第6話 生贄

「なんだこの剣」


 ユウヤは率直な疑問を口にした。しかし、剣が答えるはずもなく辺りに静寂が訪れる。

(こいつ《この剣》、クインが持っていたエグゼキューショナーズソードの鞘に似てる)

 エグゼキューショナーズソードとは、中世ヨーロッパの処刑に使われていた剣である。ユウヤが鞘と表現したのは、実物は見ておらず鞘を携えているところを見た――といったところだろう。


「……魔法が鞘にかけられているな。使用用途を制限してるのか」


 おそらく、制限という考えで間違いない。が、


「どうやって、使えるようになるんだ?」


 流石に今の階層ではまずいと考え、上に登りながら魔物に試すが、使える時と使えない時の差は一切分からなかった。

 分かったことといえば、無理な動きでも鞘に当たらず、すり抜けて剣が鞘に収まるといった関係のないことだ。 


 さらに試そうとして歩いていると、串刺しとなっている魔物と人間を発見する。


「魔法、いや、百舌鳥モズ早贄はやにえか」


 習性によってユウヤは魔物を推測した。


「〘ゼツソウ〙」


 ゼツソウは、獲物を突き刺しておき、やる気を削がせたり自分の領域と主張したりと特徴的な魔物だ。


 ゼツソウが現れた。

 デカイ鳥の見た目だが、なんだか気味が悪い顔をしている。


 剣を前に出すと、剣が飛び出し、ユウヤはその剣でゼツソウを斬り伏せた。


(性能は異様に高いし、制限が分かれば扱いやすくはなるんだけどなー)


 ◆■◆■◆■


 迷宮から戻ると、クインは焦っている様子でユウヤに近づいてくる。

 ユウヤが「どうしたのか?」と聞いてみた。

 すると


「イシィが足を怪我した。医師が言うには、代償の効果が出たとかなんとか……」

「は?」


 ユウヤは一瞬呆けるが、気を取り戻して急いでクインと病院に向かった。

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