第50話 珱花亭

 ライブ本番では皆が集まっている。珱花亭の外で聞こうとしている者さえいた。それも当然だ。そもそもここらへんに会場がなかったから、舞台のある珱花亭に来たに過ぎない。


「楽しみですねー」

「あぁ、そうだな」


 など、他愛のない会話が聞こえてくる。ユウヤはそれを気にすることなく、エスタントアの登場を待ち、餅酒もちざけという飲み物を飲んだ。

 ドロっとした喉越しにほんのりと甘いことが最大の特徴だ。


「みんなー、こーんにちはー!」


 エスタントアの登場にわーっと見ている連中が騒ぐ。その喧騒に耳を塞ぎながら、いまかいまかとエスタントアの歌を待っていた。

 観客の声が弱まる。

 歌の時間が来たと、ユウヤは考えて耳を塞ぐことを止めた。最初に聞こえたのは静かで綺麗な歌声。


 ――しかし、聴いていくにつれ何か内側に入ってくるような感覚が湧いてくる。


「時を、打て〜〜!! 悪感情、祓〜いなーがらー!」


 ――いや、共鳴が反応している。

 せっかく、楽しみだったライブがこんなことで不快になるとは……とユウヤは思ったことだろう。

 他のメンバーは、この音楽に聞き入っていた。


「いいぞ〜」


 軽くユウヤ達が応援していると、だんだんとアビリティがとろけ合っていくような感覚に陥る

 徐々にその感覚に慣れていき、アンコールの曲が流れていく。


 正直、解呪などに必要なことにアンコールが入っているのか分からないが、ノリノリで曲を歌っていくエスタントア。


 ユウヤは餅酒を飲んで喉が渇きを訴えていたが飲み物を注文するような空気感ではなかった。


 ◆■◆■◆■


 爽快感がユウヤの中を支配していた。


 曲が終わると皆満足して、珱花亭を去っていった。もちろん、珱花亭でその後、酒を飲むものもいる。ユウヤ達もそっち側に入るだろう。


「……良かったな」

「そうですね。明るい歌ですごく盛り上がってました」

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