ゴリゴリマッチョ系魔法女学院、学園生活編

聖女は乙女のたしなみです

 スヴェルテ魔法神学校。


 寄宿制の女学院。ドルムント王国で最も伝統ある学校のひとつで、数多くの高位者を輩出している。


 11歳で入学、16歳で卒業となる。


 お母様もおばあちゃんもひいおばあちゃんもこの学校出身とのこと。

 

 文武両道・質実剛健・鶏口牛後がモットー。


 校規は厳しく、在学中は学校行事以外では帰郷することはおろか堅牢な壁で囲まれているというこの学校の敷地から一歩たりとも外に出られない。


 「常に心に薙刀を」という校訓で、入学時にひとり一つ己の薙刀を選び、自分で名前を付けて生涯可愛がるというまことしやかな噂も……


 入学前にいろいろ情報収集したが、知れば知るほどヤバい学校という気しかしない。


 お母様に聞いても「とにかくすごかった……」というだけで、詳細を語らない。



 入学前にできることはやっておこうの精神で、セバスチャンに魔力のコントロールの仕方や武技を習う。


 セバスチャンは以前「私が責任を持ってお嬢様に魔力の使い方を教えましょう」と豪語していた自信満々な態度に反して、「体の全身からぐわーっと湧き上がる魔力の流れをガチッと掴むのです!それを一点に集中させて細心の注意を払いつつばーっと出すことで魔法が発動します」みたいな、典型的な教えるの無能なやつだった。


 それでも、今までのオルタクリムの独学だった魔力の使い方よりも数段うまくなったのは感じていた。私も体系的に教わるの無能なやつだった。


 武技は全く知らなかったので楽しかった。セバスチャンは魔力と武技を組み合わせるのがうまかった。

 相変わらず「剣にぶわーっと魔力を込めるのです」的な指導だったけど。



 マクゴナガルからは家事全般を教わった。


 寮生活ではじめての一人暮らし。掃除も洗濯もしたことなかった私にマクゴナガルが丁寧にいろいろなことを教えてくれた。マクゴナガルの教え方は非常にわかりやすかった。が、私の家事のスキルは壊滅的に低かった。


 マクゴナガル講座最終日には、マクゴナガルから魔道具をプレゼントしてもらった。友達が急に部屋を訪問してきたときにまるで整理整頓されている部屋かのようにゴミ部屋状態を隠蔽する魔法が込められているそうだ。


 今まで一生懸命教えてくれたことを無に帰すような魔導具ではあるが、これはちょっと家事ができるようになるよりも、ずっと便利に使えそうだ。



 ルーネからは女の子同士のお付き合いの極意を教えてもらった。


 まだあまり親しくない子が何故か私にだけ秘密を打ち明けようとした時のさりげない逃げ方や、女友達から愛を告白された時の対処法、好きになった先生に誰にもばれずにラブレターを渡す方法などなど。


 ルーネは「必勝」の鉢巻をして非常に熱く講義してくれたが、私には難しすぎてほとんど習得することができなかった。ごめん。


 

 ベンも、サミも、メイドさん、料理人さん、使用人さん、みんないろいろ教えてくれた。

 どうやらこのままでは私が学校で絶対になにか酷いことをやらかしてしまうだろうと心配してくれているようだ。ありがたい。

 私も絶対なにかやらかしそうな気しかしない。


 

 父上、母上、兄上とも親密に過ごした。


 転生してクリムヒルトとなった私だったが、この濃密な数ヶ月で本当の家族のように思うようになっていた。


 入学すると5年後の卒業まで外出することは禁止されている。当然家に帰ることもできない。


 この家族に5年も会えないと思うと、本当に寂しくなった。

 


 こうして密度の濃い月日が過ぎた。私はこの世界に慣れ、この世界のみんなを好きになり、ようやくこの世界の一員になれた。今では産まれたときからクリムだった気さえしている。


 

