第28話 未来への進歩
イシィ達はもう故郷へ行ってしまった。皆で約束したアイドルの会場(珱花亭)に行く、ということは無理だと思った。だが、数ヶ月間延期するという話になり、おそらく皆で行けるだろう。
ユウヤとエスタントアは二人でも迷宮を進めるが、チームとして安定をはかりたいのでライミ達を誘うも断られた。きっぱりと――。
「本当にあなたはなんなんですか……」
ライミに言われた言葉を思い出す。ライミはユウヤのことを注視していて、不思議な女だった。世迷言を言っていたが、忘れてしまった。
仲間を募集するも入っくれる人はすぐには来ないので行っていない。
◆■◆■◆■
もう五層でも魔物と一対一の戦いなからばすぐに越してしまった。それにユウヤは『罠感知』のスキルを得た。
「おぉ……!」
「罠感知って、良かったじゃん。重要なスキルを得られて」
「あぁ、とっても嬉しいよ」
「ただ、一層とかじゃ意味ないよね」
エスタントアがそう言ったので、一層を軽く見ていると、敵を遠ざける罠と敵を誘う罠を見つけた。
「すっげぇ! 罠が分かる分かる。どんな罠かは研修で習ったやつだけど……」
「まぁ、別に変わらない」
「そうだな。覚えとけばいいだけだし」
「またスキルが獲得出来るまで、鍛錬しないとね。知識系のスキルは緊急事態で知識をすぐに引き出すもんだし」
そう話していると、冒険者が降りてきた。サダバク達、他の奴らと違って威圧感を隠そうともしなかった。
「誰?」
「いや、俺も知らん」
ユウヤもしらないので、迷宮に籠もっていた生粋の[迷宮狂い]だろう。毎日迷宮に通うユウヤでさえ、軽く尊敬する存在だ。
基本的に一般人であってもアビリティはあるし上限はほぼないらしい。成長限界があると感じている人でもだ。ゲームでは限界を設けられているが、設定上は「ほぼない」そう書いてあった。
ただ、さっきも書いた通り成長限界を感じることはある。ここではゲームと違って実際に生きているし、相当な苦労をしているはずだ。
(正直、サダバク同様アビリティを知りたい)そう思うユウヤであった。
◆■◆■◆■
迷宮から戻って道を歩いていたところ、冒険者ギルド近くの職業についての知識や戦闘だけを扱う本屋が新しく出来たらしいので、初めて通ってみた。
冒険者に限って新刊を一時的に無料で見れるようだった。
「本当に迷宮って、色々な恩恵があるな」
気になったのは四冊――呪術の書、魔法の書、魔術の書、妖術の書。これは同じ作者がすぐに連続で出しているようだ。ペラペラ読むと、ゲームなどで知っている部分とこの世界のとても奥深い術についての知識が載っていた。
「この人、凄いだろう?」
六十ほどの老婆が話しかけてきた。この店の店主なのだろうか?
「凄いと思います。なんか、俺には分からないところも分かりやすく説明してくれますしね」
「そうかいそうかい。……買ってくかい?」
「いえ、金ないんで」
「そうか」
ユウヤは本を棚に戻してから帰る。他の者達も勧誘をされるかもと感じて、ピュッーと蜘蛛の子散らすように帰っていく。
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