第11話 ピッタリと重なった紙
拙者の呼び声に応え、突如として現れたそれ。それの複数の首の一つが、少女を抱きかかえる拙者を守るように巻きつく。
それの眼は、ライフルを抱える男たちを捉えている。
「なんだよ…。これ」
「無理だ。こんな…化け物」
それの眼から動けないでいる男たちの声が震える。
「まさか⁉ヤマタノオロチ」
1人の男の口からそれの名が出る。
「リーン隊長!ここは一旦下がりましょう。あんな化け物の相手、今の我々には無理です!」
その男がリーンに訴える。
リーンを含め男たちの戸惑う姿が、拙者の眼に映っている。
「オロチ!頼む」
「キシャァァァーーーー!」
拙者の声にオロチは、一つの首を除いたそれぞれが鳴く。直後、鳴いたオロチの口から紫色の霧が吐かれる。
紫色の霧が、戸惑う男たちを覆う。
オロチの存在が大きく、男たちの様子から逃げるなら今しかない!と感じた拙者は、地面に刺したままだった刀を手する。
落ち着きを取り戻そうと一度深呼吸をし、
「ふぅー…。
拙者の周囲が、一瞬真っ暗になる。そしてすぐにさっきほどの灰色の森に戻った。ただ…オロチの吐いた紫色の霧とそれに覆われた男たちの姿は無くなっていた。
「…成功で、いいのか?」
緊張を解こうとする言葉が口から落ちる。
周囲を確認し、先ほどの男たちが1人もいないことを眼でしっかりと理解する。
「大丈夫か。ありがとうオロチ」
森から空へはみ出るほどの大きさのオロチが、白い光の粒子になって四散する。オロチを
拙者は、抱きかかえている少女に視線を送った。少女の身体の見える範囲ほとんどが、電流によるやけど跡や銃弾によるかすり傷で一杯だった。
(ここまでするかよ普通。いや普通じゃないからか…)
「とにかくまずはこの子を治さないと。となると町か医者か」
少女の傷を治すため拙者は思考を巡らせる。
「とりあえず森を抜けねぇと話になんねぇか」
左右に首を振り、どちらに足を向けるか判断する。…わかんねぇ?
ふと拙者の空いてる手が刀の柄に当たった。
それは、森を抜けるための道を指す言だった。
「こっちか」
拙者は、少女を抱えながら頭の中で言が指すほうへ駆け出した。
少女に重力が掛からないよ細心の注意を払いながら。
森を駆けだす際、一つ疑問に思ったことがあった。疑問は少女についてじゃない。
拙者の名、オロチ、世乖同重、道
拙者は…
(なんで知ってたんだっけ?)
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