第23話 もしかして

 ガーベラ

 その名前を気に入ったようで、少女は布団の上で嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねている。


 「ガーベラ」


 拙者の呼び声にガーベラは、跳ねるのをやめると呼ばれたことが嬉しいかったのか?にっこり笑顔を見せて、小さい駆け寄って来る。


 「なぁ、ガーベラ。君は…何者なの?」


 笑顔を見せているガーベラに対して、反対に拙者は真剣な眼差しを少女に送った。

 拙者の真剣な眼差しを受けたからか?ガーベラの顔からゆっくりと笑顔が落ちていく。


 「…分からない」


 うつむくガーベラ。

 ガーベラは首を左右に振り、そう口にした。


 「そっか」

 「じゃあ、何でガーベラは森にいたの?」


 うつむくガーベラに拙者は質問を続けた。

 幼いこの子にあれやこれやと聞くのは、正直なところ嫌だ。でもこれからどうして行くのか分からない以上、この子に、ガーベラに聞くしか無かった。

 しっかりしなきゃいけない自分さえ何も分からないから。


 「声が聞こえたんだ」


 予想していなかった答えが、ガーベラの口から聞こえて来た。


 「声って⁉︎」


 その聞こえてきた声ってのが何なのか知りたく。拙者は飛びつくように聞き返した。

 拙者の反応に少し驚いたガーベラがドキッとなっていた。


 「…分からない」


 ガーベラは、また首分からない左右に振りそう口にする。


 「でもその声がこっちだよ。あっちだよ。って言ってくれて、そうしたらいつの間か森にいたの」


 声。

 拙者と似ているようで全然違うもの。拙者の場合は、忘れていた事が浮き上がってくる感覚。対してガーベラは、自身以外の誰かが介入している状態。


 「ガーベラ。今、その声は聞こえる?」


 「聞こえない」


 「そっか」


 静かに答えるガーベラ。

 その口から出た言葉からは、黒色の靄が見えた。


 悲しみ。


 ガーベラの感情は今、悲しい状態なのが見えたことで分かった。


 「ガーベラ。確認したいこと。あと1個だけいい?」


 拙者からの追加の質問にガーベラは、プクっと少し頬を膨らませる。

 膨らませつつも、ガーベラは無言で頷いてくれた。

 ガーベラの目が拙者を捉えている。反対に拙者の眼もガーベラを見つめている。


 「ありがとう」


 拙者は、ガーベラにお礼の言葉を口にする。

 そして改めてガーベラに質問を投げる。


 「ガーベラ。君は目が見えないんだよね?」


 拙者の質問にガーベラは、首を縦にこくりとただ頷く。

 拙者の中にあったもしかしてが、事実に変わった。

 森の中で初めて会った時も拙者の匂いを嗅いでいた。クッキーをあげた時も見た目より匂いだった。あの時から既に拙者の中で、そうなのでは無いか?というのがあった。

 

 

 


 


 

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