第30話 個人闘技大会

 冒険者ギルドに行くと、急いでいたエスタントアが「用事出来たから、ちょっと今日の戦闘無し!」と言って帰ってしまった。徘徊者が出た日には用事のある素振りを見せていなかったし、おそらく時間を削って伝えに来てくれたのだろう。


「はぁ〜、どうしたもんかな」


 張り紙などで依頼だったり、闘技大会などというものを読んで暇を潰していたが、とうとう飽きてしまう。

 とりあえず、新たな短剣を買うことにした。銀貨を五枚程度とそこそこのお金を払うも、まだクイン達からもらった金貨は残っており――残金、金貨3枚、銀貨4枚、銅貨3枚となった。

 迷宮に一人で行くのも面倒なので、お手伝いのクレナのところへ向かった。


 ◆■◆■◆■



 クレナはちゃんと作業をしている。しかし、量の多さに違和感があった。そういえば、クレナには材料を渡したりしているが、調合したところを見た訳では無い。人が空いたところでユウヤはクレナに話しかける。


「よぉ、クレナ」

「あれ?ユウヤは迷宮に行ってたんじゃ?」

「仲間が用事があってなー。暇になったんだよ。ちゃんと強壮薬売れてる?」

「売れてるよ」


 麻袋を取り出して、口を開けると金がしっかりと入っていた。麻袋をしまうと、クレナが立ち上がり背を伸ばして、他の袋から何かを食べる。クインが食べたものと非常に酷似しているが、そこを指摘することはユウヤはしなかった――。


「しっかりと売れてるけど、料金安すぎてあんまり利益出ないんよ。食費とかの生活費でもすぐに潰れるし」


 (そういえば、最近生活の水準上がってたな)ユウヤはそれだけ考えていた。


「なぁ」

「どうした、ユウヤ?」

「その強壮薬とか日々の材料じゃ足りないと思いけど、どうしてるんだ?」

「あぁ、強壮薬買ってるやつらから、善意で譲ってもらってる」

「あ〜、その手があったか」


 ユウヤはクレナに関心した後、また適当に冒険者ギルドの方に向かっていった。


 ◆■◆■◆■


 冒険者ギルドに行くと、ちょうどサダバクがいて話しかけてきた。


「個人闘技大会に出ないか?」

「はぁ……?」


 ユウヤは突然の一言に素っ頓狂な声が出る。そして、ユウヤは闘技大会について深く考え出す。ただ、張り紙に貼ってあったものと同じなら二日後でどうしようかという思考だったが、何故自分が誘われてるんだという思考に変わる。


「なんで、俺誘うんだ?」

「あぁ、遠征に行ってる奴がいるんだがな。間に合わないらしい。だから、転移魔法とか使えるようになれっつったんだがな」


 サダバクがさらっとエグいことを言った。転移魔法は魔法が得意なものでも、どの属性とも合わないため高難易度なはずだ。


「……まぁ、エスタントアがいいなら」


 困惑しながらも、ユウヤはしっかりと答えた。サダバクもエスタントアだったら来るだろうと安心して、「じゃあな」と言って別の場所に行ってしまった。


「……飲んで、帰ろ」


 それのみでユウヤの一日は終わった。

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