろしくね」

「分かったよ」

 着替え終わり、カバンの中身がすべてそろっていることを確認すると、私は自宅を出た。うーん、気持ちいい朝。だけど、今日は6時間授業。それを思うと、なんだが憂鬱。そう思いながら登校。教室に入ると、優子がテンション高めで騒いでいた。

「由美っちおはよう!」

「優子おはよう。どうしたの? 朝からテンション高いよ」

「昨日凄いことが起こったんだよ! 由美子ちゃんと別れた直後、鵺が現れたんだよ。由美子ちゃん知っているよね」

「知っている。急いでその場から離れたけど、それがどうかしたの?」

「その鵺を一撃で倒した人物が現れたんだよ! しかも日本刀で!」

「いや、あれはすごかったよね」

「弾丸を何発も撃ち込まないといけない相手を一撃だからな。野口さん、見ることが出来なくて残念だよ」

 それ私だよって言いたかったけど、私は我慢した。

「でもさ優子。そんなすごい人がいたのならば、なんでニュースになってないの?」

「それは俺も気になった。たぶん、SNSや動画サイトであんまり話題になってなかったからじゃない? 目撃者が一定の人間しかいなかったから」

「たまたま取材でテレビクルーとかがいたら話は別だけど、昨日はいなかったよね」

 優子と黒崎はなんで鵺を倒した人物がニュースになっていないのか議論していたが、私はななみの右膝に貼ってある絆創膏に目が止まった。

「……ななみ、膝どうしたの?」

 本当は転んだ時に出来た傷だと知っているけど、一応聞くとななみが答えた。

「昨日鵺に追いかけられたとき転んでね。それで怪我したんだ」

「あの時、ななみちゃん食われるかと思ったよ」

「いやあ、人間いざとなったら体が動かなくなるもんだなって思ったんだ」

「謎の人物が現れなかったら、西村はだめだった。あの人に感謝だな」

 斎藤がそう言うと、優子とななみ、黒崎の3人はうなずいた。ほんと、ななみが無事でよかったよ。そう思っていると、チャイムが鳴り、タイミングよく立花先生がやってきた。

「おっ、みんないるな。昨日、若宮に妖獣が出たって話が話題になっていたから、全員いるか心配したんだ。じゃあ、今日の日直は……」

 そう言うと、日直担当が号令をかけた。


 ※


「じゃあ、社会の授業を始めるぞ」

 社会科を担当するのは、クラスの担任を務めている立花先生だ。確か今年26歳になるんだっけ? 大学卒業してから3年ちょっとで担任を務めることになったみたいだけど、正直なんだか頼りなさそうなんだよな。

「ほかのクラスでも話しているけど、まずみんなには前提知識として覚えてもらいたいことがある。これは指導要領とかに載ってないことだ。地理、歴史、公民の教科書を全部出してくれ。あと資料集も」

 立花先生がそう言ったため、私たちは机の中から購入した地理、歴史、公民の教科書、そして資料集を出した。

「これからやることを説明する。各教科書と各資料集10分読んでくれ。流し読みでもいい。端っこから端っこまですべて見てくれ。早く読み終えてしまった場合は何度も繰り返すこと。そして、残りの10分で読ませた意図を説明する。じゃあ、最初は地理の教科書から行くぞ」

 立花先生がそう言うと、私たちは地理の教科書を開いた。立花先生はストップウォッチを取り出すと時間を設定している。

「準備は良いか。始めるぞ」

 立花先生がストップウォッチを作動させると、私は地理の教科書をめくった。流し読みでいいから、端っこから端っこまで読むって言っていたな。

 教室は教科書をめくる音しか聞こえない。一巡してしまったため、私はもう一回頭から教科書を流し読みした。意図は最後に説明するって言っていたけど、どんな意味があるんだろう。そう思っていると、ストップウォッチが鳴り響いた。

「そこまで。じゃあ、次は歴史の教科書だ。準備は良いか。よし、スタート」

 立花先生の合図のもと、今度は歴史の教科書をぺらぺらとめくった。日本の成り立ちから現代まで記述されている。ふーん、日本ってこんな歴史があるんだ。そして、3年前に行われた衆議院議員総選挙の記述を最後に現代の歴史は終わった。あれ? おかしい。妖獣のことが書かれてなかったぞ。もう一回、歴史の教科書を頭から読んだが妖獣の文字は見当たらなかった。たぶん、公民の教科書に書いてあるのかな?

