第4話 金属

 その後、程なくして演説は終わった。聖女は台から降りて、付き人と一緒に正面から帰ろうとする。 

 ユウヤの前にまで来ると、足を止めた。


「こんにちは。新たな英雄よ」

「……こんにちは。聖女様に知っていただけるとは光栄です」


 ユウヤは形式も何も知識がないので、とりあえずお辞儀をする。


「そんなにかしこまらなくとも大丈夫ですよ。私は、人に厳しくすることは、あまり規則であったとしても反対です」

「は、はぁ……」

「事件の解決をしていただいた御礼をしましょう。私は、未来視を扱います。何か、聞きたいことはありますか?」

「……この先、どうなりますか?――死刑囚で……魔法で何かしていらしたでしょう?」

「対応が遅れ、たくさんの人が死にます。魔法に関しては、私も今見れる未来は限定的ですから、何かしておきたいと思いましてね」


 ぐいっと聖女は顔を見えないようにする薄い布を片目だけ出した。目には、紋様のようなものが刻まれていた。


「あ、そうだ。今日、祝福のない鎧が売られています。買われてみては?」


 スーッと、聖女は去っていった。

 (未来視か……。演説の仕方自体は上手とはいえ、多少盛り上がったのは能力か。いや、複数の能力を使った可能性もあるな。魅了とか……あの目だけしか見てないが既視感があった)

 聖女がいなくなると、冒険者はまた普通に喋り始めた。



 ◆■◆■◆■


 ユウヤ達は防具屋へ行った。そして、防具を調べてみると、留め具を外せばサイズの変更が可能な祝福なしの防具を買った。

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