第21話 ヤバい奴ら

 エスタントアにスライムをさっそく見せてみた。最初はエスタントアもどう反応すればよいのか困惑して、とりあえず「触ってみていい?」と言い出した。

 ユウヤが触ることを了承する。そうすると、エスタントアはスライムを手の中で転がしてみたり、手ごとスライムを揺らしてみたりした。


「共鳴とかでスライムの今の感覚分かったりする?」

「いんや、特にない。食欲とか多少感じるのもあるけど……ちっちゃくなったから? それとも、分散したものを寄せ集めたから、かな?」

「友達に預けてたって言ってたもんね」

「まぁ、今はそんなこと気にしてもしょうがないよな。迷宮、行こうぜ」

「うん!」


 ユウヤ達が意気揚々と迷宮に入ろうとしたところで、サダバクが話しかけてきた。


「よぉ、お前らぁ、上手くやってるそうじゃねぇか」


「――誰?」


 エスタントアはサダバクの事を詳しく知らないため、‘‘お前ら’’などと言われて困惑してしまったようだ。


「サダバクって人だ。冒険者の中では、多分上澄みだと思う。普通に強いし」

「…………へぇー」


 エスタントアはじろっと見つめて、少し笑った。サダバクの方は「思ったより特殊なやつ」と、小声のみの反応だった。


「それで、サダバクは何しにきたの?」

「まぁ、お前達にプレゼントしてやろうと思ってな。魔酒だ。度数も少なくて、爽やかで美味いぞ」

「いや、いらないよ。というか、わざわざ持って帰りたくないし……」

「そうか。それじゃ、帰りに渡す!」

「まぁ、それならいいよ」


 一瞬で話は終わり、迷宮に潜っていく。


◆■◆■◆■


「そういえばさぁ、試したいことがあるんだよね」


 エスタントアが話を振ってきた。とりあえず、ユウヤは「どんなこと?」と言ってエスタントアに内容を聞いてみる。


「黒い物体で魔物を操る……」

「随分と衝撃的なものだけど、名称がないとなんとも締まらないものだね」


「じゃあ、これは官刧カンキョウって名前にするよ」

「まぁ、そんなんでいいか」

「話を戻すとねぇ。ミニゴーレムとかで思ったけど、私の『カンキョウ』って性能高いじゃん。それでね、流動体以外だったら割と魔物の体に張り巡らせて操れないかと思ったわけよ」

「おぉ! 天才じゃん!」


 ――結果から言うと、失敗した。

 体に貼り付けた時点で、魔物が震え始めて鳴き声のある魔物だと必ず叫んでから死んでいった。ただ、死ぬまでのタイムラグで一応動かすことは出来た。三分程度。


「実験、やめよっか。叫んでいるのを聞いているとこっちも狂いそうになってくるよ」

「そうね。それに『カンキョウ』の出しすぎで疲れちゃった」


 ユウヤ達はプレゼントを受け取って、家に帰った。気軽に話せるような内容ではないため、クレナにはその話をしなかった。


◆■◆■◆■


 サタラナマは着実にユウヤへ近づいていた。老人の従者執事を引き連れて。


「ユウヤという者を殺しに行ってよろしかったのでしょうか?」

「あぁ」

「そうですか……」

「俺とユウヤの中の奴、戦ったらどっちが勝つと思う?」

「本気なら中の者、ユウヤという者の体を借りたままなら互角でしょうね」

「そうか、楽しみだ」


(このまま殺しにいけば、魔人とも戦える。それにあの運命を変えたっていうユウヤとも戦えるんだ。進むしかないよなぁ!)と戦闘狂バトルジャンキーの考えをしていた。

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