第1.5話 If正夢であったなら
別の世界線
ユウヤはいつも夢にうなされていた。時間経過とともに夢は進んでいく。何をしようとしても自由がきかず、体や精神の内に侵食してくるイヤらしい夢。そこでは、ユウヤは長髪でのんびりと暮らしているようだった。
起きる時間になると強制的に意識は浮上していくような感覚があった。その感覚が気に入らず、起こしてもらったこともあるが意味をなさなかった。
ユウヤは夢に耐えきれず飛び起きる。
ハァハァと息を吐きながら、窓を開けると外は快晴だった。
「役に立つのはこれ《悪夢》が目覚まし時計になることくらいか?」
身支度をして冒険者ギルドへ向かう。
冒険者ギルドの皆とも仲が悪いことはなく、挨拶を交わす程度だ。
「よ、ユウヤ」
「あぁ、おはよぉ」
「おはようございます」
座る席は決めていていつもの三人で集まり研修を受けるのだが、最後の研修をだったようで無料で職業につくことが出来た。
「なぁ、初めての迷宮入ってみようぜ」
職業についてからのクインの最初の言葉は唐突なものだった。
だが、訓練場で武術を学んでいったし、魔物の知識はちゃんと身についているので、ユウヤは抵抗しなかった。
◆■◆■◆■
迷宮に入ってみると、不快感が異常であった。
夢の時以上の感覚であり、一般の者ならば精神になんらかの異常をきたしてしまうかもしれない。
現にユウヤは一瞬だけ気を失っていたのだから。
「わぁ、結構辛いですね。一瞬だけですが、胸の辺りが痛くなっちゃいましたよ」
どうやら、調整していた共鳴だったが一瞬だけぶれてしまったみたいだ。
「……(別にいいのに)」
「入ってくる人の迷惑にならないように、道の横で集まっていよう。また、変に絡まれるかもしれないからね」
「そういや、あったな」
冒険者ギルドに登録した時、グルミという奴に喧嘩を売られていた。
「心読んでるみたいにユウヤ冷静だったよね〜」
「私も見たかったですよ。というか、私絡まれなくてちょっと悲しいんですよね」
「竜人だし、十四だからだよ」
「……やっぱ、ユウヤって心読んでそう」
(あの時は敵意とかは感じなくてからかおうとしてるのが感じ取れてたからな。素じゃあインパクトに圧倒されてたかも)
「ま、そんなことより、迷宮には慣れた?」
「おう」
「はい」
「それじゃあ、出発」
出発と言ったユウヤを先頭として、迷宮内をどんどん進んでいく。そのペースは明らかに初心者とは思えなかった。
ユウヤかニィナが「敵」と言えば、すぐに臨戦態勢に入り、敵と判断する相手を殺していく。
敵を見抜く速度はニィナの少し後ぐらい。
ユウヤは戦闘に関してかなり強くて、ゴブリンを一対一で瞬殺していた。
「はぁ、ユウヤは凄いな」
「そうですね」
クインもニィナもそうは言っているが、近接戦闘はお手の物であり、クインが槍を使っていればユウヤに対抗は出来るだろう。
「まぁ、生きるために訓練してたからね」
強さの理由はそれで通していた。
十分な収穫を得て、迷宮から帰ろうとしたところ、男性の悲鳴が聞こえてきた。
「……これは、助けなくていいな」
「助けに行かなくちゃ。危ない状況に陥っているかもしれないんだぞ?」
「そうです!」
ユウヤも共鳴である程度思考を読めることは言えなかった。
「はぁ、まぁ勝手にすれば」
男性はゴブリン数体に囲まれていた。
一体のゴブリンが脇腹の辺りに剣を刺していて、男性は抵抗している。
他のゴブリン達は楽しんで見ていた。
皆は思考を合わせてニィナが見せかけの詠唱で気をそらしている間にクインが槍を振り回して蹴散らし、殺していく。
―――上手くいったのだが、回復する間もなく死んでしまった。
「だから、行きたくなかったんだ。しかも、コイツはパーティーに見捨てられたんだぞ。ゴブリンに負けるしな」
「ユウヤ、危険な目に合わせたくなかったのかもしれないが、言い過ぎだ」
「……死人を侮辱したら、駄目、ですよ?」
「はぁ……」
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