第6話 結果

 チラチラと見てきて気になるが、何かを書いているしちゃんと働いているのだろうとユウヤは考える。

 エルダが何故か書くのを中断し、頭を悩ます。

 ふぅ、と息を吐いて再開するまで楽にしてようと思えば、エルダが一言発する。


「ちょっと、指示遅れたんじゃが、このお茶を飲みきってくれ」

「え……ぁ、はい」


 お茶を全部飲みきるが、何か変わったところは無かった。強いていうなら、食べた後の飲み物は少し腹にきついという程度だろう。


「……こんな病人はじめてじゃわ。お主は何で生きとんの。しかも、戦闘しとるし」

「いや、なんかサダバクからおかしいって言われて来たわけで、説明してもらわないと」

「そうか」


 エルダは何かを書き終え、テーブルに置く。それを見てみれば、診断書らしきものだと分かった。


「まず、お主は危険な所で安定した状態なんじゃ。説明すると、他の魂が入っているせいで歪んでいる」

「魂が……混ざってたりします?」

「お主の魂はまぁ、大丈夫じゃな。ただ、他の二つが綺麗に混ざってるおるわ。お主は別じゃが、こっちは切り離せんなぁ」


 星渡りは記憶を思い出すタイプと最初から記憶があるタイプだったり様々だが、魂が元々の世界の記憶を思い出すのが普通だ。

 普通の星渡りと全然違っていて、魂が他のと混ざってると思っていたが魂が一つだけという点は同じだった。


 エルダが少しお茶を飲んで、話を区切る。

 だが、ユウヤからしたら全部知りたい問題なので、質問をまたしてしまう。


「切り離せるんですか!?……切り離してデメリットとかありますか?」

「抵抗されれば後遺症があるかもしれんの。正直、相手が優しくとも魂の差があれば無意識に壊していくことはあるわい。お主にいるのはわからんの。少し細工をしているようだしなぁ」

「う〜ん」

「後、その魂はどこに行くかが問題じゃ」

「?」

「相手に乗り移るような奴じゃから、今度は誰のところに行くかということじゃよ」


 奴に関して分からないことが多いが、試してみるにしてはリスクは高すぎた。


「リスク高いっすね」

「まぁ、そういうもんじゃがな」

「そういえば、診断?に使ったお茶ってなんなんですか?説明無しとかひどいっすよ」

「そうじゃなぁ、ありゃあ、魂茶こんちゃと言って魂に干渉して好みの味に変わる。どうやって、発明したのかは―――」

「いや、そういう実験とかの説明はやめてくださいよ。絶対最初の説明だけで十分です。後、検査の時は検査、実験の時は実験って言ってくださいね」

「そんなあかんかの?まぁ、お主みたいな奴にはこの魂茶はかなりいいものじゃから〜」


 別の部屋に移動して、数分後


 ポットと茶葉を持って入ってくる。ポットも特殊なものを使わなければならないそうで、両方とも貰えた。


「危なくなったら、ここに来るんじゃぞ。今、対処するのは得策じゃないから何も出来んが、やばくなったらいくらでも試してやる」

「はい」


 ユウヤは何もすることがなくなったので、冒険者ギルドへ訓練するために行くことにした。荷物置き場はあるが、不安でポットと茶葉を家に置いてく。


 クインやニィナ、イシィ達も訓練をしていたようで魔人のことを伏せながら、飲み合いのことや検査のことを話した。


「戦力が下がる訳じゃないよな?」

「うん、ただ、まぁ、なんかなんで戦闘してるの?って言ってたし……」

「それじゃあ、一時的にパーティーを合併しませんか?」


 話しているとイシィがそう言って、提案をしてきた。イシィ達もメンバーの一人死んでいるので、ユウヤ含めると六人となる。


「私はいい提案だと思います。皆さんは?」


 ニィナがそう言うと皆も賛成しだした。正直、有り難いことだ、どちらにとっても。


◆■◆■◆■


 転移とはまた違ったもの、神の力と魔法によって、少数の魔人が集まって会議をしていた。

 非常に暗い空間であり、顔が全く分からない。ただ、魔人達は番号の載っている椅子に座っていた。


「さて、報告は終わったな。最近は別の迷宮の魔人が増えて戦力は上がってきている。ここで死ぬような真似はするなよ」

「……これで一旦休憩?」


 気怠げそうな子供の魔人が聞いてみた。1の席に座っている魔人は首を横に振る。


「いや、お前等には新たな仕事がある」

「おっ、ユウヤのことか?」

「ユウヤねぇ」

「はぁ」


 ラフトが話に割って入る。魔人達は何回も会議をしているが、「なんだったっけ?」とユウヤのことを覚えていないやつもいた。


「そうだ」


「おラフトは自分が出来そうなやつを全部やっちまうからな。俺が暴れてぇもんだぜ」

「だって、いつも俺に振られるんだもん。未来でさぁ〜」


 それほど、読書というアビリティは便利だ。


「それで、何をしてほしいの?」

「ユウヤを――してくれ」

「任務にあたる奴は?」

「ラフトだ。任務に必要なものはイジナに貸してもらえ」


 名前が判明したイジナは、5の椅子に座っていてる女の子であり、ぬいぐるみを持っていてバックを背負っていた。


「まぁ、そうだよなぁ」

「頑張れよ〜」

「ちゃんとやれよ」

「はぁ、そんじゃ、貸してくれよ」

「……はい」


 バックから取り出したのは、ユウヤを見つけ出すための目。ラフトの読書も便利ではあるが、なんでも出来るわけではない。そのためのサポート道具。

 目をラフトに近づけると勝手に動きだして、実際の目と融合?をしてしまう。


「やっぱ、お前の呪具はすげぇよ。マイナス面が少ないしな。これはどっちだ?」

「ふふ、その子は成功した子だよ」

「へぇ、正直、違いはわから――『こんにちは』


 不意にイジナとも違った知らない女の子の声が聞こえて、呆気にとられれてしまう。


「いいでしょ」

「う〜ん、まぁな。……そのぬいぐるみも喋るのか?」

「お母さんはいいの。優しいから」


 正気そうなやつでも、実際は狂っているやつの方が魔人には多い。

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