 出発の日が来た。


 最後の1週間は毎日が送別会のような気分。こんなに笑って、こんなに喜んで、こんなに泣いた1週間は今後もないだろう。


 最後の朝はみんな泣きはらした顔をしていた。

 屋敷のみんな総出で馬車を見送ってくれた。


 昨日まで十分泣いた。今日は笑って出発しよう。


 「では、行ってくるね———」


 馬車の窓から身を乗り出して手を振る私。


 屋敷が見えなくなるまでずっと手を振った。

 屋敷のみんなも馬車が見えなくなるまで手を振ってくれていた。



 「さて、仕事に戻りますよ。みんな」


 きっとマクゴナガルは今頃そう声を掛けて、両手を上に背伸びをしながら屋敷に戻っていることだろう。


 一番真っ赤な目をしながら。


 

   ◇◆◇◆◇


 

 いよいよ入学の日。


 スヴェルテ魔法神学校の広大な敷地の、これまた豪奢な校門の前に、不安とも心配ともつかぬ面持ちの新入生たちが開門を今か今かと待っていた。


 敷地を囲む大壁は高く、50m近くある。


 校門もそれ相応の大きさがあり、とても人力で開けられるようなものではない。


 この学校の校門は年に2回しか開かぬという。

 1回が1年生の入学の日、そしてもう1回が5年生の卒業の日。

 つまり私たちは今日この校門を通って中に入ると、5年後校門から出るまで、来る日も来る日もずっとこの敷地の中だけで過ごすことになるのだ。


 いくら広大な敷地だったとしても、門をくぐる心理的重圧感が半端ない。

 スライム時代、洞窟でひとりで生きてても平気だったのに不思議なものだ。



 重々しく門が開いた。少し間をおいてから意を決して門をくぐった。

 新入生の中で私が一番最初だった。


 

 門の内側は呆れるくらい広かった。


 大壁は視界の左右に永遠に伸びていた。敷地の反対側の境界を見ることができないくらい。少なくとも目視できている地平線までは全て敷地の中のようだ。


 まあ、この広さなら5年間駆けずり回っても未知の場所まだまだ残っていて飽きそうにはないな。少し安心。


 でも校舎も人工物らしきものもここからは全く見えない。まさか地平線の先まで歩いて会場入りするのだろうか。


 新入生は百人ほど。みんな集まったことを確認した先生らしき人物がかっこよく魔法を一振り。転移魔法でみんなを校舎のある場所まで跳ばした。

 なんて便利な魔法だ! 卒業までにこれ覚えよう!


 

 講堂に入り、教頭先生よりスヴェルテ魔法神学校の説明がはじまった。


 クラスは5つ。それぞれ特徴が違う。

 

 ① 聖騎士:

 聖なる加護を受けて騎士となるコース。

 就職先はどこも難関だが高給が保証される。

 希少な神聖魔法をマスターできる。

 

 ② 精霊師:

 精霊術を習得できるコース。

 魔力に頼らず精霊の強力な加護を得られる強兵策として国が今最も力を入れている分野。

 

 ③ 魔剣士:

 様々な魔法を併用した剣士となるコース。

 有名私立大学ランク&体育会系であり、もっとも就職に有利。

 それなりに潰しが効く。

 

 ④ 魔導師:

 攻撃魔法と支援魔法を習得できるコース。

 魔剣士よりも求人ランクは落ちるが、支援魔法は求人倍率高く生活は安定。

 

 ⑤ 聖女:

 奇跡を起こすと民衆が信じる力を信じる、まさに聖なる女性のための聖なるコース。

 昔は花形だった。昔は。



 組分けは挙手制ではなく、魔法により個人個人の適正を多角的、総合的に判断し、賛成の声にも反対の声にもしっかりと耳を傾け、学校の評判や寄付金、少子化問題なども勘案しながら、毅然とした態度で適切な対応をしていきたいとのこと。

 つまり学校が決めるようだ。

 

