第2話 見えない位置にあるもの

 左手薬指に結ばれていた赤い糸を頼りに道なき道を進んだ結果、拙者の目の前に1人の少女が映る。

 赤黒い血に濡れていた少女の髪の毛先やあご・指先からは、ポタッポタッと濃い色をしたしずくが落ちている。

 そんな光景こうけいを目の前にして拙者は、……

 (うん。帰ろう)

 (あれだよ。あれ…。とにかく拙者は何も見なかったと)

 目に見える光景から現実逃避げんじつとうひするようにその場を後にしようと拙者は、一旦来た道を振り返り足を一歩いっぽ踏み出した。

 バキ‼

 拙者の足元からこの状況の中 一番いちばんって欲しくない音が、耳に入り込んできた。音の鳴ったほうに視線しせんを移すとまず初めに茶色のブーツが、目に映った。そのブーツは拙者が、いまに着けているものだ。それはいい。問題は、そのブーツの下にあるものだ。

 ブーツの下で、灰色の木の枝がそこにあった。

 枝はブーツの下で、V字を表すよう折れ、地面から少し離れている形で拙者の目に映っていた。

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