第44話 TS

 その後、化け物は無事グルミ達に処理されたらしい。「どうだった?」と聞いてみるとグルミは「搦め手は効かないっぽいが、それ以外は効くし普通に殺してやった」と答えてくれた。

 やはり、レベルを上げねばと精進していくユウヤであった。


 そして、音楽の本番まで三日というところまできた。


 最近はカチューシャの変な言葉もすっかりと収まって少しちゃんとした兄妹に近づいている気もする。

 ユウヤがカチューシャとの修行で休憩を取って、椅子に座り水を飲む。

 すると、


「こんにちは」

「こんにちは〜」


 小太りの裕福そうなドワーフが挨拶をしてきたので、ユウヤも挨拶をする。ドワーフはその後カチューシャのところまで歩いていった。


「修行中だけど、お得意さんなのかな?」


 ユウヤが疑問に感じて、スタッフに事情を聞いてみると、‘‘今回の主な客’’らしい。ドワーフはすぐにどこかに行ってしまったので、修行ついででカチューシャにその事を聞いてみた。


「あぁ、彼は呪いを受けていてね。私、音楽とスキルで呪いを弾けるのよ。解呪とライブを合わせてるって訳」

「そうなのか。結構珍しい技を使うんだな」


 修行を終えると、迷宮に向かう。

 最近は迷宮の一歩手前で皆と会うようにしているのだ。


「最近の修行の調子はどうだ?」

「いい感じ!」

「それじゃ、本番も大丈夫そう? 誘ってよね私も。他のメンバーは誘ってるらしいし」

「誘うよ。そりゃあさ〜」

「とっても楽しみですね!」


 レベルアップを目的としているので、なるべく魔物のいる方に行く。ユウヤ達のレベルでは一層でも効率は変わらないので、暴れまわっていると一体の杖を持ち深く帽子を被った、ガサガサ肌の汚い布を纏う魔物が現れる。


「…………やば」


 皆に何も言わずにユウヤだけが突撃し、魔物の魔法をユウヤだけが食らった。


「ぐあっ!」


 土煙が舞って、皆が咳き込む。


「ユウヤ!?」

「ユウヤさん」

「……何しての」


 魔物はいつの間にかいなくなり、土煙が散るとユウヤが見えてくる。


「……ユウヤ、なのか?」


 ユウヤが女性化していた。


「チッ、殺し損ねたわね」

「一体、どうなってるんですか? ユウヤさん」

「あの魔物、実力に差が階層で狩りしつづけると、現れて体を改変させるのよ」


「貴方、女子の方が‘‘ぽい’’ね」

「えぇ……」


 とてもユウヤは元男性という風には見えない体つきになっていた。

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