   *


 一番人気は聖騎士。


 神聖魔法を習得できる数少ない学校としてこの学校に入学するものが多い。聖騎士の、スタイリッシュな白金鎧兜はいつの世でも皆の憧れの的だ。


   *


 次点が精霊師。


 やっぱり国策とマッチしている職種は最近の安定志向の若者には受けるよね——。しかも魔力が少なくてもOKだし。直接戦わないし。


   *


 そしてこの学校一番のボリュームゾーンが魔剣士。


 いつの世にも雑草のように生き抜く力を与えてくれる。特にアメフトと言われる球技を選択していると大手の営業職に引っ張りだことのこと。


 ここの卒業生が目立つためムキムキ剣士養成学校と揶揄されている。

 文字通りどんな人でも卒業までにはもれなくムキムキになれるらしい。


   *


 少し人気落ちて魔導師。


 本格的な攻撃魔法を習得できる生徒はまれらしく、多くは中途半端に終わるため就職が若干厳しい。


 しかし、多くの生徒が派手な攻撃魔法系を選んで失敗するのに比べ、地味めな支援魔法系は実は求人多く就職ハズレなしと言われている。


 後方勤務で危険少なく、就労時間もきっちり決まっている支援魔法職は、ライフバランスに敏感な若者に密かに人気。


   *


 そして、断トツで人気がないのが聖女。


 昔花形と言っても、魔力持っている女性に「聖女」しか就職口なかった時代の話しであり、今の時代では聖女という存在すら世間からは忘れられている。生きた化石のような職業だ。


 特にこれといった権能もない。

 なんか奇跡が起こせることもあるかもしれない、と信じてくれる人の善意にすがることで成立している職種らしい。


 学校OGのお偉いさんに往年の「聖女」が多いため、周りの反対を押し切って未だに残されている、時代遅れのコースである。


 就職先も少ない。あったとしてもほぼ縁故のコネ。結婚前の家事手伝いに似ているが、男性からみて近寄りがたいらしく、全員ほぼ行き遅れる。


 こんなコース入りたいものおらんやん。絶対。


   *


 生死分ける、こんな組分けを恣意的に学校がやっててよく荒れないな。


 「学校が決めているのではないことにするために、この組分けゴブレットを使用しまーす!」


 なんか、ちょろちょろ本音が見え隠れする説明。


 組分けゴブレットは(建前では)中立に厳正なるジャッジをするための魔道具で、組分けゴブレットを持つとその各人の特性に合わせたクラスを選び、ゴブレットが告げるという。


 その割に、次の生徒の組分けする前に何やら先生とゴブレットとのシンキングタイムがあるようだが、謎だ。


 

 私の組分けがはじまる。


 『聖騎士、聖騎士、聖騎士でお願いします!』

 心の中で一心不乱に祈る。


 「お前は『聖女』コースじゃ————————」

 と組分けゴブレットが叫ぶ。


 ああ、私の運命決まったわ。そんな気がしてた。はいはい。


 ルーネやマクゴナガルに教えたら絶対「お嬢様が聖女〜 ww」って抱腹絶倒するに違いない。


 しばらく教えるのはやめよう。



 聖女コースは結局5人。1年生100人のうち5人なので、5%しかいない。全5コースで分けてうちだけ5人って、政治的な判断でこのコースを残さざるを得ないが、犠牲者なるべく減らすために当選確率抑えました、って感じよね。きっと。


   *


 翌日から早速授業が開始された。


 「まずは手のひらから血を滲み出させる訓練です」


 手のひらを頭の上に掲げ、気合を入れる。


 きぇ————っ。

 きぇ————っ。


 「出てきました——!」


 薄っすらと赤色が滲み出したと信じる少女。


 「すごい!この勢いよ!」先生が奇跡を目撃した感動のあまり咽び泣く。


 きぇ————っ。

 きぇ————っ。

 きぇ————っ。


 一時間みんなで叫んだが、最初の少女がうっすらとにじみ出たという謎の証言以外、誰からも奇跡は起きなかった。


   *

 

 次の授業は花を咲かせる訓練。


 まだつぼみの植木鉢をひとりひとつずつ机に置き、また叫ぶ。


 きぇ————っ。

 きぇ————っ。

 きぇ————っ。


 春の日差しに誘われたつぼみが開きそうになっていた。


   *

 