 もやもやを抱えたまま、ストップウォッチが鳴り響くと、立花先生が口を開いた。

「じゃあ、次は公民だ。地理と歴史の教科書は使わないから、机にしまって良いぞ」

 地理と歴史の教科書を机にしまうと、私の机の上には公民の教科書と地理、歴史、公民の資料集が残った。

「準備は良いか? じゃあ、次は公民の教科書を読んでくれ」

 ストップウォッチを押すと、私は公民の教科書をめくった。隅から隅まで読んでいるけど妖獣のことが書かれていない。えっ? うそでしょ? 公民の教科書に書かれていないの? そんなわけあるか! 世間を騒がしているんだよ。なんで教科書に書かれていないの?

 最初は静かに読んでいたけど、徐々に教室でざわめきが起こりだした。たぶん、私が思っていることをみんな思っているかもしれない。立花先生は教室の様子をじっと眺めている。そして、ストップウォッチが鳴り響いた。

「公民の教科書は机に入れていいぞ。最初は静かに読んでいたけど、ちょっとざわついたのは多分、俺が言いたいことが分かったからだと思う。これが最後だ。資料集を開いてくれ。資料集3つあるけどまぁ10分で大丈夫だろう」

 立花先生がストップウォッチのボタンを押した。絶対あるはず。世間をあれだけ騒がしているのに、記述されていないのはおかしい! 私は真っ先に公民の資料集を開いた。端っこから端っこまで読んだけど、見当たらない。歴史の資料集を開いたけど、もちろん見当たらない。えっ? 地理の資料集にある? そんなことないだろ。地理の資料集をめくったが、妖獣のことは1ミクロンも記述されていなかった。

「……まじかよ」

 斎藤が思わずつぶやいた。そりゃ、そんな反応になるよ。なんで?なんで教科書に妖獣のことが書かれていないの?

 茫然としていると、立花先生は黒板に板書を始めた。一番上は年代。左には上から出版社、文科省、教育委員会、学校と記載されている。何を意味しているんだろう。

「……そろそろかな」

 立花先生がそうつぶやくと、ストップウォッチが鳴った。

「野口、すべて読んだうえでの感想を言ってくれ」

 立花先生に指名されたため、思っていることを口にした。

「妖獣のことが書かれていないんですけど」

「他、思ったことがある人はいるか?」

「由美っち、と同じ」

「俺も野口と同じ」

 口々に感想を述べると、立花先生が話し出した。

「まぁ、そうなるのも無理はないよな。でも、これは決して政府が隠蔽しているとかそんな理由じゃない。この教科書は妖獣が出現する前に作られた教科書だからだ」

「先生、それってどういうことですか?」

 優子が質問を投げると、立花先生が板書した図を使って説明した。

「文科省が定める指導要領に沿って出版社が教科書を作る。そして次の年、出版社が作った教科書が指導要領通りに作成されているか不備がないかあれこれチェックする。これが俗にいう教科書検定だ。検定を通過した教科書は翌年、それぞれの都道府県や市町村の教育委員会が選定し、年度が替わった年にみんなの手元に届くという流れだ。この教科書は3年前の教科書検定を通過しているから、出版社としては4年前に作ったものになる。もちろん、妖獣のことは書かれていない」

 あの時は妖獣? 何それの状態だ。

「毎年、教科書検定は行っているが、その年は小学校。もしくは高校1年だったりする。昔は2年ないし6年スパンで教科書検定があったけど、最近は4年サイクルで固定化している。中学校の教科書検定は来年行われるから、今出版社が教科書を作っていると思う。その教科書には100%妖獣のことが記述される。記述された教科書は来年検定、再来年採択されるから、現場で使うことになるのは3年後くらいかな。残念ながら、みんなが卒業した後だ」

