第四章

第1話 強敵

 ユウヤは一人で迷宮に入っていた。クランの初依頼から複数の依頼が舞い降りたが、週によって受けられる依頼の上限があるらしく、それに引っかかり暇になったためだ。

 

「いつぐらいになったら、教会で治療必要になるのかなー」


 魂の淀みというものは、専門家にしか分からない。ユウヤも例外ではなく、シスターなどの修行を積んだ人に見てもらわなければいけない。


「『喰らえ冥へ闇へ』呪術〔魂玉〕」


 魔物と出会うが、強壮薬で力を消費させ呪術で動きを止める。小説で見たことのある単純な技だ。そうして、動きを止めた後に魔物の首を斬った。魔物にとって魂というものは重要らしい。


(そういえば、最近はエグゼキューショナーズソードを使ってないな)


 迷宮を歩いていると、闊歩しているボロボロの女が見えた。最近、不審人物を見つけたので、そいつにやられたのか――と近づくがまるで生気を感じない。

 シャッと女が剣を手に取って、ユウヤに向かって振り切る。


『■■!』

「えっ?」


 ユウヤは振り切られたところを触れるが、怪我はない。女がまた振るう。


『■■!』


 声が微かに聞こえてきた。そして、だらっとユウヤから汗が流れ出す。生物の本能の発露――。カイマはすぐさま離れながら、見たことのない炎の魔法を放ちだした。

 ユウヤは、エグゼキューショナーズソードを取り出し、斬りかかるが女を斬ることは叶わなかった。


 強壮薬を使う事も考えたが、花の魔法を使って壁を作りながら、逃げる逃げる逃げる。

 逃げ切って一段落ついた後にカイマが戻ってきた。


「置いてきてたのか。済まなかったな」

「キュー」


 カイマの頭を撫でながら、冒険者ギルドに戻った。

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