 次は後光差す訓練、その次は池の水の上を裸足で歩く訓練。次は……


 もう嫌だ————



 本日最後の授業は、槍で刺し殺されてから三日後に生き返る奇跡の訓練。


 「本気では刺さないから! これ授業だから! チクッとはするけど殺しはしないから!」


 先生が逃げる生徒を槍で追いかけては刺そうとする。必死で逃げる生徒。この日は誰も刺し殺されることなく授業が終わった。



 こんなのがあと5年続くのか……

 初日でもう帰りたくなっている私。


 まだムキムキマッチョ剣士の方がよかった。



   ◇◆◇◆◇



 まもなく1年が経とうとしていた。


 そのころには授業にも慣れた。


 手のひらから血を出せと言われれば隠し持ってきていた朱肉を一滴垂らし、先生が涙ぐんで喜ぶ様を無感情に眺める。


 花を咲かせろと言われれば、机の下に隠し持っていた、すでに咲いている鉢とこっそり入れ替える。


 後光差すのも、水の上を歩くのも、もうお手のもの。様々な奇術テクニックを考え、日々練習し、自分たちのものにしていた。


 もう二代目 ヒキ・ダテン・コーを名乗ってもよさそげなレベルにまで技術高まっている。


   *

 

 最後の難関は、復活の奇跡だ。


 これだけは3日間死んでないといけないというハードルをクリアする方法が未だに思いつかず、合格点が出ていない。


 クラスのみんなも、初歩的な「痛いのを根性で我慢する」から高度な「緻密なデコイを作って一瞬で魂を入れ替える」まで、様々な方法を考えてトライするものの、未だ合格者ゼロ。


 

 私はずるい方法を思いついた。


 オルタクリムと相談し、私の魂を一時的にオルタの中に隠して保管してもらった。

 オルタはすでに死んでいるので、オルタがクリムヒルトの肉体にいたとしても死者である。その死者状態で先生から槍で刺されて死んだ。三日経過した。ここまでは問題なし。


 いよいよここからが難関、復活の奇跡。


 私は隠し持っていた『聖なるスライムの指環』に魔力を与えた。


 夜の寄宿寮で密かに実験を繰り返していたので、指環の権能はもはや私の手の内にあった。


 指環の力で私は一瞬スライムとなる。先生に刺された槍が静かにスライムボディから抜け落ちる。次の瞬間、元のクリムヒルトの体に戻し、同時にオルタに保管してもらっていた私の魂を元に戻す。


 タイミングが狂うと、まだ槍が刺さっている体に魂が戻ってのたうち回ることになったり、スライムになって人間の体が溶けてしまってネタが先生に露呈することになる。私はその奇術を完璧にこなした。


   *


 三日間の後に見事復活したと認定された私は、一年めの履修を全てクリアし、二年生になることが無事確約されたのである。


 先はまだまだ長いな……



 聖女コースでの忍耐かつ鍛錬の日々は、私に大いなる進化をもたらした。


 もともと魔力の多かった私は、魔力に頼り、強引にチカラを振るうクセが子供の頃から身に付いていたようだ。

 少しパワーを出せば、なんでも吹っ飛んでなんでも解決したから。


 しかし、それだけでは解決できないことが世の中にはたくさんあり、結果的に数々の周りのものを傷つけてしまったのだ。物だけでなく人の心も。


 よりよい解決方法を先に考え、最後にちょっとだけチカラを使うこと。


 それが私を大人にし、私の魔力制御は飛躍的に上達した。


 魔力はあからさまに使うのではない。

 セバスチャンに教わっていたことが、ここに来てようやく理解できるようになってきた。


 先生の目を盗み、先生の思わぬタイミングで、先生が想像しない方法で、最低限のチカラを一瞬だけ使う。目的が達成できるのであれば魔力を使う必要すらなし。


 私の魔法制御術は日を追うごとに緻密さを極め、今では他の人の手のひらに好きなときに好きな模様の聖血をにじませることも、冬の花壇に花を咲きちらかせることも、滝を走って登ることさえもできるようになっていた。もちろん多少の奇術を混ぜ込みながら。


