第14話 代償①〜④
◆■◆■◆■◆■
沈黙な中でナカが喋りだした。
「分かった。クインはここに残すことにしよう」
「!……」
「ありがとう」
ナカがラントーテを背負おうとするが、足が無いので諦めて横抱きの状態になる。ニィナがクインのことを睨む。しかし、クインは優しく微笑み返した。
「頼んだ」
「あぁ、ニィナ行くぞ」
「……はい」
◆■◆■◆■
イシィの腕は治ったが劇的に状況が良くなることは無かった。ただ、魔力を代償として体力を回復したり、技の威力を上げたりとイシィの動きが良くなってユウヤも少しは落ち着けるようになった。
「ブレイブに代償とはえげつないことするなぁ。ユウヤは教えたのか?」
「教えては、ない!」
「ふーん」
まだまだラフトは余裕そうにしている。
「イシィ、俺が最大火力の魔法をうつまで足止め頼む。俺がラフトに近づいたら離れろ」
「わっかりました!」
ユウヤが魔力を練りだすが、気づかれたくないので詠唱はしなかった。体内の魔力を左腕に注ぎ込む。
(代償はイシィが持ってるから油断するはず)
左腕には何も持たずにラフトに向かって突っ込んでいく。ニィナが下がるとユウヤは何も言わずに火炎をぶち込んだ。
「やったか?」
ユウヤが女性がいたことを思い出し見てみるが、その場からは動いていなかった。
(……なんだこいつ)
すぐに火炎による煙が無くなりどうなったか分かるようになる。
「――いやぁ、いい火力だね」
耐火性にとんでいるのか分からないが、服も全然燃えていなかった。
「ただ、そろそろ飽きたな」
ラフトの拳がユウヤの腹に当たった。ユウヤが膝から崩れ落ちる。イシィが連続でブレイブを発動させるが、剣で軽くいなされ蹴られる。
イシィは剣で防ぐも吹き飛ばされた。
「手加減、してたのか……」
「今の君の実力を測りたかったんだよ」
「くそ、が」
ユウヤが立ち上がるも、また腹に一発。
「マ……ダぁ……オぇっ」
声が掠れて、吐いてしまった。あまり痛みを感じていなかったが、かなり致命的な攻撃だったのだろう。
(くそ……息が……)
浅い呼吸を繰り返す。
一方、イシィは壁に衝突して動けずにいた。
(行かなければ戦わなければいけないのに……)イシィがそう考えていると視界が真っ赤に染まった。
確認すると頭から血を流している。流石にやばいとイシィは感じて代償を使って、軽く手当をする。
「魔力が……」
イシィが自分の魔力を確認していると、残りおよそ一割だということが分かった。
「でも」
一歩踏み出すと剣が落ちる。チラリと剣を持っていた腕を見ると、腕からドロドロとした血を流していた。片腕の時にブレイブをうったせいだろうか。魔力も少ないため再生に回せないだろう。
しかし、イシィは腕は動作することがわかり、剣を持って歩む。
(勇気を持って恐怖を制す。残り一割、くれてやる、いや、どんな代償を払ってでも――)
イシィがラフトに突撃して剣戟を交わす。動きを変えていてラフトとユウヤは驚きを隠せずにいた。
イシィの代償の指輪は光り続けている。
「まずっい! ぞれ以上はいけない! そんな強くなったら、その分のォ゙代償……ガ」
ユウヤが掠れた声でイシィを止めようてするが、当の本人はいわゆるゾーンに入っているらしく聞こえてはいなかった。
ユウヤが戦闘に割って入る。
(早く戦闘を終わらせないと……)そう考えながら共鳴を最大出力にして、妨害を続けた。
「ははっ、やるなぁ!」
剣が交わった時、イシィの剣が壊れた。破片は両人とも体を横に倒して避ける。お互いが睨みつけながらも命がけの戦いをどこか楽しんでいる。
イシィが回し蹴りをラフトに食らわせて、吹っ飛ばす。
ユウヤとイシィは黒い結界を歪ませながらの突進。すかさず、追撃するも魔力の圧で動きが止まってしまった。イシィ以外は――
「受けてみろっ」
「ハッ、いいぜぇ!」
「やめ――」
パッと魔力の圧が消えて、ラフトは防ぐ体制に入る。
「『恐怖を制す勇気への
イシィの剣は今までにないほど、純白に光り輝きその剣は今までにないほど巨大だった。振り下ろすとフラッシュバンのように前が見えなくなる。
(やった……か? 体の感覚が)そう思いながら周囲を見渡すとイシィは自分が倒れていることを悟る。
(足が全く動かない。腕は一部破裂して動かないや。これが、代償?)
イシィの状態は悲惨そのものだった。腕は壊れ、足は代償にされた。
ただ……
「くそ……いってぇ」
剣と両腕を無くしたラフトがいた。
しかし、ユウヤは困惑しており、怪我をしたラフトを追撃することもなく、真っ先にイシィのところに向かった。四肢欠損、ただかろうじて息をしていた。代償のせいか血を垂らしており、スライムで止血をする。
「……回復、しないのか?」
「お前こそ」
「ブレイブの回復阻害だ。やっぱ、えげつないな」
ユウヤはイシィの代償の指輪を取り外して自分につけた。そして、ラフトに早足で迫っていく。
「一撃……一撃で……」
足で戦うラフトは苦戦を強いられる。が、有効打を与える隙が見えない。
『私が本を見てあげる』
「ハハッ、呪具あって良かった。サンキュー!」
敵も一人ではなかった。呪具の人格が読書のスキルに介入し、ラフトに情報を渡す。ユウヤの、代償の指輪のある腕が――切られた。
「……っ!」
(もしかして、『魔力刃』のスキル! バグスキルで能力覚えてねぇよ)
邪魔にならないようにユウヤは腕を遠くに投げた。
「実験も、終わりだ」
『共鳴』のアビリティで一発を避けるも、もう一つの凶刃によって腕を切られ、落とした剣で心臓を貫かれた。
「ぅっ!……っ!……っ」
ユウヤは小刻みに動いていたが、ついには動かなくなる。
「さ、どうなるか」
(不思議と体の中が温かい)意外にもユウヤの意識は潰えていなかった。走馬灯のように過去の記憶が流れる。二人きりの記憶、誰にも教えていない……記憶。手を繋ごうとしてる記憶。
共鳴の魔力が代償の指輪の腕に近づいていく。
(繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がって繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ――巣食って《すくって》)
這い寄ってくる、侵食してくる、流れ込んでくる。混沌が、悪意が、憎悪が、虚空が、漆黒が、記憶が、深淵が……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます