第19話 見えなくて
階段を駆け上がり廊下を足早に進んで行くのが、部屋の扉越しに耳に入ってくる。
部屋の中の様子を理解しているからか?足音の主(おそらく彼女)は、そっと扉を開ける。
「ただいま~、ごめん。任せちゃって…」
扉を開け、部屋に顔を出す彼女。彼女は、部屋に顔を出す時点で拙者が座っているであろうほうに視線を向けていた。
拙者と横になっている少女を目で確認すると同時に彼女の眼には、部屋を出る時には居なかった石竹さんと目が合う。
「お帰りなさい、
「…先せ、」
彼女は石竹さんに何かを言いかけた様だが、何かに気づき口を閉じる。すると部屋の入口から部屋の窓際で座る石竹さんの元まで歩いて行く。
その時拙者が見た彼女の歩き方からは、怒りのようなものが見えた気がする。
「どうしましたか?め、…⁉」
石竹さんは自身に迫ってくる彼女へ声をかけようとするが、彼女は石竹さんの言葉を遮るように問答無用で耳を引っ張り強制的に立ち上がらせ、部屋の外へと連れて行った。
「痛い!痛いですよ命」
耳を引っ張られ、小さく悲鳴を上げる石竹さん。
部屋を出る際、拙者の眼に映った彼女の顔は少しばかりムスっとしていた。
彼女によって扉が閉められ、部屋の中は再び拙者と少女の2人だけとなった。
拙者が扉のほうへ視線を向けていると袖から引っ張られる感覚が伝わって来た。
石竹さんが部屋に入ってくる直前からずっと袖を握っていた少女が、拙者のことを呼ぶ。
「ん、どうした?」
拙者は、少女の呼びかけに返事をしつつ、横になっているその子のほうへ視線を戻す。
視線を戻すと少女は布団から起き上がっていた。
少女は、部屋の色々な場所に視線を送り鼻を鳴らしている。
その光景を目に映した拙者は、ある1つのことを確かめることにした。
「拙者はこっちだぞ」
袖を引っ張ていた少女の手を掴み、声を掛ける。
少女は、拙者の声を耳にしてからほんの1・2秒後拙者のことを見つけたのか?布団から立ち上がり、掴まれた手のほうへと一歩ずつ歩き始めた。
(やっぱり、そうか)
少女の動きに拙者の頭の中にあった少女への疑惑が確信へと変わった。
ゆっくりと歩く少女を拙者は優しく抱きとめる。
拙者と少女の顔が急激に近くなる。
まだ眠いのか?拙者の胸の中で少女は、自身の手で目元をこすりだす。
拙者は抱きかかえる少女に「これ分かるか」と一本の指を見せ左右に動かすも少女の眼は、動かなかった。
拙者は、確認するように少女にあることを聞いた。
「お前、目が見えないのか?」
拙者の胸の中で拙者のその言葉に少女は、ゆっくりと頷いた。
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