第15話 救助救援救済
今まで感じたことのない感覚。記憶だけが流入したときとは違い、優しく包みこまれているようだ。
ユウヤが、立ち上がる。
「起きた……。同じ人間か?」
ラフトがそう言うのも無理はない。ユウヤは白いオーラを纏っており、さらに瞳の色は黒に変色していた。ただ、腕が治ることはなかった。ズルッと心臓に突き刺さる剣が抜け落ちる。
「ぶち殺してやるよ」
ユウヤが殺意のある狂気的な笑みを浮かべながらそう宣言した。と同時にラフトの右頬に蹴りをかます。まるで瞬間移動をしたみたいだ。そして、純粋でありながら強大な魔力弾を放つ。
「ガァアアアァァァ!」
「っ、うるせぇなぁ」
腕がないもの同士の格闘だが、ユウヤの勝ち星が見えてくる。ラフトが魔法を使って壁を作った。
「回復をしねぇとか?」
ラフトが様子をみていると、壁はいとも容易く
「(聖神のおとぎ話であった«天を解く喰栄»とか«
ユウヤはラフトにすぐには近づかなかった。いや、近づけなかった。すぐに青白い雷光は消え去り、蒸気と汗がダバっと吹き出す。ラフトは(魔力消費を考慮してないのか!)と考え、ユウヤに魔力刃で袈裟斬り。薄皮が切れた程度で内臓もこぼれてこない。
(そういや、こいつ親の借金背負ってたな。しかも、莫大の。これを封じるためか? ただ、それなら、この結界ですぐ開放されるはず)ラフトは考え事をしていた。
ユウヤが外との繋がりを強める。おそらく、名声システムで繋がった魂から魔力を集めているのだろう。
(……! まずい、結界が)
「壊れる」
結界にひびが入り、割れた。
結界が壊れて外に晒されることとなり、ユウヤは苦しむ訳ではないが動きを止めてしまった。クインが横目で見ると、イシィとユウヤの二人が大怪我を負っているのが分かる。
「許さん!!」
槍での攻撃を繰り返すと、数度だけ攻撃が当たった。
(予測つかないし、いつの間にかあたってる。『読書』でも正直分かりにくい)クインの指輪が時々強く光るため特殊なものであることはすぐ推測出来たがそれのみだ。
「こんな初心者に苦労させられるとはな。えげつない才能だぜ」
「――復活」
ユウヤの言葉にクインとラフトは目を向ける。ユウヤは違う人と成っていた。だが、記憶を持っているので、ユウヤのふりをして俺は言った。
「再戦だ」
「……やってやろォじゃねぇか」
見た目が変わっただけで中身が完全に変わったと疑いはしなかった。
「ユウヤ、援護するよ」
「よろしく、頼んだ」
共鳴による連携プレイ。ラフトもまずい状況のため早く腕を回復させようと魔力を回すしかない。
【個人魔法】«天を解く喰栄»は守りではなく魔法刃としての力を発揮し、ラフトを切り刻む。
明らかにラフトは焦っている。
(共鳴があると思考を読みやすいな)そう考えながら、俺は能力を発動する。
「【ラフトは『止まれ』。俺は動くことを反対する】」
その言葉により、ラフトの動きが止まった。クインがすかさず攻撃を仕掛けるも、ラフトは抵抗に成功して避ける。ラフトはちょうどイナバウアーの姿勢となり、足で蹴り上げようとする。しかし、またどこからか攻撃が当たり、地面を転がる。
「ふん!」と声を出しながら足で踏みつける。ラフトもブレイブの効果が落ちたようで腕を再生、足を掴んで姿勢を崩す。
「ここで、殺す!」
「ぜってぇ、勝つ!」
――ラフトの攻撃を頭で受ける。ラフトとユウヤには身長差があった。当然、特殊な結界も無いため頭から血を垂らす。
「ユウヤ!」
「う、ぁ」
「……殺す! 絶対殺す! お前は殺すっ!」
クインの指輪から光が消えた。ラフトがクインに攻撃するが、異様な反射神経で避ける。そして、クインの追撃。その一瞬で見えてしまった。