 なるほどね。いやいや、タイムラグがありすぎる。

「俺は1年生の社会科をすべて担当している。同じことをほかのクラスでもやったけど、みんなと同じ反応だった。ラグがある状態で勉強しろというのは癪だと思うが、そこは我慢してくれ。ちなみにいうと、歴史の教科書にはまだ言わなければならないことがあるけど、時間が無くなってきたからまた今度だ」

 そう言うと、タイミングよくチャイムが鳴り響いた。優子が号令をかけ、立花先生が教室を出ると、ななみが話しかけてきた。

「立花先生ってもしかしたら、すごい人なんじゃない?」

「若い先生だからどうかなって思ったけど、意外とそうではないかもしれないね」

 どうやら、この一件で立花先生の評価は変わるかもしれない。クラスの雰囲気を読み解くとそんな感じがした。


 ※


「由美子、やつが動き出した」

 今日の授業が終わり、仮入部に行こうとしたと思った時だった、突然、鳳龍師が私の脳内に語りだした。口で語ることができないため、私は心の中で返答した。

 仮入部、1時間で終わるけど、その後じゃダメ?

「たぶん、それじゃ間に合わないと思う」

 どうしよう……。仮入部をサボるか迷っていると、ななみが話しかけてきた。

「由美子ちゃん、バドミントン部に行くよ」

 ななみとバドミントン部に行くって約束したんだよな。約束守らないといけないんだけど、仕方がない。今日は諦めよう。また明日もあるんだ。

「ごめん。実は、今日、用事があること忘れていたんだ」

「ええ! 由美子ちゃん、それ早く言ってよ」

「ついさっき思い出したんだ。本当にごめん、明日もあるでしょ。明日は行くよ」

「仕方ないな~。良いよ別に。用事があるならば早く帰らないと」

「ごめんね。じゃあ、また明日」

 学校を出た私は鳳龍師に出現する場所を聞くと、思いもよらない場所を告げられてしまった。

 マジか……。遠いな。インターバルはどれくらい残っている?

「持って1時間かな。財布持っている?」

 何にも持ってない。家に帰って準備したいけどいい?

「……それならば仕方がない。急いで準備しよう」

 私は全速力で家に帰ると、制服から私服に着替え、自宅を後にした。自転車に乗り、近くのデパートに併設されている駐輪場に自転車を止めると鍵を閉め、駅まで走った。

 鳳龍師、あとどれくらい?

「あと45分くらい」

 もう少しで電車が到着する。これに乗れば間に合う! そう思いSuicaをタッチして改札を通過しようとしたが、残高がなかったためはじかれてしまった。バカやろう! なんでチャージしてないんだよ! 急いでチャージしないと。2000円分チャージし、急いで改札を潜り抜けた。やばい! 発車ベルが鳴っている! 駆け込み乗車はだめだとか言うけど、そんなことは言っていられない! 滑り込みセーフで乗車した。

「なんだか……すごく忙しかったね」

 乗車すると鳳龍師が語りかけた。

 電車って定刻が過ぎると、発車するからね。鳳龍師は瞬間移動とかできないの?

「あんまり使いたくない。使ったら由美子の身体に負担がかかるから」

 負担がかかる。そんな言葉を言われちゃ仕方がない。

 ありがとう。私のために気を使ったんだね。

 私は空いていた座席に座ると目を閉じた。ちょっとでも体力を回復させておかないと。授業で疲れた体を癒すべく、寝ているといつの間にか深い眠りについてしまった。


 ※


 意識を取り戻した私の目の前には、見覚えのある景色が広がっていた。ここって、お母さんの実家があるところだよね。なんで、こんなところにいるんだろう。しかも、よくよく見るとなんだか時代が古臭い。まるで、何かに吸い寄せられるかのようにお母さんの実家に向かっていると、玄関に見知らぬ女性が立っていて私のほうを見ていた。昔の女学生が着る袴姿で背丈は私と同じくらいだ。

