第23話 格の違い

 シーン、と皆が話を止めて、静寂になってしまった。空気が辛気臭くなってくる。そうして、皆が魔人サタラナマを睨んだ。冒険者の一人が魔人に対して、確認を取る。


「今、ここで、やるんだな?」

「あぁ」


 魔人に一本の投げナイフが飛んでいくが、魔人は華麗に避けた。魔人の反応は「お、不意打ちか。危ないな」などと非常に淡白なものだった。

 投げナイフが戦闘のコングであったかのように、戦いの火蓋が落とされた。


 パーティーで前衛をしているであろう連中が雪崩のように殴りこみに行く。魔人はアクロバットな動きで剣、槍、拳など攻撃の応酬――。

 しかし、雑魚は蹴散らされるだけだった。

 雑魚は殺されることなくギルドの壁にまで吹っ飛んでいく。


「おい! 冒険者成りたてのやつらは訓練所とかの奥にまで避難しろ!」


 ユウヤですら冒険者になってから一、二ヶ月程度であるので、メンバーと一緒に避難をしようとする。

 魔人はユウヤの行動を許そうとはしなかった。


「そうはさせっか!」


 魔人は地面を蹴り、宙を舞う。ユウヤをその肉眼で探し出すと、飛び蹴りを放ってきた。

 割って――


「ふんッ!」


 ――入ってきたのは、サダバクだった。サダバクが魔人を殴り飛ばし、地面に叩きつける。サダバクは外陽霊の特徴的な布を両手に巻きつけていた。


「サダバク!」

「サダバクぅ……!」


 魔人とユウヤの声が、室内に響く。

 ユウヤは(俺に絡んでこなかったけどいたんだな)と思う。対して、魔人は(外陽霊の布を使ってたとはいえ、いつからいたんだ?)と思考を張り巡らせる。


「なんだぁ? 俺は仲間以外にテロリストにも知られていたのか。嬉しいぜぇ?」


 サダバクは鼻につくような喋り方をするが、魔人は気にもとめない様子だ。


「今のうちに回復職は酔いを覚ます魔法、支援職は肉体の強化を頼む」


 回復と支援職が「はい」「了解」などと返事をして、仕事をそつなくこなす。

 この間、わずか七秒。

 そして、冒険者の皆がアビリティを発動させた。


 サダバクが突撃して、殴り合いに発展。


「『外鋼鉄鋳がいこうてっちゅう』!」


 敵の障害物として冒険者が殴り合いに入る。ガンガン、と殴ってもヒビが入らない。


「『零冷鈴れいれいれい』」


 シャランという音と共に魔人の動きを鈍らせる。サダバクの拳が通る。


「はは、面白いじゃねぇか。ギア、上げるぞ。『開放アンロック』」


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