(やっと、分かった。こいつ、分身を出す遺物を持ってる! おそらく、燃費が良いんだろう。ただ、動きが変わったのを見るに発動中常に精神を使うタイプ。感情的ないま――)
ドスっと音を立てて、ラフトの心臓は貫かれた。
「え?」
「隙ありってやつだ」
ラフトは生き耐えた
気管に血が入ったようで、ラフトは咳き込み血を吹き出して倒れた。俺はそのまま達成感に浸ることなく、イシィの近くによってしゃがみこみ軽い魔法の治療をしだす。
「ふう、‘‘倒し終わった’’ー」
「ユウヤ! 無事だったのか! それにイシィは生きてるのかっ?」
クインが駆け足で俺の後ろのところにきた。
「イシィは生きてるよ。まぁ、無事かどうかは、こんな目立つ怪我で大丈夫だと思う?」
腕の断面図をクインに見せた。クインは気持ち悪がりはしなかったが、少し申し訳なさそうな顔になる。
「まぁ、出血もないし、倒れてないし救助が来るまで待てるか?」
「いや、無理だな。心臓を貫かれてこの真っ白オーラの状態になったが、それを長時間耐えれる体じゃない。‘‘俺’’が倒れると同時に心臓を再生させるから、頼む」
「あぁ! 奥の手ももう使ったしな! ……はぁ、しばらくは冒険者稼業を出来ないや」
「帰って、くるか?」
「当然! どんなことしてもくる」
(本当に仲間思いなやつだ)
最後に俺が倒れる寸前で喋る。
「ラフト、死んだフリはやめろ」
「……ぇぇ? バレたぁ?」
「!!」
スキル、それは本人の才覚が重要だ。その中で生まれたときからスキルを使えるものがいる。その者はスキルを使えば、効果が真逆だったり異質な異能に進化することがある。
――ラフトはスキルを進化させていた。そして、それは世界の俯瞰から現実の改変へと至っていた。
「そんな逃げるようなことをするなよ」
声を頼りに振り返る。すると、声の主はサダバクだった。
「うっわ、サダバクかよ。来んの早くね?」
「新入り達が帰っているところに俺がちょうど出くわしたんだよ。はは、運が良かったぜ」
「サダバクが来たなら安心だな」
後ろからぞろぞろとニィナとナカ、他数名の冒険者が来た。どうやら、魔人を警戒して見回りをしていたのをサダバクが捕まえてきたらしい。
「可愛い新入りに何しとんねん!!」
サダバクが大きく拳を振りかぶるが、そこで動きが止まった。――今まで動いていなかった女が動きを止めた。
「?」
「敵から読み取った情報だと、止めてるそれは魔人の従者だよ〜。一体だけだから攻めて攻めてー」
「てっんめ!」
冒険者達は共鳴のことを知ってるようで、その情報を信じてラフトに詰めていく。ラフトは力をあまり残していないため、走って逃げた。やはり、読書の能力は強く、ハンデがあっても捕まることがない。
「こんにゃろう!」
サダバクも魔人の従者を外すのに手一杯。
「おーい、助けに来たぞ」
ナカ達の言葉を最後に俺は倒れた。
◆■◆■◆■
――ユウヤは意識を取り戻すと、知らない天井という訳でもなく、すぐにここが病院だということが分かった。隣のベッドには眠ってるラントーテと窓の外を眺めて黄昏れているイシィがいる。
「あ……」
ちょうどイシィとユウヤの目が合ってしまった。お互い命は助かったが、イシィには申し訳ない気持ちもある。ユウヤは思わずそっぽを向いた。
イシィは笑いながら
「異性と入院は恥ずかしいのかな?」
と、言ってきた。(確かに恥ずかしいとは思う。だけど、そうじゃないんだよな)そう思うユウヤだった。
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