第11話 種族差

 迷宮で探索をしていると、亜人が動物に似た魔物を憎たらしそうに殺していたのをクインが見た。


「あれ、なんであんなに無駄に体力消耗するようにやってんだ?」

「そういうもんだよ。俺も亜人のこと多少知ってるくらいだけど……」

「ユウヤ、あれ知らなかったのに分かんの?」

「どういうこと?」


 当然、イシィ達はその話を知らないので聞いてきた。話を長引かせるのも面倒だから、ユウヤは全てを話した。


「まぁ、妊娠とかの話は恋人が出来るまでしないところもあるし知識に偏りがあるのも仕方ないよ」

「学校とかそういう金のかかるところにいった訳でもないし」

「仕方ないことだ」


 皆、フォローしてくれた。そのことについてユウヤは嬉しそうにしているが、知らない人がここにはいないことを知り、少し悲しむ。


「ま、まぁ、話戻すわ。亜人とか……人間も含めて自分の元に似てる魔物をみてると不快感が出てくるんだよね」

「魔物だけなんだぁ。牛とかの動物いるけど、どういう違いなのかなぁ?」


 ラントーテが鋭い質問をしてくる。


「たま〜に社会問題になるから回答控えたいけどまぁ、言うか。確か話(小説のドラゴン)によると元は一体だけだったけど、自分の分体を出すようになってきて生存競争とかが起こったらしい」

「それで、動物とか原初の動物達のことだからそれは亜人にとって別にどうでも良いってこと?」

「たぶん……魔物に関しては、分かりやすいかな。原初の動物は理論の成り立っていない魔法だったり、魔法そのものを好きけのんでないのもいる。それで亜人も本能的に魔法生物で自分達に似ているのを排除しようとしてるっぽい」

「勉強になりますね」


 ニィナがそう言ってきた。この中で純血に近い亜人はニィナだろう。気になってユウヤは質問することにしてみた。


「そういえば、このトカゲっぽい『カイマ』に忌避感はある?」


 ユウヤ達はあだ名をつけていた。


「う〜ん、そんなにないですね。ただ、理論のない魔法に関してはちょっと変だなとかうわって感じに思ってましたね。筋肉魔法とか」

「あれは、見た目も気持ち悪くなったりするしな。ユウヤの細めの体に急に筋肉つくのは気持ち悪かった」

「まじかよ……」


 ユウヤが少し落ち込んでいると、モンスターが出現する。一メートルほどでボロ布を纏っていて、隙間から少し光る眼が見えた。


「!」

「外陽霊だ」

「今まで気が付かなかったなんて……ヤバいんじゃないか?」

「いや、こいつは隠密以外そんな強くないからカイマにでも任せるよ」


 外陽霊(雑魚)とカイマ(肩に乗るサイズ)の勝負、一体どちらが勝つか。

 結果は一瞬だった。

 カイマが爪で切りつけて、毒か何かで弱らせた後に喉を噛みちぎった。


「弱っ! なんでこいつ姿現したん?」

「外陽霊は生命体に近づくと自動的に隠密が外れるんだよ。まぁ、こいつの布は呪術にも魔術にも使える。見つけれたのはラッキーだな」

「ボーナスモンスターってことか。この布の模様とかに効果あるの?」


 ボロ布に掠れ気味に書かれている紫色の文字と線の羅列に指差した。


「これにはなんの呪術的優位性もないよ」

「……そっかぁ〜」

「あの、こういう動物に似てない魔物も元とかあるんでしょうかね?」

「それは分からんな」


 外陽霊から魔石を取り出し布を剥いで、皆で冒険者ギルドに戻る。魔石と布などを合わせると銀貨1枚ほどの金になった。分配すると、一人辺り大銅貨2枚と銅貨5枚になる。


「というか、不思議ですよね。なんで亜人なんて産まれたんでしょうか」

「必要だったからじゃないか? 人間だけでは迷宮探索はここまで進んでいない。そして、強さ以外に意思疎通が必要だ。ただ、亜人だと見分けやすいように種族ごとに特性を残した。そう考えるとかなり自然だろう」

「ナカ、頭いいね」

「それほどでもない」


 今日は順調に進んでいくことが出来て、報酬もかなりの額となり皆満足して家に帰っていった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る