第5話 おともだち
『もう面白いところも必要なところもない。もう解除しても大丈夫だぞ』
『わかった』
共鳴の力を追い出すことはサダバク達が手伝ってくれたので、すぐに出来た。見えていたものが見えなくなり困惑しながらも、疲労のためソファに体を沈めていった。
「正直、ラフトが俺達の敵になっちまうとはな」
「そういえば、サダバクにだけ来たのってなんでだろう。サダバクしか目的じゃないんじゃない?」
「そうだな。あいつにも女いたし」
ラフトにも妻がいることにユウヤは驚きを隠せない。おっ、とグルミがおもちゃを見つけたような目をしながら言った。
「しかも、そいつ俺達の仲間の薬師だよ〜?」
「えぇ!?」
グルミはユウヤの反応を楽しむ。
「たっくぅ〜、グルミ、お前はその性格をどうにかしろよ。だから、ユウヤに殴られたんだぞ?」
「へ〜い」
「……ユウヤ、話は変えるが、体に巻きつけてるものはなんだ?共鳴をした時に気づいたんだが」
「え?そんな隠密うまくできてた?」
「いや、油断してるときのことはあんま信用しない方がいいぞ。こいつ、日常だと全然注意とかしなくて暗殺されかけたし」
こういう強者系は普段も注意を欠かさないイメージだったので、ユウヤは見つからなかったことに喜んでいたが、グルミの言葉の暗殺の部分に興味津々となる。
ただ、サダバクの言葉を思い出し、取り出した。
「こいつは、スライム?」
スライムがユウヤの手の上に乗っている。全く攻撃の意思は感じず、生きていることを伝えるかのようにプルプルと震えていた。
「使役か召喚かテイムのどれだ?」
「ふっふっ、共鳴だよ共鳴」
「思考共有出来るなら、出……来、るか?スライムとかもう決められたことしかしないやつだしなぁ」
「なんか、そういうのを精神攻撃で洗って綺麗にしてからやったら共鳴し続けなくても繋がるようになったんだ〜」
「鬼畜かよ」
実際、人間で例えるなら教養や個人の考えを消されたところに乗っ取る形なので鬼畜以外の何者でもない。しかも、自分の考えが変わることを経験し、悪だとも思っていないため完全にアウトだ。
「便利だよ〜新しいともだち!」
「こういうのは人にひけらかすんじゃねぇぞ。教会から敵視されるかもしれんし」
「は〜い」
「テロしたらくそ厄介なやつだな。呪い判定喰らうかもしれん」
「呪い?」
「教会の奴らが決めたもんだ。昔、スキルでやばいやつがあってだな。『魂』ていうまんまの技で死者をアンデッドにして騒ぎを起こした。それによって教会は鎮圧&呪いの所有者を処刑した」
後の事はあまりにグロいためユウヤは途中までしか聞けなかった。
「教会もいいことするんだな〜。仲間割れしか覚えてない」
「魔神と聖神で魔神論者を殺さず、古い派閥と新しい派閥が争ったやつか?」
「それそれ」
「あれは真意は分からないが、教派としての問題だったと思うぞ。要約すると私達で仲良くしましょうってやつだ」
「魔神が戦争仕掛けたのに?」
「あぁ。だからか他の地方では魔神の教会が流行ってたりするぞ」
サダバクは何かを知っているようだった。そして、それを話してくれた。
「教会のやつに会ったことがあるが、魔神のことを憎んでいるのは信徒くらいでしょうと言ってやがった」
「不思議だな」
「謎ですね」
三人で悩みこみながらも酒を飲むのであった。
◆■◆■◆■
「まだ、午後の時間が空いてるし薬師のところに行くか」
ユウヤは酒の酔いをサダバクに治してもらうと薬師のとこまで歩いていった。スラムとはいえ薬師のところまではかなり綺麗で人が倒れていたりはしていなかった。
書いてあった場所に着き、ドアを開けると
「いらっしゃい」
エルフがいた。緑髪のエルフ。ふと、頭に過ったことはこのエルダ(サダバクに教わった)という人の役割はなんなのだろうということだ。
「あ、こんにちは」
「話はサダバクから聞いてたよ?ちょっと奥の部屋に行こうじゃないか」
「分かるんですね」
「目と髪色で簡単に分かるわい」
エルダに連れられて部屋に入ると、お茶をまず出された。
「美味しい」
硬水と軟水のいいとこ取りの味。しかも、前世か今世で好きだった味に近い。
(共鳴を獲得してから、感覚が鋭くなっているから分かる)
これは特殊な方法によって作られたお茶だと。
「ふむふむ」
そう考えていると、エルダは何かを書き込んでいた。
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