第24話 才覚
魔人の言葉を聞いて、冒険者らは身構える。しかし、魔人の見た目にも雰囲気にも変化はなかった。
魔人は軽く息を整えて、冒険者らは警戒して手を出していないが
アビリティ発動時からの魔人の一声は「『天駆ける足』《ランナウェイ》」だった――。
一瞬にして、魔人は防御の薄い場所を突破。魔人の攻撃によってそこにいた冒険者は殺されてしまう。
「ユウヤァ!」
魔人は笑いながらユウヤの名前を叫んだ。ユウヤはその言葉に気圧されるもすぐに立て直す。
「お前は何が目的だ!」
「そんなの最初に言ったぞ。殺し合いだ。殺し合いを目的に来てる。殺し合うためにお前らの
魔人の凶刃により、ユウヤの頬に赤い水滴がしたたる。ユウヤは反応が出来ずにこのまま死ぬと感じたが、追撃をしてくることはなかった。魔人はユウヤがどんなことを言うのか待っている。ユウヤは赤い水滴を親指で拭いとった。
「……!」
「ユウヤ……」
イシィやエスタントア達も下手に動けない。
緊張の糸が張り詰める中、「うぉっ!?」と魔人が声を発しながら、宙を浮いた。
浮かしたのは、サダバクだ。
「«空虚な腕» こっち無視してんじゃねぇぞ」
「ははは。面白いなこの魔法。空飛んでるぜ」
(こっちから干渉出来ない。俺達、魔人での従者でも真似て作られたのか?)魔人は初めての魔法に対して興味を示しながらも至って冷静に分析をしていた。
「楽しいねぇ? そうかいっ!」
サダバクは魔人を床に叩きつけた。完全に優位なのは冒険者側なので、それぞれが技を繰り出し魔人に集中砲火。
魔人は血だらけとなり、地面にふした。
「従者、頼む」
その言葉を発した瞬間、サダバクは見えない従者とやらに殴られて魔法を解除してしまう。
(開発途中で仕方ないか!)サダバクはそう考えながら、別の魔法を放つ。
――しかし、その魔法が魔人に当たることは無かった。
「『魔に惑わされる』《ゼーゲン》」
魔人の能力によって、魔法の方向性は失われてしまったのだ。「きゃっ」とサダバクの魔法によって捕まってしまった人が声を漏らした。
「こいつ、いくつの技を……」「サダバクの魔法を狂わせるとは」と冒険者らは騒ぎ始める。
「魔法は使わず、前衛だけで行くぞ! 敵のアビリティは複数の力を使えるんだ。生き物に干渉する可能性は低い! 行くぞぉ!」
一人の冒険者が指揮を高めて、魔人に突撃する。
「ちっ、察しいいなぁ。もう! «溶光»」
魔人は一般人や建物を気にせずに、高火力の魔法を放った。サダバクが身を挺して防ぐも守りきれずに解けてしまう冒険者がいた。建物もところどころに穴が空いて、日の光が漏れ出ている。
「……このやろうッ!」
「ははは! もう一発!」
「もう一発はまずい。俺達を迷宮に転移させろ!」
サダバクの一言で、場所は変わり迷宮のどこかに転移していた。今まで、転移しなかった理由なのか奥に避難している途中だった人達も‘‘バラバラ’’に転移。
ユウヤは運良く、エスタントアと女子二人、男子二人と出会う。
「一人じゃなくて良かったけど……(誘い断った奴らばかりかよ)」
「けどって何」
「他の仲間ともいたかったって話」
「ちょっと話でもしましょっか」
ユウヤ達は安全のためにその場で居座っていた。そのため暇を持て余していた。
「俺はコウジナ。財宝が欲しくてここ《冒険者ギルド》にきた」
「私、ユナ」
「私はライミ。極めて凡庸な一般人だよ」
「僕、カイサト……」
「あぁ〜、俺はユウヤ。借金返したくて今迷宮にいる」
「私はエスタントア。暇つぶしでここにいる」
挨拶は非常に淡白なものだった。しかし、話は途切れることは無かった。皆が出身の話をしたり夢を語った。ユウヤは金属プレートの文字化け部分を見せていた。
―――
名声:■∇▶◆<⊄✮
―――
「凄っ!」
「さらにバグってるっ。ところどころ塗りつぶされれてるようになってるし」
皆、それに驚くが、エスタントアは名声の部分がまた変わったことをユウヤに伝えた。ユウヤが金属プレートを見てみれば、前回と本当に変わっていたことに困惑した。
その中、
「後ろ……!」
エスタントアが指をさして驚き、皆がそちらの方向に振り向いた。――男子の一人が心臓を貫かれていた。
「え?」
「うわぁぁあー!」
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