「よく来たね。さっ、中に入りなさい」

 見知らぬ女性と一緒に客間に入ると、先方が正座したため私も正座した。相手は何も言葉を発しない。ただ、私のことをじっと見ていた。何か声をかけたほうがいいのかな。そう思っていると、先方が話しかけてきた。

「あいつと過ごしていた日々はホントあっという間だった。私の都合も知らないで自分勝手に動く。私が反抗すると、これが正論だと言わんばかりにいろいろ言う。毎日が嫌になって、あいつと喧嘩した時もあった。でも、離れ離れになって初めてあいつの大切さが身に染みたよ。あの時に比べたら、だいぶましになったんじゃない? だから、あなたは信じてあげて」

「信じるって……。もしかして」

 そうつぶやくと、玄関の引き戸が開いた。

「戦う理由はまだ分からなくていい。私もそうだった。今は目の前のことに集中しなさい。いずれ戦う意味が見えてくると思う。今を生きるあなたに……すべてを託したから」

 袴を着た女性がそういうと光の粒子となり、私の目の前から姿を消した。そして、玄関からは鳳龍師の呼ぶ声がする。客間に座っていた私は立ち上がると、玄関に向かった。


 ※


「……由美子。もう少しで着くよ」

 鳳龍師の声で私は目を覚ました。タイミングよく目的の駅に到着したみたい。プラットホームの階段を下りて、改札を抜けると早く逃げろとか遅いという声が響いた。

「東口の方面だ」

 大勢の人が階段を駆け下りているため、上ることは出来ない。何とか、人の波をかき分けて外に出ると、妖獣が空を飛び交っていた。あいつか! 怪我している人がたくさんいる。これが戦場なの……。泣き叫ぶ声、壁には飛び散った血がこびり付いている。

「由美子どうしたの! しっかりして」

 足がすくんで動けない。どうしよう。

「……由美子」

 ここまで来たのに……。私、何にもできないの!? そう思っていると、夢の中で出会った女性の声が甦ってきた。

「あなたは信じてあげて」

 信じて……あげて……。私は昨日の出来事を思い出した。あそこで私が動かなかったらななみは助からなかった。それは、鳳龍師のことを信じたから助けることが出来たんだよな。鳳龍師の悲しそうな表情を見たからじゃない! 鳳龍師と一緒ならばななみを助けることが出来ると思ったからだ!

「由美子……。動ける?」

 鳳龍師が優しく語りかけてきた。

 怖いよ……。この場所が怖いよ。

「分かるよその気持ち。死ぬのは怖いよね。相手が何者かもわからない。何が目的かも分からない。でも、これだけははっきりわかる。相手を野放しにしていたらいずれ自分の身の回りで被害者が出てくる。それが妖獣なんだよ」

 飛び交う妖獣の姿を見て、私は苦虫を噛みしめた。

 死ぬのが怖い! ここで逃げだしたらもっと後悔するかもしれない。後悔だけはしたくない。ならば……。やることは一つ!

 私は大きく深呼吸した。大丈夫、足は動ける! 今ならばまだ間に合う! そう思っていると、鳳龍師が語りかけてきた。

「由美子、あのビルの中に行って!」

 併設している百貨店の中に入ると、私は女子トイレを探した。

「由美子、あそこならば大丈夫だね」

 女子トイレを見つけた私は、個室が一つ空いていることを確認すると、そこに飛び込み、内側からカギを閉めた。

 えっと……右手の人差し指にはめるんだよね。

「はめるだけでいい」

 私は、ポケットに入れた指輪を右手の人差し指にはめた。

 ちなみに、何か決めポーズとかしたほうがいい?

「どっちでもいいよ。どうする?」

 うーん、ちょっと考えよう。ここは狭いし。ポーズはまた今度。行こう!鳳龍師!

