第9話 放たれた弾丸

 灰色まみれな森の中で、拙者と少女を数人の同じ服装をした男たちが取り囲む。

 拙者たちから距離を取った男は、自身が隊長と呼ぶ男に声を上げていた。彼の声には、不満の色が見えた。


 「だから言ったんですよ。こんな作戦無意味だて!」


 「…私の判断ミスだ。すまない。だが話はあとだ。総員構え!」


 隊長と呼ばれる男が手を上に挙げる。その男の構えに、周りを囲む男たちに指示が行く。その指示のもと男たちの手にしているライフルの銃口が、一斉に拙者たちに向いた。

 いや、違う。銃口と拙者の目が合うだけで、銃口は拙者には向いていなかった。彼らが向ける銃口は全て、少女を捉えていた。


 (マジかよ⁉こいつら子供相手に)

 拙者の視線が、少女のほうに送られる。


 隊長と呼ばれる男の手が、ゆっくりと降りる。


 「放てー‼」


 耳に響いてくるその怒号と同時にあらゆる方向から男たちが構えるライフルの弾丸が、少女に向かって一直線に伸びる。

 少女に弾丸が衝突する瞬間、弾丸は空を切り地面や木々に着弾した。一瞬にして少女が、その場から消えた。

 ドスッ!

 少女が消えた直後、鈍い音が耳に届けられた。音の方向に視線を移すと拙者たちを囲んでいた男の1人が、口から赤黒い液体を垂れ流していた。男の腹を見るとそこには大きな爪を持った手が、出ていた。

 男の背後から薄らと見える小さな影。少女だった。

 少女は消える様に見えるほどの高速移動で、男の背後に回り込み腹を貫いた。

 貫かれた男の近くで構えていた数名の男たちが恐怖の色を映した声を上げ、少女にライフルを向け引き金を引いた。が少女は空いてるもう一本の腕で、彼らを薙ぎ払った。後方に吹っ飛んでいった彼らは、木の枝に貫かれ。中途半端なサイズの岩に激突。薙ぎ払われた時の勢いで首や四肢が捥げる。などそれぞれ見るも無残な姿に変わっていった。

 それからも少女によって、男たちは次々と大量の赤黒い液体を散らしていった。

 このまま少女が全て倒してしまうのでは、とそう思った矢先だった。

 カチッ、

 少女がある地点に足を置いた時、地中から勢いよく走り抜けたいった青白い電流が少女の足を止めった。

 身体中に流れる電流が少女を苦しめる。悲鳴という音を上回るほどの声が少女の口から溢れ出る。


 「やっと、…止まってくれましたね。隊長今です!」


 少女から離れたところで、制服で口元を隠した男が言い放った。

 その男の行動を理解していた隊長が、一定の距離を保ち少女の前に立つ。

 拙者の目の前で、無抵抗な少女にライフルが向く。

 ライフルの引き金に指が掛かる。そして…

 灰色の森で放たれた弾丸の音が、その空間を揺らした。



 

 

 



 


 

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