第13話 産物
灰色の空が覆う森の中、紫色の霧は晴れていた。
口元を抑えてた手を離し、隊長のリーンが声を上げる。
「みんな無事か!無事なら返事をしてくれ!」
「1班ここに」
「2班います!」
「3班と5班ここにいます!」
リーンの声に木々の影から顔を出す隊員たち。
1人の隊員がリーンの元へ近づく。
「大丈夫ですか?リーン隊長」
「ああ、私は何ともない少しかすり傷があるくらいだ。お前は大丈夫か?」
「はい。なんともありません。あの霧はただの目くらましだったようで」
男たちを襲った紫色の霧は一見毒のあるように思われたが、実際は匂いすらしない色の付いただけのただの霧だった。
「とりあえず皆と合流しよう」
「はい」
リーンと隊員の男が他の隊員との合流を始める。やがて一本の木の根元に数名の男たちが集まる。
男たちの視界には、1人の男が木に背中を預けている。その男は片目が潰れており、右腕は肘から下が欠損、両足も膝からした欠損という状態だ。
「…た…ちょう…。僕は…」
「喋らなくていい」
男の前で膝をつくリーンの焦るような声がそれを止める。が男は口を動かし続ける。
「僕は…、……ロ…に、あ…の…」
他の隊員も止めようとするが、それでも男は続ける。
「…い……うを……、……たちの………ー…」
隊員たちの抵抗を無視し、喋り続けるもやがて男の眼から灯が消えた。消えそうな声を出しながら目の前にいたリーンへ伸ばされていた手が、枯葉の積もる地面を揺らす。
男にリーンの手が伸びる。
リーンの伸ばした手が男の瞼を閉じた。男の涙を拭う。
自身の額に手を当て、リーンが静かに口にする。
「今、何人生きてる?」
暗い顔をした隊員たちがお互いに視線を送りあう。そんな中先ほどリーンと一緒に行動していた男が報告する。
「ご報告します。幹部隊員3名の内1人が死亡。各班の状況ですが、…1班が4名中2名死亡。2班4名中3名死亡。3班4名中2名死亡。5班4名中1名死亡。そして4班は…」
男は吐きそうになる苦しみを押し殺し、口の中で生まれた唾液を飲み込み止まった報告を続ける。
「4班は4名中4名全員が死亡。また道中我々が遭遇した先遣隊12名。総勢25名の隊員が亡くなりました」
「…分かった」
静かに立ち上がり隊員たちを振り向く。
「作戦は失敗だ。一度本部に戻る各員撤退準備を」
「「はっ‼」」
リーンの指示に隊員たちが敬礼し、すぐさま用意に入る。
額に当てていた手を下ろす。
「ノレロ。本部への連絡を頼む。それとアイツにも」
「了解」
リーンは、先の報告をしてくれたノレロ幹部隊員に指示を出す。
指示を聞いてすぐノレロは、制服のポケットからスマホを取り出し本部の番号を入力し耳に当てる。
本部へのコールは、すぐに繋がれ救援要請が承認された。
ノレロは本部との通信を終えると、スマホに再度番号を入力し耳に当てる。
プルルルル。プルルルル。プルル、ガチャ!
2~3回のコール音が鳴ったのち、通話が繋げられた。
「もしもしノレロです。」
通話相手にノレロが名乗る。
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