第24話 矢印は何処へ

 「気をつけろよ」


 前を歩くガーベラに注意するよう呼びかける。

 元気になったこの子の姿を見せるために2階の部屋を出た拙者とガーベラは、石竹さんたちのいる1階へ向かっていた。

 2階と1階を繋ぐ階段を愉快に降りていくガーベラ。

 楽しいのは良いけど怪我しないか心配で、心の中は変なドキドキがいっぱいだった。

 1階に着くとガーベラは、迷わず石竹さんたちのいる談話室のほうへ進んで行く。

 目が見えない分、嗅覚が鋭いのがガーベラの動きから分かる。実際アイツらと戦ってた時も攻撃の正確性は高かった。

 談話室前に辿り着く。先に扉の前に立ったガーベラが、扉を開け中へと入って行く。

 談話室には、机を間に挟み対面で座る石竹さんと彼女がいた。


 「あ、お姉ちゃん!」


 扉側に背を向けていた彼女。その後ろ姿に気づいたガーベラが彼女へ駆け寄る。

 ガーベラの声で気づいた彼女が振り返る。

 彼女の胸に向かって、勢いよくガーベラがダイブする。


 「おっと、君もう大丈夫なの?」


 彼女は、抱きついてくる少女を受け止め今の体調を聞く。


 「うん!ガーベラもう大丈夫。元気、元気、」


 「ガーベラ?」


 ガーベラの反応に彼女が首を傾げる。


 「ガーベラは、この子の名前です」


 部屋の扉を閉めた拙者は、テーブルのほうへ歩きつつ石竹さんにも聞こえるように彼女へ伝える。


 「へー、ガーベラか。いい名前だね」

 「にしても良かったー。元気になってお姉さんも嬉しいよ!」


 ガーベラが元気なことを喜びこの子の頭を撫でる。


 「ねぇねぇ、お姉さんは何って言うの?」


 「お姉さんは、めい姫己ひめおめい


 彼女がガーベラへ向け名乗る。その声が拙者の耳にも届けられた。


 「命お姉さんだ!」


 「そうだよ。はー、もうダメ。可愛すぎる!」


 命は、ガーベラをより抱きしめる。ガーベラも嬉しいそうにギュッとくっついているのが、その手から分かった。


 「元気になって良かったよ。それで目録くん、これからどうするんだい?」

 

 元気なガーベラの姿をその眼で確認する石竹さん。そしてその眼が次に拙者へ向けられる。


 「灰色の森に戻ろうと思います」


 拙者は、静かな口で答えを提示した。あの森に戻る理由は、ガーベラにあった。

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