 しかし奇術も見抜けなければ、それは真実に変わる。そんな貴重なことを教えてもらえた実りある1年だった。



 『聖女』もまんざら悪くなかった。


 ひよっとしたら向いてたのかもとさえ思えてきていた。


 

   ◇◆◇◆◇


 

 ある日、学校に張り紙が貼られた。

 

 《第千回 魔法神学技術交流会 参加者募集のお知らせ》

 

 「なんですか?これ」

 先生に聞いた。


 「毎年開かれている学校の一大イベントね。まあ、全校生徒対抗ガチバトルとでも言うのかしら?」


 「聞いたことなかったんですけど……」

 ジト目で先生を睨む。先生はしらーっと答えた。


 「魔法あり、聖剣あり、精霊ありの、ルール無用のデスマッチ、別名神々の大戦争『ギガントマキア』。まあ、陽キャのためのイベントですからね。うちの陰キャな生徒では太刀打ちできるはずもなく、例年うちからは誰も参加していないわ。見学も強制されないからその日は休みだと思ってのんびりしていいわよ」


 まあそうだよな。この1年習得したことといえば、過去のありとあらゆる奇跡を自分たちならどうやれば騙して奇跡起こしたことにできるのか、その奇術テクニックをひたすら考え、身につけただけ。


 ゴリゴリマッチョのオッタル先輩やイフリートと友達になっているような先輩、オーバーロードと呼ばれる魔導先輩たちからは瞬殺されるだろう。



「まあそうは言っても、過去には聖女コースから優勝者が出たこともあるんですけどね」


 まじか——。どんなデタラメな奇跡考えつけばそんなことできるんだろう?


「あなたにも関係ある人物よ。聖女の中の聖女と呼ばれた、フィヨルクンニグ・フォン・バウムス様。あなたのひいおばあさまよ」


 なんと!ひいおばあちゃん、カマしてくれるな。 この学校出身だってことは聞いていたけどまさか聖女で、それもデスマッチの覇者だったとは。

 でもなんだか楽しそうだな。


 「私も出られますか?」


 「もちろん、どの生徒にも参加資格あるので大丈夫だけど……。例年大変な惨事になるのよ?ほぼひき肉状態になってヒーラーの先生が一年がかりで治療してるけどまだ休学中の生徒もいるくらい。ゴルゴダの丘の奇跡の復活テストなんて目じゃないくらいじゃない、よ」


 やっぱり先生もあの奇跡の復活、茶番劇だと思ってたのか——。私が生き返ったときは涙流して拝んでくれたのに……。悲しみ。



 まだ可能性いっぱい残っているんだし、人生いろいろ試してみなきゃ損だもんな。ひいおばあちゃんが優勝したと聞いて俄然やる気が出てきた。


 聖女はやっぱり乙女のたしなみですもの。これを機会に聖女コースを盛り上げてやる!


 申込みを終えて、寮に戻りひいおばあちゃん(日記)から早速当時の話を聞いた。


 『わたしが5年生のときの『ギガントマキア』で、なんか知らんうちに出場生徒が興奮して殴り合い上等、超攻撃魔法上等の乱闘戦になっちゃって。殺気立ってて怖かったから隠れ逃げてたの。そして気づいたら漁夫の利で、私以外みんな倒し合っちゃって、私が何故か優勝したのよね——』


 なんとまあリアルラック持った聖女なんだろう。これが本当の奇跡を起こした聖女なのかもしれんけど、私には真似できそうにないな。


 『まあ、ギガントマキアは毎年毎年思いもしないような展開になるから、誰にでもチャンスはあるわ。あなたも頑張ってね——』


 全く参考にならない優勝秘話だった。参加申し込みしてしまったこと若干後悔。



 そして、いよいよ当日、私のリアルラックに願いを込めて、私は『ギガントマキア』の朝を迎えるのであった。




———————————————————

次話『邪悪な聖女はお嫌いですか?』へ続く

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