 私は握りこぶしを作り、指輪を真正面に見せると、刻印されている龍の目が光った。


 ※


 都内にあるターミナル駅の通りを網剪が飛び交っている。多くの人は安全な場所に避難したが、中には逃げ遅れた人もいる。逃げ遅れたOL目掛けて、網剪が突撃しようとした時だった。振りかざした左手のハサミを鳳龍師が抜刀した日本刀で防いだ。

「あの……」

「はやく!」

 促されたOLが急いで安全な場所に避難すると、鳳龍師が回し蹴りを網剪に食らわした。

「ケーケーケー」

 回し蹴りを食らい、離れた距離まで飛ばされた網剪は威嚇すると、低空飛行で鳳龍師に接近。一回は回避したが、誘導弾ミサイルみたいに鳳龍師を狙い続けている。

池南いけなん8号現着……本部、RM(Red shrine Maiden:赤い巫女)の出現を確認。繰り返すRMの出現を確認」

 現場に到着した警察官が無線でやり取りをしている。そして、たまたまグルメ番組の取材をしていたテレビクルーも現場にやってきた。

「なんだよあれ! おい! 早くカメラ回せ!」

 ディレクターが指示を出すと、同行していたクルーがカメラを回し、夕方のニュースは生中継という形ですべて差し替えになった。

 網剪はハサミを使って攻撃を仕掛けると、鳳龍師は日本刀を使って何とか攻撃を防いでいる。なかなか攻撃することが出来ないが必ず相手に隙ができる。その時まで、耐えるしかない。そう思いながら戦っていた鳳龍師にもさすがに、疲労の顔色が見えだしたころ網剪が再び低空飛行で鳳龍師に接近。

 すると、鳳龍師は中腰になって、網剪を切り裂こうとしたが、両手をクロスさせた状態で網剪が攻撃を防いだ。

「……堅い」

 思わず鳳龍師がつぶやいた。さっきの一撃で決めたかったが、網剪はびくともしない。低空飛行で何度も鳳龍師に接近。最初は回避していたが、一瞬の反応が遅れてしまい、右足を負傷してしまった。

「……どうすればいい」

 苦虫を嚙みしめた鳳龍師は地面に膝をついていると、どこからともなく声援が湧き出た。

「負けるな!」

「絶対勝て!」

 自然と沸き上がった声。その声を聴いた鳳龍師は懐かしそうな表情をしながらつぶやいた。

「……今も昔も変わらないところはあるんだな」

 鳳龍師がいったん目を閉じた。そして、網剪が高く浮上したと同時に目を見開くと、日本刀を天高くかざした。

「何をする気だ?」

 テレビクルーが思わず呟いた。精神を集中させた鳳龍師が高く飛び上がると、空中を切り裂いた。

 目に見えない空気の振動が網剪に押し寄せている。慌てた網剪は両手をクロスさせて防御を作ったが、空気の振動はその防御までも貫き、身体は真っ二つになった。

 その光景を確認した鳳龍師は抜刀した日本刀を鞘に納めると、網剪は光の粒子となって消滅した。

 妖獣を倒したことで、人々が喜びの声を上げている。その様子を確認すると、鳳龍師は一瞬微笑み、光の粒子となって姿を消した。さっきまで戦っていた鳳龍師を周囲にいた人々が探そうとしたが、痕跡を掴むことは出来なかった。

「何者なんだあいつは……」

 カメラを回していたクルーがそうつぶやくと、その様子を眺めていた由美子が一瞬、ほほ笑み、改札のほうへと向かった。


 ※


「久しぶりだな鳳龍師。相変わらずの戦いぶりだ」

 高層ビルの屋上から見下ろしながら、長身の男性が呟いた。長身痩躯ちょうしんそうくでさっぱりとした刈上げをしており、旧帝国陸軍の軍服を着用。軍服の上から黒いマントを被っており、ビル風によってマントがなびいていた。右手には黒い軍帽を持っており、人差し指でくるくる帽子を回している。

