第25話 再び森へ
「あんたどういうt、」
拙者の発言に強い感情を見せる命。しかしそんな命を石竹さんが止める。
「どうしてか聞いてもいいかな?」
石竹さんは、命の言葉を代弁する。
「ガーベラと話をしました。この子は何かに導かれるようにしてあの森を進んでいたそうです。どうしてあの森なのか?何かがあるのか?」
「それを確かめるためにもう1度ガーベラと行きます」
説明している間も命からの冷たい視線が、拙者を鋭く刺していた。
聞き終えた石竹さんの眼が、拙者からガーベラのほうへ移る。
「君はそれでいいのか?ガーベラ」
命の腕の中でガーベラは、首を縦に振った。
「そうか。なら何の問題も無いな」
ガーベラの答えに石竹さんは納得したようで、真剣な表情を崩した。
しかし落ち着いた表情を見せるそんな石竹さんに、命は強く反発し始める。
「正気ですか先生⁉」
「先生だってわかってるでしょ!あの森がどれだけ危険な場所か」
「ああ、理解している」
声を荒げる命に対して冷静に返す石竹さん。
命の異常な反応。拙者たちがいたあの森は、そんなに危険な場所なのか?
「あの森に何があるんですか?」
「あ~まぁ~大げさに言ってるが、まだ調査が終わってない未開拓地ってだけだ」
「なんだそうなんですね」
彼女が怒るくらいだから何があるのかと思えばそんなことかっと拙者はホッと胸を撫でおろした。しかしその直後、
「森に入った人間の3割は帰ってきてないってだけだ」
いっきに血の気が引くようなヤバイ言葉が聞こえて来た。とは言え、ガーベラのためにも行かないなんて選択しはもう拙者の中には無い。
「それでも拙者たちは行きます」
拙者と石竹さん。お互いが眼を合わせる。
そんな2人に対して、命は何も言えなくなったのか?ただ黙っていた。
「あ、あれ使ってけ」
「あれ?」
準備を終え、屋敷の前で待っていると石竹さんが、あるものを押してきた。
「これは?」
「家で使ってる旧式のバイクだ」
白いフレームの所々に錆があるそのバイク。ハンドル部分には、小さな液晶が付いた機械が装備されていた。
石竹さんが機械の操作を始める。
「えーと、これをこうして」
「運転出来ませんよ拙者」
バイクを目にして拙者が、そう伝える。
「大丈夫だ。自動操縦にしてある。…うし、OK」
そう返しつつ、石竹さんは操作を終える。
拙者は、石竹さんに促されるままバイクへ跨る。そして拙者の後ろにガーベラを乗せ、ベルトを閉める。
「十数分くらいで森に着くだろう。着いたら自動的にベルトも外れるようになってるから。あとハンドルは握っとけよ」
「はい!ありがとうございます」
「あとこれな」
石竹さんがポケットから取り出した小さなカプセルを受け取る。
「これは?」
「試作品の回復薬だ」
なんかすっごいRPGとかで聞いたことあるようなものが出て来た。
「え、回復薬?」
「試しに使ってみてくれ」
そう言いながら石竹さんが拙者にぐっとサインしてくる。
カプセルに視線を向けつつそれに対する少しの不安が心の中に生まれた。
「軽いノリはこれくらいで、最後に1つこれだけ伝えておく」
石竹さんの眼から真剣さが現れた。
彼の眼を見て、拙者はその言葉に耳を傾ける。
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