第13話 罠と戦闘④〜⑦
世界が一瞬にして暗くなった。まるで白髪の女性がいる人は見えるのにその他は暗黒の謎空間のようだ。違う部分はユウヤに不思議な高揚感があるところと力がさらに増したところである。
イシィがユウヤの位置にまで下がった。何故か息を荒げていて汗が滝のように流れている。左腕を押さえているような動作をしていて右半身を前に出している。どうなっているか見てみると左腕がなくなっていた。
ゾワッとユウヤは背筋が凍る感覚に陥る。
「腕……! 大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。痛みも出血も何故かありません」
「汗がめちゃくちゃ出てるぞ」
「体は怪我を認識してるんでしょうかね? 本当に不思議です。ただ、ユウヤが無事、で……足?」
イシィが見ていた場所に両足が落ちていた。おそらく、大きさ的にラントーテの足だろう。その一瞬にして自分が悪いことをした、という考えがユウヤの頭の中を駆け巡らせてしまった。
「はぁはぁ……これは事故です。落ち着きましょう」
「……」
「そんな気負いするこたぁないぞ。ユウヤくん。冒険者になれば一度はああいった選択をすれば良かったとかあることだ。――それよりも、自分達の心配をすることだ」
ラフトの最後の悪意の言葉を感じ取り、ユウヤは戦闘体制になる。他人の思考が言葉が体の中で暴れ回る。
冷静とは違った状態だが、力が溢れ出たことで不思議な女が見えた。
◆■◆■◆■
クイン達は結界の外にいた。クインが結界を破ろうとしていて、イシィとナカが足を失ったラントーテの心配をしている。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫――」
ラントーテは自分は大丈夫だと言い聞かせていた。
「出血が無いのは不思議だが、どうなるか分からない早く治療を施さないと」
「……スライムで傷口を覆うか?」
「傷が大きいから二体分使って」
スライムをそのままくっつける。ラントーテは痛みはなさそうだが、むず痒そうな反応をした。
「クイン、ニィナ、上を目指したいがどうする? 意見を聞きたい」
「正直、ここにいるのも危ないので、なんとか«探知»で敵との遭遇を避け上にいくべきです」
「俺も上にいくのに賛成だ。全員でやっても微妙だったしこのままじゃ全滅必至。たがら、増援を呼ぶ。サダバクだったら来てくれるだろう。ただ……」
「なんだ?」
「俺は残る」
ナカとニィナがクインの言葉に眉間にシワを寄せる。
「あいつは俺の攻撃に反応できてなかった。それにわざわざ、迷宮でユウヤをつかって何かを試すわけないだろう。必ず、運びだすと思う。その状態なら足止め出来る可能性は十分ある」
「危険すぎる」
「それに死体の場合でも生きててもなんらかの方法で運び出す可能性がある」
皆で歯がゆい思いをしていた。
◆■◆■◆■◆■
ラフトはユウヤとイシィと戦っていたが、お遊びといった印象で少しつまらなさそうにしていた。ただ、ラフトから伝播する悪意は変わらず、ユウヤは緊張が張り詰めていき、イシィのように汗だくになる。
「わざわざ、結界で二手に分けたってのにつまらなさそうにすんなっての」
「いやいや、これも実験だからやってるんだよ」
「実験?」
「うん、ちょっとね。やれって命令されちゃったから。君のことについても色々調査させてもらった」
「気色悪いなぁ。他の冒険者が言ってた俺を調べてるやつはお前か」
「そうだよ〜」
ユウヤはラフトの気を引こうと会話を続けるが、隙を見せず決定打も見つからない。
「『ブレイブ《一》』」
イシィがブレイブを発動させるが、ラフトに少しダメージをあたえる程度だ。格上でもダメージをあたえるブレイブは流石だが、倒せなければ意味はない。
ラフトがイシィに向かって剣を振りかざす。イシィは疲れからかその場から動けなかった。腕で防ごうとするが、それも間に合わないだろう。
「まずっ!」
ユウヤがイシィを押し倒し、ギリギリのところで剣は当たらなかった。ただ、イシィは尻もちをついてしまう。
ユウヤはイシィを守ろうと猛烈な剣撃を繰り出し続ける。イシィが下がったところ声を発して、ユウヤに知らせた。
それと同時にユウヤも下がる。
「イシィ、片腕を失ったからかバランスとるの難しそうだな」
「すいません、全然だ、大丈夫じゃなかったです」
「いや、謝らなくていいよ。それより『代償』を使って腕を治すことは出来るか?」
「たぶん、傷を塞ぐくらいしかできませんよ」
「スライムの命を使え」
「え?」
「スライムを使えばおそらく腕を生やせるはずだ!」
ユウヤは向かってきたラフトと剣で応戦する。イシィがもらったスライムを『代償』にし腕を――生やした。
「出来た……!」
これでイシィは全力を出せるようになる。
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