第6話 少女の足跡

 ザザッ!ザザッ!ザザッ!

 枯葉が地面にらばっている。その場を急ぎ足でけていく彼らの足音が、強くひびいていた。

 「いいか貴様きさまら!草の根を分けてもヤツを探し出せ!出来なければ俺を含め全員 死刑しけいだからな!」

 「「はっ、!」」

 灰色の景色けしきで染まったこの自然の中で、けわしい表情ひょうじょうを見せる男が1人。彼の名はリーン・クローク。

 この自然に訪れたの隊長だ。

 リーンの手には、簡単に生物の生命を奪える得物えものがあり、彼の身に着けている制服の胸元には、エンブレムのようなものがわれていた。

 リーンの声に続くように周りの男たちも声を上げる。声を上げた彼らもリーンと同じような制服に身を包み、同じように得物を手にしていた。

 黒い制服に身をつつむ彼らは、ある者を探しながらこの自然の中を捜索していた。彼らはお互いに一定の距離を保ちながら、5分捜索しては次のエリアへと進んでいくを繰り返していき今この場を捜索そうさくしている。

 捜索をする中1人の隊員がつぶやく。

 (ったく。なんで俺らまで…)

 彼の不満の声に近くにいた他の隊員が声をかける。

 (仕方ないですよ。つべこべ言わずに「あれ」探しましょ)

 リーンの耳に届かない声量で言葉を交わしながら、「あれ」と呼ぶものを見つけるためあたりを調べる。

 「リーン隊長⁉」

 「どうした!何か見つけたか?」

 捜索する1人の隊員が何かを発見したのか?全員に聞こえる声量でリーンを呼ぶ。その声に応答して、少し離れた所を捜索していたリーンがその隊員の元へと駆け寄る。

 「これは……⁉」

 リーンの目の前に広がっていた光景こうけい。リーンは、これまで幾つもの修羅場を突き進んできた人間だ。そう簡単な事で動じるような男では無い。が今回のこの光景は、そんな彼にすら強い恐怖を与えた。

 リーンが駆け寄った場所に続々と隊員たちが集まってくる。そして彼らもリーンのと同じようにまたは、それ以上に目の前に広がっていた光景に恐怖した。

 隊員たちの中には、その光景を見たくないと目をらす者がいた。その光景を見て、おもわず体内の物を吐き出してしまう者もいた。その光景を見せた者に対して、強い怒りやにくしみが生まれた者さえいた。

 リーンや隊員たちがそんな状態になってしまうほど彼らの目の前に広がっていた光景は、赤黒い血に染まった人間たちの亡骸なきがらだった。そしてその亡骸は、今この光景を目にしている彼らと似たような制服を身に着けていた。

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