お姉ちゃん編


「じゃ、じゃあ、本日からお兄さんへの恩返し、始めちゃいます」


「ちょっと待っていて下さいね」

 //SE 移動する音 ドアを閉める音


「うんしょ、うんしょ……」


「じゃーん! どうどう? 驚きで声もでなかったりするんじゃないかな?」//明るく

 //SE ドアを開け移動する音


「何があったの……って、変身だよ。スライムの能力で変身したの!」


「どうどう? 見た目も変わって完全に人間みたいでしょ? 変身能力には自信があるんだよ?」


「え? しゃべり方も変わった? うん、そうだよ! 今はお姉ちゃんになりきっているから!」


「ほら、キミより……背も高くなっちゃった」

 //SE横に接近する音 囁くように


「ふふっ、動揺してる? よかった。お姉ちゃんは嫌じゃないってことだね」


「今日はお姉ちゃんでキミのお世話をしちゃうから……好きに甘えていいんだよ?」


「んー? 固まっちゃって、どうしたの?」


「お姉ちゃんなんだから、恥ずかしがらなくていいんだよ?」


「ほら、おいで?」


「やっぱり、いきなり甘えるのは照れちゃう?」


「むう……じゃあ、まずはキミと仲良くなるところからかな!」


「何かして欲しいことはある?」


「お疲れ気味みたいだし……マッサージでもする?」//囁く感じ

 //SE 手を動かす音


「お姉ちゃん頑張っちゃうよ?」


「え? 嬉しいけど学校のレポートを仕上げなきゃいけない?」


「そっかー、じゃあ、今日の家事はぜーんぶ、お姉ちゃんに任せておいて!」


「キミがレポートに集中出来るように万全のサポートをしちゃうよ!」


「ううん! 悪いなんて思わないで? 恩返しなんだから、遠慮なんていらないんだよ?」


 *******************


「ふんふふふ~ん」

 //SE鼻歌

 //SE 掃除や洗い物の音

 //SE 歩く音 ドアを開ける音


「ちょっと失礼するね!」


「やっぱり、険しい顔して固まってたー」


「何で分かるのかって?」


「そりゃ分かるよ。あれだけ唸っていたんだもん」


「一生懸命なのはいいけど、悩んでいる声が出てることにも気付かないなんて、オーバーワーク一歩手前だよ?」


「そういうときは、少しで良いから一息つこう?」


「というわけで、これ作ってきたんだ!」


「お姉ちゃん特製! 〝元気の出るホットミルク〟!」


「んふふ~、良い匂いでしょー」


「まだちょっと熱いから、少し冷ましてあげるね」


「ふー、ふー……これで良し。気をつけて飲んでね!」

 //SE息を吹きかける音


「どうしたの……?」

 //少し間を開ける


「んー? 私が横で見てるのが気になるの?」


「そんなに深い理由はないよ?」


「ただキミが美味しそうに飲んでいる姿が好きだなぁって思っただけ……」


「んふふ~、飲んでいる途中で固まっちゃってどうしたの?」


「からかってなんかいないよ。全部、本心。本心だよ?」


「ああ!? そんな一気にカップを傾けたら!?」


「ほら~、熱かったんでしょ。大丈夫?」//心配そうに


「こぼしては……いないみたいだね」


「舌やけどしてない? お姉ちゃんに見せてみて?」

 //SE 近づく音


「ほら、ンベって出して」


「問題ないって言われても……心配しないわけないでしょ?」


「ね、早く?」//急かすように、近づいて


「んー? 見た目は大丈夫そう?」


「でも、一応冷やしておこうか」


「ちょっと冷たいよ~」


「あ、こらびくってしないの」


「ふふふ、お姉ちゃんはスライムだから、身体の一部だけ元のスライム状態に戻すこともできるのです」


「ひんやりしてて気持ちいい?」


「はい、おしまい」


「冷やしすぎもよくないからね」


「んー? 名残惜しかったりする?」


「そっかそっかー、お姉ちゃんのスライムお手手、気持ちよかったんだね」


「そんな俯かなくても……お姉ちゃんは気にしないよ」


「恥ずかしがる必要はないよ。プニプニしてる――柔らかいものは癒やしになるって学んできたからね」


「だから、キミにいくら触れられても大丈夫だよ?」


「ほらほら! 手とか、二の腕とか、太ももとか……それとももっと凄いとことか触っちゃう?」

 //からかい気味に


「うーん、やっぱりどうぞって言っても、まだ自分から触るにはまだ無理だよね」


「じゃあ、こうしちゃおう。えい!」

 //SE 服の音と触れあう音


「そんなに慌てなくても……ちょっと背後から抱きついただけだよ?」


「お姉ちゃんの柔らかボディを堪能できる大チャンスなんだから、もっと喜んでいいんだよ」

 //SE触れあう音


「えへへー、本物の人間見たいでしょー」


「お姉ちゃんの擬態能力に驚くがいいー、なんちゃってね」


「んもう、そんな逃げようとしなくてもいいんじゃないかな?」


「んー。本気で嫌がっているならお姉ちゃんも止めるけど……本気の拒絶じゃないよね?」


「その証拠に……ほら、段々力も抜けてきてる。リラックスするのは悪い事じゃないよ」


「お姉ちゃんが見ててあげるから、大丈夫、大丈夫……ね?」


「うわっ、びっくりしたぁ」


「突然飛び起きてどうしたの?」


「今、何時かって? そんなに眠っていないよ。ほんの一五分くらいかな」


「特製のホットミルクとお姉ちゃんボディの効果は抜群だったみたいだね」


「からかったわけでも、邪魔しにきたわけでもないよ?」


「説明の前に……ちょっとゴメンね」

 //SE近づく音 近い呼吸音 顔に触れる音


「うんうん、顔つきも元に戻ったね。これなら大丈夫そう」


「ちょっと眠るだけでも休憩にはなるんだよ?」


「だから、根を詰めすぎるのはダメ」


「お姉ちゃんを助けてくれた時もだけど、キミはこうと決めたら全力で頑張っちゃうみたいだから……」


「心配になっちゃうんだよ?」


「ううん。謝る必要は全くないよ?」


「これは恩返しなんだよ? だから、お姉ちゃんが言って欲しい言葉は……」


「そう! 〝ありがとう〟って言ってもらえるだけでお姉ちゃんは幸せな気持ちで胸がいっぱい!」


「そしてキミはお姉ちゃんの抱きつきパワーで元気いっぱい! なんてね?」


「じゃあ、お姉ちゃんは家事に戻るね」


「何かあったらいつでも呼んでね。すぐに飛んでくるから、絶対だよ?」




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