「やはり、我々の目の前に立ちはだかりますか。彼女は」

 同行していた白髪の男性が苦虫を噛みしめている。身長は150センチ後半くらいで、上下茶色のスーツを着用。紺のネクタイをしており、スーツの上から白衣を着ていた。眠そうな目つきをしているが、どうやら長身の男性と同じく状況を判断する能力に長けているみたい。

成瀬なるせは初めてだよな。鳳龍師と戦うのは」

「私は初めてですね。今から一戦を交えるのが楽しみで仕方がないですよ」

「まぁ、慌てるなよ。今の鳳龍師と戦っても意味はない。もっと強くなってもらわないと。歴代最強の鳳龍師を倒して、世間に絶望を与える。それが何よりもの快感だ」

「そうですね。私はじゃあ、鳳龍師を強化するために強い妖獣を育てますか」

 成瀬は楽しそうに回答すると、屋上の扉が開いた。

「私が先陣を切ってもよろしいでしょうか?」

 威勢のいい声がしたため、二人が振り返ると成瀬が話し出した。

海老象えびぞう。お前に出来るのか?」

 成瀬の疑問に海老象と呼ばれた男性が軽口をたたいた。

「私の力を使えば鳳龍師を倒すことは可能ですよ。しっかりと首を持ってきますよ」

「首を持ってくるか。まぁ、海老象にやられるレベルだったらその程度だってことかな。結果を出してこい。負けたらその瞬間、存在は消されてしまう。その覚悟はあるのか?」

「必ず結果を出します」

 海老象と呼ばれた男性が不敵な笑みを浮かべると、黒いもやとなって姿を消した。

「成瀬、これから忙しくなるぞ。生産状況はどうなっている?」

「金属台が3台、十字架が1台発注されました。鵺が倒されたことで、みんな目の色を変えていますよ」

「競争意識が働いている。素晴らしいことだ。お前にやってもらいたいことが二つある。一つ目は全国にある基地の巡回だ。各自の基地が稼働しているか確認し、状況に応じて介入すること。二つ目は常に鳳龍師の戦闘データは取得すること。そして、そのデータをもとに網剪を強化すること」

「承知いたしました」

 成瀬は膝をついて頭を下げると、長身の男性は左手から黒い靄を出現させた。

「これを受け取れ。成瀬」

 成瀬はポケットに入れていた瓶を取り出し、蓋を開けると、黒い靄を中に詰め込んだ。

「ありがとうございます。加藤かとう様」

 成瀬は黒い靄が入った瓶をポケットに入れると、話を切り出した。

「官邸から報告が入りました。NSS(国家安全保障局)が鳳龍師の調査を本格的に始めると」

「役人たちに鳳龍師が理解できるとは思えないけどな」

 その報告を聞くなり加藤と呼ばれた男性は鼻で笑った。

「しかし、この2年間、この国の警察や官僚機構はよく耐え抜いたよ。人の力は今の昔も侮れないな」

 そういうと、両手を広げて大きな声で一句読み上げた。

「春風や 闘志抱きて 丘に立つ」

高浜虚子たかはまきょしですね」

「前回、負けた理由ははっきりしている。この世界のことを私は知らないままだった。文化、政治、経済、すべてにおいて私は理解しないまま鳳龍師に戦いを挑み、負けてしまった。完全敗北だった」

「しかし、今の加藤様は違います!」

「それが、さっきの一句だ。この世界のことわりはすべて理解した。鳳龍師を倒した後、必ず実現するぞ。New World Order、新世界秩序を」

 右手に持っていた黒い軍帽を着帽すると、加藤と呼ばれた男性は黒い靄となって姿を消した。

「学界に属すること30年、誰も私の研究に耳を傾けることはなかった。そんな孤立した私に加藤様は救いの手を差し伸べてくれた。この恩は一生忘れることがありません。必ずや理想の世界を実現しましょう。妖獣だけの世界。それが我々の理想郷です」

 成瀬はそう言い残すと、赤い目に切り替わり、黒い靄となって姿を消した。

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